映画「運び屋」イーストウッドが描く“90歳の運び屋”【あらすじ/ネタバレ/感想】

こんにちは。エンタメブリッジライターのhappaです。

今回は、クリント・イーストウッド監督の最新作、「運び屋」をご紹介します。

クリント・イーストウッドといえば、ハリウッドで最も有名な俳優であり、監督であると言っても過言ではないでしょう。

そんな彼が監督と主役を同時に務めたのは、今回なんと2008年の「グラン・トリノ」に続いて10年ぶりなんです。否が応でも期待が高まりますね!

では早速、ご紹介していきます。

1.「運び屋」の作品紹介

公開日: 2019年3月8日(日本)
監督: クリント・イーストウッド
脚本:ニック・シェンク
出演者:クリント・イーストウッド(アール・ストーン)、ブラッドリー・クーパー (コリン・ベイツ捜査官)、ローレンス・フィッシュバーン (主任特別捜査官)、マイケル・ペーニャ (トレビノ捜査官)、ダイアン・ウィースト(メアリー)、他

2.「運び屋」のあらすじ

運び屋 メインビジュアル
画像出典;https://eiga.com/movie/90319/gallery/

それでは、「運び屋」のあらすじをネタバレありと、ネタバレなしに分けてご紹介していきます。

「運び屋」のあらすじ(ネタバレなし)

この映画の主役は、もうすぐ90歳を迎えるアール・ストーンという老人です。

彼は、長年すべてを掛けてきた事業に失敗した上に、家族にも見放されて孤独に暮らしていました。

そんなとき、ふとしたきっかけで、メキシコ犯罪組織のドラッグの運び屋をすることになってしまいます。

車を運転するだけで大金が手に入ったことに味をしめたアールはその仕事を繰り返し、運ぶ量もどんどん増えていきます。

一方で麻薬取締局の捜査官コリン・ベイツは、1度に大量のドラッグを運ぶ運び屋の存在に気が付き、捜査を始めます。

追われるアールと彼を追う捜査官、2人の結末は一体どうなるのでしょうか。

「運び屋」のあらすじ(ネタバレあり)

