こんにちはエンタメブリッジのごーです。
今回は映画「ヘイト・ユー・ギブ」を紹介します。
世界的に最も影響力があり、夢の国とも言われて華やかさがある国アメリカ。
しかし、そんなアメリカンドリームのある国にも多くの問題があります。
人種差別はその一つでり、最も大きな問題の一つです。
アメリカは多くの移民や人種が共に暮らす国です。
そのため、独自のコミュニティーも出来上がり、コミュニティー同士のいざこざや差別も絶えません。
今回紹介する「ヘイト・ユー・ギブ」はアメリカ国内に根強く残る人種差別の問題を正面から取り上げた作品です。
この記事を書いているのは2020年7月です。
アメリカではジョージ・フロイドさんが白人警官に殺害されたために、あらゆる地域で抗議活動が起こりました。
そんな今だからこそ、この作品を観るべきだと思います。
日本でされている報道よりも、この映画を観るほうがアメリカ黒人への差別がどのようなものか理解できます。
それでは、作品の紹介から始めましょう。
1.「ヘイト・ユー・ギブ」の作品紹介
監督: ジョージ・ティルマン・ジュニア
原作者: アンジー・トーマス
原作: ザ・ヘイト・ユー・ギブ あなたがくれた憎しみ
出演者:アマンドラ・ステンバーグ、レジーナ・ホール、ラッセル・ホーンズビー、KJ・アパ
2.「ヘイト・ユー・ギブ」のあらすじ
画像出典:https://video.unext.jp/
「ヘイト・ユー・ギブ」は主人公の幼馴染が、警察によって射殺されるところから本題が始まります。
非常に衝撃的なシーンから始まりますが、そんな状況でも主人公が力強く生きていく部分を描写しています。
主人公は黒人女性。
そんな警察による射殺の目撃者である主人公が、自分の置かれた状況や社会の在り方をどのように受け入れていくのか?
主人公の感情の変化や成長を軸としてあらすじを追いかけていきましょう。
「ヘイト・ユー・ギブ」のあらすじ(ネタバレなし)
画像出典:https://video.unext.jp/
黒人コミュニティーに住んでいるスター(主人公の名前)は、父親のマーベリックと母親、そして兄のセブンと年の離れた弟のセカニと5人で生活していました。
両親は子供たちを守るために、地元の高校ではなく進学校にセブンとスターを通わせています。
スターは高校で、第二の自分を演じながら生きていました。
黒人としての肌はあるものの、白人がイメージするタフな黒人ではなく優等生として。
高校には白人の恋人クリスも通っていて、他の白人女生徒たちからは奇異の目で見られていました。
なぜ、白人の人気者のクリスが黒人のスターと付き合っているのか?
放課後になり、地元に帰ったスターは黒人としての生活を取り戻します。
そう、第一のスターとして生きるのです。
夜になると、黒人たちが集まるパーティーに参加します。
パーティーが好きではないスターでした。
しかし、そこに幼馴染で元恋人のカリルが登場。
スターは嬉しくなってカリルと話し込みます。
そんな中、パーティーで喧嘩が勃発。銃声が鳴り響きます。
カリルと共に逃げ出すスター。
全員無事に逃げられました。
しかし、カリルが運転する車が突然パトカーに停められてしまいます。
何も悪いことをしていないカリルは、少しだけ警官に反抗してしまいます。
身分証を照会している間、カリルは手を上げていなければいけませんでした。
しかし、カリルは車の中からくしを取り出そうとします。
それに反応した警官はカリルを銃で撃ちます。
警官が撃った銃弾はカリルに命中。
カリルは死んでしまいました。
カリルの死を目撃したスター。
今後、スターはどのように生きていくのでしょうか。
「ヘイト・ユー・ギブ」のあらすじ(ネタバレあり)
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主人公のスターは黒人が住むコミュニティーで両親と兄弟三人の合計五人で暮らしていました。
スターの両親は子供に良質な環境と教育を与えるために、地元の高校ではなく白人が多く通う進学校に入学させました。
スターはここでは、黒人としてではなく良識のある生徒として生活しています。
自身の出自を隠した二重生活を送っているのです。
白人の彼氏や友人は、映画のマネをして黒人文化の言葉を多用します。
白人にとって黒人が使う汚い言葉を多用するのはある種のおしゃれであり、格好の良い行為なのです。
しかし、スターは黒人が使用する言葉は使いません。
「スター・バージョン2(礼儀正しい良い子)」として高校生活を送っているからです。
そんなスターでしたが、放課後は黒人の地元の友達と遊んでいます。
夜になると、黒人たちが集まるパーティーに参加します。
そのパーティーではたまたま、幼馴染で一緒にお風呂にも入ったことのあるカリルに再会します。
パーティーには、暗黙のギャング同士の縄張りがあります。
スターとカリルが思い出話をしていると突然の銃声。
ギャング同士の抗争が始まってしまったのです。
全員パーティー会場から逃げだします。
こういったことは、黒人の地域では日常の事なのです。
カリルの車で逃げだしたスターは友人の安否も確認できました。
