映画『ホイットニー~オールウェイズ・ラヴ・ユー~』に見るショウビズの栄光と闇

エンタメブリッジライターのFritzです。

このページでは、80年代から90年代にかけて数多くのヒット曲を生み出した女性歌手、ホイットニー・ヒューストンの生涯を追ったドキュメンタリー映画『ホイットニー~オールウェイズ・ラヴ・ユー~』を紹介いたします。

20代前半で歌手デビューを果たす前は、モデルとしても活動していた、才色兼備のホイットニー。同じく歌手のボビー・ブラウンと結婚して一児を設け、成功者としての人生を歩んでいたはずの彼女が、なぜ48歳の若さで謎の死を遂げたのか…。

本作はそんな彼女の波乱に満ちた人生を追う、興味深いドキュメンタリー映画です。

1.ホイットニー~オールウェイズ・ラヴ・ユー~の作品紹介

公開日: 2019年1月4日 (日本)
監督: ケヴィン・マクドナルド
脚本: ケヴィン・マクドナルド
出演者:ホイットニー・ヒューストン、ボビー・ブラウン、シシー・ヒューストン、ゲイリー・ヒューストン

2.ホイットニー~オールウェイズ・ラヴ・ユー~のあらすじ紹介


画像出典:https://eiga.com/movie/86928/gallery/

以下に『ホイットニー~オールウェイズ・ラヴ・ユー~』を紹介していきましょう。

ホイットニー~オールウェイズ・ラヴ・ユー~のあらすじ(ネタバレなし)

1962年、アメリカのニュージャージー州ニューアークで生を受けた、ホイットニー・ヒューストン。母はR&B界で成功を収めた歌手、シシー・ヒューストンで、叔母はポピュラーボーカル界で大成功を収めたディオンヌ・ワーウィックと、親族に多くの歌手が存在する恵まれた環境でした。

母親のシシー・ヒューストンはカメラの前で「ホイットニーは教会で、ゴスペルに打ち込んでいた。本気で歌手になりたいと思っていたようだったから、私が厳しく指導した」と、ホイットニーの幼少期を振り返ります。

本作には母・シシーのほかにも、親族や側近スタッフたちが数多く登場。それぞれが知る貴重なエピソードを証言していきます。

ステージ経験を積んだホイットニーは、やがてアリスタレコードと契約を結び、1985年にソロシンガーとして本格的にデビュー。ファーストアルバムから大ヒットを飛ばし、セカンドアルバムは初登場全米第1位と、破竹の快進撃を続けます。

さらに1992年には、ケヴィン・コスナーと共演した初の主演映画『ボディガード』が大成功。ホイットニー自身が歌った主題歌『オールウェイズ・ラブ・ユー』は、世界中で大ヒットしました。

また私生活では、同じく歌手のボビー・ブラウンと結婚。本編の中では結婚式で幸せそうにはしゃぐ、ホイットニーの姿も映し出されています。そんな人生の絶頂期においても、ホイットニーは多くの問題を抱えていました。

まずマネージメントを務めていた父親の横領や着服の発覚、良き理解者としてスタッフを務めていた親友とホイットニーの家族との間に生じた確執、そしてホイットニーの成功には到底追いつけそうもない夫のケア、などなど…。

ツアーに同行していた兄弟たちからの悪影響もあり、ホイットニーは気晴らしから始めたドラッグの依存症に。その私生活は荒廃の一途をたどり、やがて唯一無二の美声にも陰りが見え始めます。

ホイットニー~オールウェイズ・ラヴ・ユー~のあらすじ(ネタバレあり)


画像出典:https://eiga.com/movie/86928/gallery/5/

ホイットニー・ヒューストンのドラッグ問題は深刻化し、やがてその輝かしいキャリアにも悪影響が及ぶようになりました。

アルバムレコーディングのためスタジオを数ヶ月ブッキングしても、彼女が真剣に取り組むのはわずか数日のみ。またボビー・ブラウンとの間に生まれた愛娘であるボビー・クリスティナ・ブラウンへ与える悪影響も、心配されるようになっていきます。

こうしたホイットニーの転落を、ゴシップ好きのメディアが見逃すはずはありません。2000年代のホイットニーは、ドラッグ問題やその釈明インタビューでテレビや雑誌などに取り上げられる機会が多くなり、いつの間にか歌手としての評価は、どこかへ置き去りになっていきました。