物語は美しいデイリリーが並ぶ品評会から幕を開けます。

そこでひときわ人気があり、人だかりができているデイリリーを栽培したのが、主人公アール・ストーンです。彼はデイリリーの栽培にすべてをかけて来ました。

かといって、気難しい職人気質かといえばそうではなく、すれ違ったご婦人方に軽快な冗談を飛ばす、ユーモアのある自由なキャラクターです。

しかし、そんな彼にも欠点があります。それはデイリリーの栽培に心血を注ぎすぎたことで、家族をないがしろにしてしまったことです。

デイリリーの品評会のために、娘の結婚式さえ参加しなかったのです。そんな彼に家族は怒り、愛想を尽かしてしまいます。

そこから10年以上の月日が流れ、彼がすべてを掛けてきたデイリリーの販売は、通信販売との競合に破れ、家や農園が差し押さえられてしまいます。

そんなあるとき彼は、自分のことを家族の中で唯一、気にかけてくれている孫娘のブランチパーティーに顔を出します。

そこで、ある男に声をかけられます。

男は、アールのトラクターに目をつけて、

金に困っているなら、町から町へ車で走るだけでいい仕事がある。気が向いたら連絡しろ

と、電話番号を渡します。

アールは怪しさを感じつつも、仕事を引き受けます。

指定された場所では、メキシコ系の男たちが待っており、荷物を車に積まれ、携帯電話を渡されます。

こうしてアールは1度きりのつもりでこの仕事を始めます。

運び屋と聞けば、普通は暗いイメージを持ちますよね。

しかし、彼は音楽をかけ、鼻歌を歌いながら、ドライブ自体を楽しむかのように運転します。

そして、指定されたモーテルに到着して、しばらく車を離れ、戻ってみるとダッシュボードに予想以上の額の現金が入っていたのです。

さて、思わぬ大金が手に入ったアールは古かったトラクターの代わりに新品の黒い車を購入し、家族との関係を修復しようと孫娘の結婚パーティーにも援助をします。

簡単にお金が手に入ってしまうと、怪しいと思っていても続けてしまうのが人間の心理かもしれません。

差し押さえられていた家と農園を取り戻すため、火事にあった退役軍人会に援助をするため…。

アールは1度きりのはずだった運び屋の仕事を続けます。

そしてとうとう、その荷物の中に入っているものが何かを見てしまいます。

それは大量のコカインでした。

しかし、それを知ってもアールの運転は変わりません。相変わらず、鼻歌を歌いながら、好きなところで止まって、自由に運転するのです。

そんな運転で、ましてやドライバーは90歳の老人です。

ドラッグを運んでいるとは、誰も思いませんよね。

アールの仕事は毎回成功し、運ぶドラッグの量も報酬もどんどん増えていきます。

ドラッグをアールの車に積む役目のメキシコ人たちからも、“タタ(おじいちゃん)”と呼ばれ親しまれます。

しかし、そんな彼を監視する役目のフリオと、その弟分のサルは気が気ではありません。

ピリピリして彼に冷たく当たります。

そんなある時、アールは警官から職質をかけられてしまった彼らを助け、トランクの中身も機転を利かせてうまくごまかします。

それがきっかけで、フリオも徐々に心を許し始めます。

ついに今までで最も大量のドラッグを一度で運ぶことに成功したアールは、カルテルのボスの豪邸に招かれるまでになります。

しかし、そんなアールにも徐々に警察の手が伸び始めます。

麻薬取締局のコリン・ベイツ捜査官は、ドラッグの輸送の記録を知ることができる協力者を得ます。

そして、“タタ”とよばれる運び屋が大量のドラッグを運んでいることを知ります。

その運び屋は黒い車に乗っているという情報を得て、ルートを走る怪しそうな男が乗っている車に次々と職質をかけ始めます。

そんなときに、さらに有力な情報が入ります。“タタ”が今晩モーテルに泊まるというのです。

教えられたモーテルで張り込んでいると、そこに怪しげな大男がやってきました。

ベイツたちは、勢い込んで彼の部屋に踏み込みます。

しかし、ドラッグを所持はしていたものの少量で、男は“タタ”ではありませんでした。

さて、アールはどうしたのでしょう。

実は同じモーテルにいて、彼らの様子を窺っていました。

そして、ベイツらが追っているのが自分であると悟ります。

次の日の朝、近くのカフェでアールはベイツと出くわします。

自ら話しかけたアールに、この老人が“タタ”だとは思いもしないベイツは昨夜が奥さんとの記念日だったと話します。

アールはそんなベイツに

自分は家族をないがしろにしてきたことを後悔している、自分のようにはなるな。

とアドバイスします。

連日の捜査で疲れていたベイツにとって、自分のことを気遣ってくれた老人との会話はひとときの楽しい時間だったでしょう。

さて、麻薬取締局が捜査の手が伸びていることを知ったカルテルに大きな動きが起こります。

アールのやり方に好意的だったボスが、そのやり方に不満を持った手下のクーデターによって銃殺されてしまうのです。

新しくボスになった男は、アールにこれからは寄り道もせず、時間通りに運ぶよう厳しく命じ、逆らえばこうなると言って車のトランクを開きます。そこには、フリオの弟分、サルの死体がありました。

そんな状況で再び300キロものドラッグを積んで仕事に出たアールに、孫娘から1本の電話がかかってきます。

なんとアールの妻メアリーが危篤だというのです。

悩んだ末、アールはドラッグを積んだまま、メアリーのもとを訪れます。

死を前にしたメアリーはアールの来訪を喜び、それを見た娘もまた、母の愛を知ったことでアールを許します。

妻が亡くなるまで、アールはそのそばに寄り添い続けます。

一方、大量のドラッグを積んだままルートを外れ、姿を消したアールをカルテルは血眼で探し、妻の葬儀を終え再びルートに戻ってきたアールを見つけた彼らはアールを暴行し、目的地まで運ぶように言います。