彼氏がいるのに止めた車の中で、カリルとキスをするスター。
二人が再び車で走り出すと、パトカーがカリルの車を停めます。
ダッシュボードに手を上げるスター。
しかし、悪いことを何もしていないカリルは警察の対応に対して反抗的です。
結局、外に連れ出され免許証の照会を行っている警察。
カリルは車の中からヘアブラシを取り出し、髪形を整えようとします。
スターはじっとしているようにカリルに言いますが、カリルはスターのいう事を聞きません。
警察が突然叫び、銃を構えて躊躇なく引き金を引きます。
スターは手錠をはめられ、カリルは銃撃されてしまったのです。
泣き叫ぶスターですが、警察は救急車すら呼びません。
結局、カリルは命を落としてしまいます。
スターは黒人青年殺害の目撃者になってしまったのです。
カリルの葬式は黒人コミュニティーのある教会で行われました。
そこにはギャングのボスであるキングも来ました。
キングはカリルを麻薬の売人として利用していたのです。
この地域の人々は皆、キングの支配に怯えていたのでした。
カリルの葬式の後、黒人の人権団体の女性が平和的なデモを起こすことを扇動します。
黒人たちは抗議活動を始めますが、徐々にその運動は収拾がつかなくなっていってしまいます。
次の日の朝、スターが高校に行くと、生徒たちは喜び勇んでお祭り気分になっています。
その理由は、各地での黒人によるデモによる午後の授業の休講でした。
彼らにとって、黒人によるデモはお祭りのようなものだったのです。
そんな雰囲気に耐えられなくなったスターは、友達の誘いを断って家に帰ります。
スターは決意しました。
自分が証言台に立つという事を。
この決意には、二つの点で非常に危険な状況にスターを導きます。
一つは白人からの差別の対象になるという事、そしてキングの標的になるという事です。
勇気を振り絞ってスターは、テレビ局のメディアで目撃者として登場します。
キャスターに聞かれた内容はカリルが麻薬の売人であったかどうか、など。
スターは困惑してしまいますが、キングの配下として麻薬を売っていたであろうという事をテレビで証言します。
テレビ局での証言の後、スター家族はレストランで会食をします。
そんな幸せな雰囲気を、キングたちが遮ります。
レストランの外ではキングとその部下がスターたちの家族を待っています。
父であるマーベリックはキングと直接話そうとします。
もめごとになりそうな時に、パトカーが入ってきます。
キングたちは逃げましたが、マーベリックは警察によって取り調べを受けます。
その取り調べは非常に手荒いものでした。
しかし、そんな取り調べに対しても無抵抗を貫くマーベリック。
身分を証明し警察から離されました。
一連の流れを全て見ていたスターと子供たち。
スターは責任を感じてしまい、父親のマーベリックに謝ります。
しかし、マーベリックは子供たちに教えます。
圧力に負けて口を閉ざすな
白人の友達と遊んでいるスター。
テレビの放送では白人警官を擁護するニュースが流れています。
友人と喧嘩してしまうスター。
そのことを母親に相談します。
得ることのほうが少ないなら、離れなさい
プロムに参加するスター。
そこには迎えに行けなかった白人の恋人クリスが待っています。
クリスはスターがテレビで証言したことを知っていました。
そこで、スターは自分の出自のすべてを打ち明けました。
その夜、初めてスターは白人の恋人であるクリスを父親に紹介します。
白人の彼氏に少し驚くマーベリックでしたが、スターを許します。
その瞬間、家をキングの配下が銃撃します。
家族を連れて安全な場所に移した後で、マーベリックは次の襲撃に備えるために息子のセブンと共に家に戻ります。
数日が経ち、スターの携帯電話に連絡が入ります。
セブンがキングたちに襲撃されたのです。
キングの家までセブンを助けに行くスターとクリス。
セブンは暴力を受けて、かなりの傷を負っています。
セブンを車に乗せて逃げるスターたちは、多くの黒人民衆たちがデモ行進をしている現場に居合わせます。
カリルを殺した白人警官は無罪になったのです。
黒人たちは怒っているのです。
この抵抗運動は徐々にエスカレート。
抵抗運動をする黒人たちと機動隊の間でもみ合いが始まります。
そこで、スターは拡声器を持ち、演説を始めます。
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カリルがどう死んだかは問題じゃない。
どう生きたかが問題だ。
カリルは生きていた。
大事なのは彼の命だ(His Lives Matter)
スターの演説の後、機動隊は民衆に向けて催涙弾の放ち制圧に踏み切ります。
混沌としてくる路上。
なんとかスタートセブンは危険な状況から逃げだします。
父親の店まで逃げ帰るスターたち。
キングはスターたちもろともお店に火を放ちます。
店は全焼してしまいますが、なんとかマーベリックがスターとセブンを救出します。
しかし、そこにはキングが混乱に乗じてスターを殺そうと迫ります。
怒ったマーベリックとキングが向き合った時でした。
まだ子供で末っ子のセカニが父親を守ろうとキングに銃を向けます。
緊張が走る現場。