本作にはダイアン・ソイヤー(アメリカの高名な女性ジャーナリスト)がホイットニーへの独占インタビューを敢行し、ドラッグや結婚生活についてかなり際どい質問を投げかけた収録の模様も、収められています。

やがてホイットニーは経済的にも困窮するようになり「ツアーに出ないと、ホームレスになる」といった状態にまで追い込まれていきます。しかし2010年に敢行したワールド・ツアー『Nothing But Love』の評価は、散々なものでした。

長年のドラッグ使用がたたったのか、かつて誰もが認めた彼女の美声は『聞くに堪えないダミ声』に。本作の終盤は『劣化したステージ上の姿』や『コンサートを途中退席する客が続出したと、伝えるニュース』など、衝撃的な映像が続くことになります。

その後ホイットニーは、更生施設に入所。ドラッグを断った後、映画『スパークル』の撮影に参加します。往年の美声も何とか復活の兆しを見せ、大衆に再起をアピールするステージも用意されました。

いよいよこれから…という時、カムバックへのプレッシャーからか滞在先のホテルで再びドラッグに手を出し、バスルームで溺死体として発見されることになってしまったのです。

3.『ホイットニー~オールウェイズ・ラヴ・ユー~』の見どころ


画像出典:https://eiga.com/movie/86928/gallery/4/

それでは本作の見どころを、以下に紹介していきましょう。

歌姫の奇跡のパフォーマンスが一度に堪能できる

本作は近年のポップミュージック界でも有数のディーバであるホイットニー・ヒューストンの伝記ドキュメンタリーなので、素晴らしい歌声が響き渡る至高のパフォーマンスの数々を、充分に堪能することができます。

最も印象的なのは、1991年の『スーパーボウル』における国歌斉唱。

スーパーボウルとはアメリカンフットボールの優勝決定戦で、米国では1年を通し、最大のスポーツイベントとして注目を集めます。

その会場で国家を斉唱できるのは、スーパースターの証でもあるのですが「歴代のパフォーマーの中で、ホイットニーが最も素晴らしかった」という評価は、今も崩れていません。

黒人女性であるホイットニーがアメリカ国民を代表し、数百万人の観衆を前に堂々と国家を斉唱する姿には神々しいまでの魅力が溢れており、きっとあなたの胸の裡にも深い感動を呼び起こすでしょう。

また本作は、ホイットニーの数々のヒット曲を紹介しているほか、正式デビュー前に初めてテレビで歌唱した際の貴重映像も収録しています。

彼女の全盛期を知る人も、知らない人も、天賦の声を持つ歌姫、ホイットニー・ヒューストンの魅力を、はっきりと確認することになるはずです。

大スターの転落物語を覗き見れる


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ホイットニー・ヒューストンの黄金時代は、シンデレラのような大成功を収めた1980年代から、映画『ボディガード』が大ヒットした1990年代前半までの、約10年間です。それ以降のホイットニーは、スキャンダルにまみれた『ゴシップの女王』でした。

全盛期のホイットニーは、スレンダーなモデル体型が魅力的でしたが、ドラッグの濫用や更生施設への入所を繰り返すうち、身体の線も崩れていったようです。

大失敗に終わった2010年のワールドツアー中は太っていた時期にあたっており、オバさん体型に老女のようなシワ枯れ声で、必死に『オールウェイズ・ラブ・ユー』を歌い切ろうと努めます。しかし、思うように声が出ないのです。

本作で確認できるその姿は、非常にショッキング。ノンフィクションである分、サスペンスやホラーよりも、ずっと怖い映像です。言い換えれば、天国から地獄へ真っ逆さまに堕ちたその転落ぶりも、本作の見どころのひとつと言えるでしょう。