しかし、カルテルの電話を盗聴していたベイツたちは、“タタ”の車を特定します。

そしてとうとう、アールは追い詰められます。

ベイツは彼に車を降りるよう命じ、その顔を見たとき、思わず「あんただったのか」と驚きの声を上げます。

裁判でアールは、弁護をしようとする声を遮り、

すべての罪で有罪だ

と認め、実刑判決を受けます。そんな彼に、娘のアイリスは優しく声をかけます。

それからしばらく経って、刑務所の柵の向こうには、家族との和解を果たし、罪を認めたアールが、穏やかな表情でデイリリーを植える姿がありました。

3.「運び屋」のみどころ

運び屋 画像
画像出典;https://eiga.com/movie/90319/gallery/

続いて、「運び屋」のみどころを4つの視点に分けてご紹介していきます。

驚くべき実話がベース

運び屋 画像
画像出典;https://eiga.com/movie/90319/gallery/

この物語は実は、実際にあった事件がベースになっています。

ニューヨーク・タイムズの「The Sinaloa Cartel’s 90-Year-Old Drug Mule」という記事が、この映画が作られるきっかけになりました。

事件は、レオ・シャープという退役軍人の園芸家が2009年から2011年まで運び屋をつとめ、1,400ポンド以上ものドラッグを運んだというものでした。

逮捕されたとき彼は87歳だったそうです。

実話とは信じられない話ですよね。

彼の人物像など、映画の中で忠実に再現されているイメージを持ちました。

これぞ映画!様々な要素と冴えわたる演出


画像出典;https://eiga.com/movie/90319/gallery/

みなさんは、この映画のポスタービジュアルを最初に見たとき、どんなイメージを持ちましたか?

タイトルは「運び屋」ですし、グレーが基調でちょっと暗そうな映画を想像しますよね。

でも、実際に映画をみると、見事にそのイメージを裏切られます。

この映画には、色々な要素があります。

まず、ロードムービーとしての要素です。

「運び屋」を見ていると、だだっ広いアメリカの荒野をアールと一緒になって鼻歌を歌いながら、ドライブしている気分になります。

美しいホワイト・サンズ国立公園の横のルートを走っているときなんて、荷台に大量のドラッグを積んでいることさえ忘れそうになるくらいです。

そして、アールという魅力的な自由人を主人公にもったこの映画は、時にはコメディにすらなります。

そして、ちょっと真面目な方は、朝鮮戦争の退役軍人であるアールに、典型的なアメリカ人を見て、アメリカの社会問題について考えるきっかけになるかもしれません。

例えば、悪気があるかどうかは別として、アールはタイヤのパンクで、困っている黒人のカップルを助けた際、彼らをニグロ(黒人の蔑称)”と呼んだりします。

そして、言うまでもなく、サスペンス映画としての緊張感も、申し分ありません。

些細なことでも、いかにうまく演出し、画面に映し出すことができるかは、監督の力量で大きく変わってきます。

例えばこの映画ではあるシーンで、顔が見えるか、見えないか、そんな微妙なラインを見事な演出で切り取ることで、驚くほど緊張感を作り出しています。

最後の重要な要素して、ヒューマンドラマとしても「運び屋」は魅力的な映画です。

この映画は、家族の物語であり、友情の物語でもあるのです。

これらすべての要素が、違和感なく完璧に表現されていることに驚いてしまいます。

イーストウッドの答え

運び屋 画像
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この映画でイーストウッドが演じる主人公アールは、

