こんにちは。
エンタメブリッジ・ライターのハイリです。
今回は、2011年の日本映画「八日目の蝉」をご紹介します。
この作品は、角田光代さんの小説が原作で、2010年にはNHKでテレビドラマ化されました。
そして、今回は2011年に映画化された映画版の「八日目の蝉」をご紹介していきます。
第35回日本アカデミー賞を総なめした映画でもあり、感動間違いなしの名作です。
またこの話が、とある実際の出来事を元にしたのではないか、と噂されていますので、それについてもご紹介します。
目次
1.「八日目の蝉」の作品紹介
監督: 成島出
原作者: 角田光代
原作: 八日目の蝉
出演者:井上真央(秋山恵理菜 )、小池栄子(安藤千草)、森口瑤子 (秋山恵津子)、永作博美 (野々宮希和子)、田中哲司(秋山丈博)
受賞歴:第66回毎日映画コンクール・女優助演賞(永作博美)、第35回日本アカデミー賞・最優秀作品賞・最優秀監督賞(成島出)・最優秀主演女優賞(井上真央)・最優秀助演女優賞(永作博美)・最優秀脚本賞・最優秀音楽賞・最優秀撮影賞・最優秀照明賞・最優秀録音賞・最優秀編集賞、他多数。
2.「八日目の蝉」のあらすじ紹介
(出典元:https://tsutaya.tsite.jp/item/movie/PTA000080GLH)
それでは、「八日目の蝉」のあらすじを紹介して行きたいと思います。
「八日目の蝉」のあらすじ(ネタバレなし)
希和子(永作博美)は、4年前に犯した誘拐事件の犯人として裁判に出廷しています。
希和子によって誘拐事件の真相が語られて行きます。
4年前、希和子は秋山(田中哲司)と不倫関係にあり、その子供を堕胎していました。
秋山に堕ろすように言われ、それに従ったのです。
そのせいで希和子は、子宮が癒着し子供を産めない身体になっていました。
そんな中、秋山の妻の恵津子(森口瑤子)に罵倒された希和子は、心身ともに傷つけられます。
希和子は、秋山の自宅に向かい、留守宅に侵入します。
すると寝室で、赤ん坊が1人残されて泣いていました。
希和子は、衝動的に秋山と妻の子供であるその赤ん坊を抱き上げ、外に連れ出します。
そしてそこから、希和子と赤ん坊の数年にわたる逃亡劇が始まるのです。
希和子は、自分が子供につけたかった「薫」という名前を赤ん坊につけ、何とか育てようとします。
一方、約20年後の「薫」こと本名は恵理菜(井上真央)は成長し、孤独に生きていました。
20年前の出来事と、恵里菜の記憶を辿る旅が始まりますが…。
「八日目の蝉」のあらすじ(ネタバレあり)
(出典元:https://tsutaya.tsite.jp/item/movie/PTA000080GLH)
20年後の薫こと恵里菜は、大学生で一人暮らしです。
アルバイトを掛け持ちしながら自活し、親の支援も絶って、友人もいない生活です。
恵里菜には妻子持ちの不倫相手がいます。
関係を断とうとしてもなかなか切れずにいる相手です。
そんな中、恵里菜のところにフリーライターを名乗る千草(小池栄子)という女が現れます。
千草は、20年前に恵里菜が誘拐された事件の真相を調べていると言って恵里菜に近づきます。
恵里菜の元に何度も現れる千草ですが、徐々に2人は友人として親しくなっていきます。
この恵里菜と千草の出会いによって、20年前の出来事が徐々に明らかになっていきます。
20年前。恵里菜を誘拐した希和子は、恵里菜を「薫」と名付けて育てますが、
逃亡した先で、女性に声をかけられた縁で、エンジェルホームというカルト教団のような新興宗教の施設に匿われます。
その施設は女性だけの施設で、様々な訳ありの人たちが身を寄せ合って、労働を分担しながら暮らしていました。
社会との交流は断絶されていて、施設の中の人は家族に会うこともありません。
希和子と「薫」は、そこで守られるように、平和な暮らしを送ります。
この施設で一緒に遊んでいた子供が実は、千草でした。
やがて、入所者の家族たちの抗議の声が高まり、マスコミが施設前に押しかけるようになります。