パトカーが到着するも、警官はその場の状況に身動きが取れなくなります。
今にも銃の引き金を引いてしまいそうなセカニをなだめようとするマーベリック。
しかし、セカニはキングへ向けた銃を下ろそうとはしません。
キングと警察、そしてセカニの間に割って入るスター。
血を流すことなくその場をまとめます。
キングは放火の容疑で警察に逮捕され、街には平和が戻りました。
スターたちは同じコミュニティーに住むことを選択しました。
3.「ヘイト・ユー・ギブ」のみどころ
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「ヘイト・ユー・ギブ」の見どころを一言で表すと、現実社会の不平等をたくましく生きる人々の生き様です。
アメリカは人種や民族、文化が交じり合って出来ている国。
しかし、有識者が「モザイク型」と表現するように、決して交わることのない部分も存在しているのです。
その状況が顕著に表れているのが「人種差別」の問題です。
日本に住んでいる私たちが観るべきなのは、現実に起こっている負の部分、アメリカ国内における人種による差別の部分なのです。
白人警官に対して黒人が守るべきルール
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2020年春、ジョージ・フロイドさんの死によって、世界的なデモが巻き起こりました。
その過程で、多くの人々がそれぞれの経験を発信しています。
中でも有名になったのは、TicTocに投稿された高校生の動画です。
投稿動画の内容は母親に言われた「若い黒人が従うべき暗黙のルール」です。
こちらの記事で動画もルールの内容も確認できます。
「ヘイト・ユー・ギブ」では父親であるマーベリックが主人公のスターにこのことを教えています。
もとはブラックパンサー党の綱領からの引用です。
こららのルールを守っておかなければならないのはなぜか?
身を守るため。
白人警官に殺されてしまうかもしれないからです。
それだけ、黒人であるという事は危険であるという事なのです。
「タンクトップで外を歩いてはいけない」、「ポケットに手を入れてはいけない」、「身分証なしに外に出てはいけない」など、日本国内では考えられますか?
実際にアメリカで生活している黒人はこれらの「暗黙のルール」を守らなければいけないのです。
メディアが善悪の審判を下す
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作品中には、スターが通う学校の白人の友人宅で遊ぶシーンが出てきます。
遊んでいる最中にニュース番組で報道されていたのは、黒人の青年を撃ち殺した白人警官の話です。
ニュースの立場は白人からの視点でした。
仕方なく射殺するしかなかったのに、責められている可哀そうな白人警官という文脈で事件が紹介されていました。
それを観た白人の友人は、白人警官に対して同情します。
もちろん、スターは立場が違います。
スターは当事者なのです。
事件の内容は全てメディアの報道の仕方や立場によって、演出方法も異なってきます。
メディアによって、善悪の価値基準が方向づけられて行ってしまうのです。
ジョージ・フロイド氏の死をめぐる抵抗運動は、SNSなどのネットメディアも議論の場とされました。
そこで、問題になったのがFacebookです。
Facebookにはデモに対する誹謗中傷などの記事が多く投稿されました。
それらの誹謗中傷記事には中立性が無いとして、Facebookにクレームがつきました。
しかし、FacebookのCEOであるマーク・ザッカーバーグは、運営者が善悪の判断を下してはいけないとして、これらの誹謗中傷記事の削除をしない方向でいくという立場を示しました。
SNSは誰でもが自由に投稿が出来る場です。
事件の善悪は同時代的には判断することが出来ない場合もあります。
さて、大衆の善悪の価値判断を方向づけてしまうメディア、歴史はこの事件に対してどのような判断が下すのでしょうか。
主人公が勇気を振り絞り法廷に立つ
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スターが置かれた立場は非常に複雑です。
なぜなら、白人警官に射殺された友人のことを正直に証言するだけではないからです。
黒人差別をしている白人の集団から責められるかもしれません。
同級生にバレてしまえば、普通の高校生活を送ることは二度と出来ないかもしれません。
また、黒人コミュニティーを仕切っているギャングに不利な証言になってしまえば、ギャングからも狙われてしまうことになります。
ギャングはスターだけではなく、スターの家族も危険にさらすという事なのです。
そして、スターにとって証言台に立つという事は、友人の死と向き合わなければならないという事でもあります。
スターは目の前で友人を二人殺されています。
一人は白人警官に殺されたカリル。
そして、もう一人はキングの部下であるギャングに殺された幼馴染です。
スターは過去の自分とも勇気を振り絞って向き合わなければならなかったのです。
4.「ヘイト・ユー・ギブ」私の視点