自分は仕事ばかりで今まで家族を大切にしなかった。それが一番大事なのに。

と語ります。そして、この物語の最も大きなテーマも実は家族との和解なのです。

「家族が一番大事」なんて、わかりきった単純なことと思えるかも知れません。

でも、本当にそれを実感して毎日を生きているかと言われれば、ちょっと悩んでしまいますよね。

実は、この映画でアールの娘役を演じるアリソン・イーストウッドはクリント・イーストウッドの実の娘なのです。彼女を起用し、90歳近くなった彼がセリフを借りて語る言葉は、役柄以上の実感と重みがあるように感じてしまいます。

4.他人事じゃない!メキシコ麻薬カルテルの現状


画像出典;https://eiga.com/movie/90319/gallery/

日本に住んでいると、麻薬カルテルの存在なんて、関係のない、遠いことのように感じますよね。

でもこの映画を見て、改めて考えたとき他人事では済まされないことが分かります。

まず、主人公アール自身が、90年生きてきて、まさか自分がドラッグの運び屋になるなんて思いもしなかったはずです。

“普通”の暮らしからいきなりブラックな世界に足を踏み入れてしまうわけです。

では、そこで元からいるカルテルの構成員たちは“普通”ではないのでしょうか。

「運び屋」の中で、アールが、お互いに心を開いたカルテルの構成員であるフリオにカルテルから抜けて、もっと人生を楽しめと言うシーンがあります。

しかし、フリオは

カルテルのボスは自分を拾ってくれた恩人だから、裏切ることは出来ない

と答えます。

こういった現状は、決して映画の中だけの話ではありません。

カルテルが、貧しさで生活できない若者や、親に捨てられた子どもの受け皿になってしまうということは、珍しいことではないのです。

彼らはそこで本物の家族のように受け入れられ、抜け出すことが容易ではなくなってしまうのです。

こういったことが、日本に住む私達には全く関係のない話だと言い切れるでしょうか。

実は、日本の暴力団組織などでも、同じような状況が起こっています。

例えば、大阪のある指定暴力団の姿を追ったドキュメンタリー「ヤクザと憲法」という映画の中にも、組織に恩を感じ、抜けることを考えられない人や、見習いとして所属するまだ若い青年の姿が映し出さます。

家族や学校など社会から受け入れられず、居場所を求めて暗い世界に足を踏み入れてしまう。

実は彼らを追い込んでいるのは、近くに生活する私達自身かもしれません。

そういった現状を少しでも無くすためにはどうすればいいのでしょうか。

それにはやはり、身近なところから居場所を作っていくしかないと思います。

例えば、最近ニュースなどでも取り上げられるようになった“子ども食堂”があります。

貧困や家族の問題を家庭内だけの問題ではないと考え、子どもが1人にならないように地域全体で見守る取り組みのひとつです。

周りに生活する人に無関心ではなく、少しだけ気にかけたり、一言声をかけたり…

いきなり大きく現状を変えるのは難しいことかも知れませんが、私たちが日常で生活する中で、少し意識を変えるだけでも、ちょっとした変化のきっかけになるかも知れません。

5.「運び屋」はこんな人におすすめ

運び屋 画像
画像出典;https://eiga.com/movie/90319/gallery/

最後に、私が「運び屋」を特におすすめしたい人をご紹介していきます。

普通のクライム・サスペンスでは物足りない人

サスペンスとしての要素はもちろんロードムービー、コメディ、そして良質なヒューマンドラマと様々な要素を併せ持つ「運び屋」は、クライム・サスペンスのイメージを大きく変えるかも知れません。

年齢を重ねても、常に新しいことに挑戦し続けるクリント・イーストウッドが更にアップデートした新しい映画を体感できます。

日常にちょっと疲れた人

仕事や学校に出掛けたり、毎日同じ生活でちょっと疲れている方におすすめです。

人生の酸いも甘いも知り尽くした大先輩であるアールと一緒に、アメリカの広大な荒野をドライブするだけでも、きっとちょっとだけ楽になります。

映画を見終われば、見慣れた顔も改めて大切に思えるかも知れません。

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