希和子と薫は居場所が世間に発覚するのを恐れて、そこを逃げ出します。
そこで薫と千草は別れてしまいました。
施設を出た希和子と薫は、施設にいた友人が渡してくれたメモを頼りに、小豆島の友人の実家を尋ねます。
そこで仕事と住む場所を得た希和子と薫は、島の暮らしに徐々に慣れていきます。
希和子は、薫と1日でも長くいたいと心から祈るように暮らし、仕事に励みます。
薫に綺麗なものを見せたいという一心で、毎日素麺作りの仕事を頑張る希和子でした。
(出典元:http://shimagirl-place.seesaa.net/article/196788196.html)
一方、4歳まで小豆島で育った「薫」こと恵里菜は、千草とともに自分の記憶を辿る旅に出ます。
そして、千草が施設にいた頃の遊び友達だったことや、当時のうっすらとした記憶を蘇らせます。
恵里菜は、不倫相手の子供を妊娠していることに気づき、産むと決めたばかりでした。
不倫相手には知らせずに産むと決めた自分の心情と、自分の子供時代の思い出を辿る旅は続きます。
小豆島で幸せに暮らしていた希和子と「薫」ですが、ある時、村の行事をアマチュアカメラマンが撮影し、その写真が全国紙に載ったことで、そこを出なくてはいけなくなります。
2人の顔がはっきりと写真に写っていたのです。
夜、船に乗って逃げようとする希和子と「薫」。
ですが、下船して、食事を買い、店の外に出ようとしたところで、希和子と薫は捕まってしまいます。
希和子は、薫のことを自分の子供のように愛し、大切に育てました。
希和子は逮捕される瞬間まで、薫の食事のことを気にし、母親だったのです。
以上が、誘拐事件の真相です。
恵里菜は千草とともに小豆島を尋ね、様々なことを思い出します。
そして、恵里菜は、お腹にいる子供に綺麗なものを見せたい、と泣きながら叫ぶのです。
それは、約20年前に恵里菜が希和子に言われたことでした。
恵里菜は、冷たく崩壊した家庭の本物の両親よりも、4歳まで育ててくれた希和子との思い出と共に今も生きていたのです。
3.「八日目の蝉」の見どころ
(出典元:https://tsutaya.tsite.jp/item/movie/PTA000080GLH)
それでは、映画「八日目の蝉」の見所をいくつかご紹介します。
演技派女優陣の夢の競演
誘拐犯である希和子を演じた永作博美、大人に成長してからの「薫」こと恵里菜を井上真央、宗教施設で「薫」の遊び相手だった千草を小池栄子が演じています。
この女優陣の個性あふれる演技がとても見応えがあり、映画の中に引き込まれていきます。
他にも本当の母親である恵津子を演じる森口瑤子や、宗教施設の教祖のような人物エンゼルさんを演じる余貴美子、そして希和子の施設での友人を演じる市川実和子の名演も素晴らしいです。
登場人物の誰もが、本当に生きて実在していたかのようなリアリティです。
日本アカデミー賞や、その他の映画賞を総なめにしているのも納得の演技力です。
私は特に、小池栄子演じる千草の癖のある演技が好きです。
フリーライターでああいう挙動の人って本当にいますから!(実感を込めて)
美しい小豆島の風景
(出典元:http://shimagirl.jp/?p=2289)
映画の後半は、瀬戸内海にある小豆島が舞台になっています。
逃亡してきた親子が幸せな時間を過ごした場所ですが、美しい海と緑のある大自然、田園風景など、とても綺麗です。
こんなに綺麗な場所で育てられていた薫こと恵里菜が、大人になってもその景色を忘れられない理由がわかる気がします。
特に、後半で、島の伝統的な行事のようなものが行われる場面があります。
2人が島を出るきっかけになる写真が撮られてしまった行事ではありますが、
点灯する火の松明を持って島の人たちが行脚するシーンの美しさには息を呑みます。
母性というものの強さ
不倫相手の子供を誘拐してしまう女性の話と言ってしまえば、それまでなのですが、どうしても子供が欲しい女性にとっては、誘拐犯の希和子に共感してしまう部分もあるのではないでしょうか。