4.『ホイットニー~オールウェイズ・ラヴ・ユー~』はこんな人におすすめ


画像出典:https://eiga.com/movie/86928/gallery/2/

本作はとても力強いドキュメンタリー映画なので、例え「ホイットニー・ヒューストンについて、全く知らない」という人でも退屈せず鑑賞できると思います。

しかし、以下のような人たちには特に「観ておくべき作品」としておすすめです。

ホイットニーが好きだった、またはあまり好きでなかった人

まず「私はホイットニー・ヒューストンの大ファンだった!」と自認している人にとって、本作が必見の作品であることは確か。

ファンにとって「観るのがつらい」を感じられる部分は数多くありますが、全盛期の勇姿、デビュー前後やバックステージの秘蔵映像、そしてアメリカで放映されたテレビ番組でのインタビュー映像などがふんだんに盛り込まれている作品なので、やはり避けて通るわけにはいきません。

そして「ホイットニー?別にファンじゃなかった。どちらかというと嫌い」という人にも、本作はおすすめです。

彼女の全盛期にあたる1980~90年代前半は、ロックの全盛期でもありました。ワイルドであることが「カッコいい」と考えられていた時代ですから、ホイットニーの洗練されたスタイルを「退屈」と捉えた人も数多いはず。

またヴォーカルスクールの講師たちにとって、ひとつの理想形でもある『ゴスペルベースの見事なトランペットヴォイス』は、シャウトを主体とするロックヴォーカリストの対極にあるものでした。

しかし本作を見れば、実際のホイットニーはかなりワイルドで『セックス、ドラッグ&ロックンロール』を地で行く人物であったことがわかるはずです。否定的な意見を持っていた人ほど、鑑賞後に別の角度からホイットニーを捉え直すことができるのでは…。

もしかしたら「ひとつ、ベストアルバムでも買ってみようかな」という気持ちになるかもしれません。

恥ずかしながら、ワイドショーが好きという人


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スターの転落物語は、大衆の好奇心を刺激します。スターになることを夢見ていた人物が急激な成功を受け止めきれず、やがて精神のバランスを崩していく姿はそれだけでも充分にドラマティックですから、無理もありません。

ここ日本でホイットニーと同じく、ドラッグ問題から大スキャンダルを引き起こした女性歌手と言えば、酒井法子の姿が思い浮かびます。

もしもあなたが「テレビのワイドショーに釘付けだった…」と当時を振り返るようであれば、本作の内容はその10倍刺激的であると太鼓判を押しておきます。

また80年代アメリカの大スターで、いまも活躍を続けているのはマドンナだけ。ホイットニーのほかに、マイケル・ジャクソンやプリンスも他界しています。

好況が生むバブルの狂騒の中で桁外れの成功を収めたセレブリティが、いかにして堕ちていくのか…、ホイットニー・ヒューストンの生き様は、こうした疑問に対する格好のサンプルであることに間違いはないのです。

ドラッグ問題への態度を決めかねている人

ホイットニー・ヒューストンの死因は、ホテルの浴室での溺死でした。遺体からはコカインが検出されており、過剰摂取に伴う事故が原因と判断されています

ここ日本でドラッグの使用は絶対的なタブーであり、常用や使用が発覚すると、非常に厳しい社会的制裁を受けることになります。周囲の人が「クスリで捕まってしまった」とき、極端な拒否反応を示す人も多いでしょう。

しかし薬物に手を染めたことで『前科者』となってしまった人たちにも、更生後の人生があります。同じ過ちを繰り返さないよう、そして陽のあたる道を歩けるよう、周囲がサポートしてあげなくてはなりません。

本作を観ていると、ホイットニーがドラッグから抜け出せなくなった原因のひとつに「人間関係の破綻によるストレスや、孤独」が確実に存在していたことがわかります。

周囲の人々にできることはなかったのか、そうすれば彼女は天賦の才能をもっと長く、有効に活用できたのではないか…、と歯痒く感じずにはおれません。

また驚くべきことに本作は、ホイットニーの死後に設立された『ホイットニー・ヒューストン財団』の公認作品でもあります。

「醜聞はできるだけ伏せ、もっときれいにまとめても良かったのに」と感じなくもありませんが、本作はドラッグに溺れ、転落していった彼女の姿を、隠そうとしていません。鑑賞者はその勇気ある制作姿勢から、多くのものを学び取らなくてはならないはずです。

反社会的な行動の背後には、必ず原因があるもの。『ドラッグ=悪』という単純な公式が頭の中に出来上がってしまっている人にとって本作は、問題の根深さについて理解を深める、貴重な教材となってくれるでしょう。

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