特に女性にとっては、大なり小なり母性というものがあるかと思いますので、希和子の
「子供を守りたい」
という強い気持ちに共感してしまう心理も生まれます。
この映画を見ると、希和子のように自分のそれまでの生活を全て捨て、子供と逃亡生活を送る人を極悪人だと決めつけてしまうのが難しくなってしまうのも事実です。
もちろん誘拐は重罪ですし、決して許される行為ではありません。
ですが、もしかすると実の母親よりも恵里菜(薫)のことを想って尽くし、愛していたのが希和子だったのかもしれないと思えてきます。
この映画を通して、母性というものの強さ、そして母親とは何なんだろうと考えてしまいます。
4.「八日目の蝉」はこんな人にオススメ
(出典元:https://eiga.com/movie/55771/gallery/2/)
「八日目の蝉」は、以下のようなタイプの人に特にオススメです。
母親である人や、母親になりたい人
ズバリ、「八日目の蝉」は母親である人や将来的に母親になりたいと思っている方には特にオススメです。
この映画の中で、誘拐されていた恵里菜は、実の親よりも、乳児の頃から4年間自分を誘拐して育てていた希和子という偽物の母親に気持ちがあるように感じられます。
この誘拐犯である希和子という人物は、永作博美が演じていますが、第三者から見ても一生懸命に子育てしようと努力しています。
希和子は、仕事を頑張って、そのお金で子供に少しでも多くの綺麗なものを見せてあげようとしています。
ですが、本物の母親の方が、4歳で見つかった恵里菜とギクシャクして、ヒステリーを起こし、家庭内不和を起こしてしまいます。
誘拐が契機となって、実の親と子は関係がギクシャクしてしまったのは事実ですが、
希和子の方がより母親として子供の気持ちを掴んでいるように見えます。
いい母親とは一体、何だろう、と考えさせられる映画だと思います。
皆さんは、どう思いますか?
親子や家族の関係で悩んだことのある人
思春期などに自分の親との関係で悩んだことのある人には、子育てや家族のことなど、何かしら響く部分があると思います。
この映画のように、産みの親よりも、育ての親に気持ちが行く子供のように、
自分を産んでくれた親が百パーセント正しいわけではない、と気づく日が誰にでもやってくるものです。
母親とは何か、親離れとは何か、子離れとは何か、生みの親と育ての親について、など考えさせられます。
この映画を通して親子や家族について、自分の物語として見ることができるのではないでしょうか。
女の怖さを思い知りたい人
これまで、女性視点ばかりでオススメポイントを書いてきましたので、たまには男性向けのオススメポイントも書いておきたいと思います。
ズバリ、この映画では女の怖さを実感することができます。
母性本能が発動してしまうと、不倫相手の子供を誘拐するくらい、女性は怖い生き物なのかもしれません。
男性の皆さんは、心して見て欲しいと思います。
この映画の中では、不倫をしていた夫は、誘拐事件のせいで様々な職場を転々として、苦労している様子でした。
社会的信用を貶める行為ですので仕方ありませんね。
女性は本当は怖い生き物なのです(笑)。
また、この映画の元になった小説が実話に基づいているのではないかという噂もありますが、真相はどうなのでしょうか。
とある放火事件を下敷きに物語を構想したのではないか、という噂があります。
小説家ご本人でないと本当のところはわかりませんが、とある不倫をしてしまった独身女性が不倫相手の家に放火してしまったという痛ましい実際の事件に経緯が少し似ているようです。
実際に起きたその事件とは、詳細が異なっていますので、フィクションということでしょうが、インスピレーションの元になった可能性は高いと言えるでしょう。
以上、映画「八日目の蝉」についてご紹介してきました。
ラストは泣けますので、ハンカチを用意して鑑賞してみてください。
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