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「ヘイト・ユー・ギブ」はアメリカの闇の部分を勇気を持って表現し、アメリカに住む人々に対し現実の問題を突きつけている作品です。
また、世界的に放映されている理由は、こういった不平等な現実がアメリカという国家にはあるのだという事を広めるためでもあると思います。
実際に、ジョージ・フロイドさんの死をきっかけに広がった、人種差別への抗議は平和的に始まりました。
しかし、いつしか暴動へと発展してしまっています。
アメリカではロサンゼルスでも1992年に暴動が起こっています。
同じような出来事が起こる背景には、根本的な問題が深い影を落としているのです。
黒人であるという事は容疑者であるという事
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アメリカ黒人の比較的低所得者層が住んでいる地域では犯罪率も高く、黒人であるという事が既に容疑者であるという事になってしまいます。
実際に、その犯罪率を高めているのは黒人ギャングによるものであるという事は事実です。
暴力的な事件や違法な薬物の売買は常に行われています。
しかも、ギャング同士の抗争の時には当たり前の様に銃が用いられます。
アメリカは銃社会であり、比較的に銃などの武器が手に入りやすい状況にあります。
そのため、警察もギャングからの銃による襲撃に備えなければなりません。
警察も命がけなのです。
警察は常に黒人が銃を取り出すのではないかと身構えています。
そのため、警官は黒人が何か不審な動きがあるとすぐに銃を抜くのです。
ここでは悪循環が起こっています。
貧困な地域に住む黒人たちの犯罪率の増加が偏見を生み、さらにその偏見による差別が犯罪を生むという悪循環です。
一般市民も「防衛」のために銃を所持することを選ぶのです。
暴動が起きた時に、銃を売る店が非常に繁盛したというのも皮肉な事実です。
現実に同じ悲劇が何度も繰り返されている
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この映画は現実を基に製作されています。
原作の小説は、実際に起こった事件をそのまま描写することで成り立っている物語です。
この作品には主人公が実際に目の当たりにした事件以外にも、これまでにアメリカで起こった数々の事件を取り上げています。
どの事件も白人警官による、黒人への不当な暴力です。
事件のたびに抵抗運動は起こりますが、ほとんどの場合は時間と共に忘れられてしまいます。
また、多くの事件は報道にすらなりません。
作品中に出てくるエメット・ティルの事件は、画像ありで出てきますが非常に残酷です。
1992年に起こった大規模な暴動であるロス暴動も忘れてはいけません。
この暴動も発端となったのは、ロドニー・キングに対する大勢の白人警官によるリンチ映像が公表されたことです。
約30年経て起こった2020年の抵抗運動もジョージ・フロイドさんへの白人警官の暴行が原因で起こっています。
タイトル「ヘイト・ユー・ギブ」の意味
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本作品のタイトルとなっている「ヘイト・ユー・ギブ」は、伝説のラッパー2パックが多用していたセリフが由来となっています。
2パックのお腹のあたりには「THUG LIFE」と書かれたタトゥーが入っています。
「THUG」という言葉はそもそも「悪党」とか「チンピラ」などを示しています。
しかし、2パックはそういった意味で「 THUG LIFE 」を使っていません。
作品中も紹介されていますが、これは接頭語「 The Hate U(You) Give Little Infants Fucks Everybody (子供たちへの憎しみが皆を蝕む)」という意味です。
黒人たちは子供時代から多くの差別に苦しんで成長していきます。
そんな子供たちが年を追うごとに憎しみを暴力へと変換していくのです。
したがって、子供時代からの教育が大事だと主張しているのです。
この映画の主人公のスターは高校生。
最も感受性の高い時代です。
そんな女の子を襲ったのが、悲劇的な事件なのです。
そして、そんな女の子を支えたのは家族であり親であり、恋人だったのかもしれません。
差別する白人は差別されている黒人の気持ちを理解できるか?
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住んでいる地域とは異なる、白人の通う進学校に通うスター。
恋人も白人ですし、友人も白人です。
何気ない日常の中では、全く問題もなく生活しているスターとその友人達。
しかしながら、黒人と白人との間に問題が起こることでスターたちにも影響は忍び寄ります。
結局、友人だった白人の女のことは理解しあうことが出来ませんでした。
白人の友達は黒人が置かれている状況を理解することが出来なかったのです。
白人の友人と絶交をする際にスターは、白人の女の子に対し白人警察官が日常的に黒人に行っていることをやってみせます。
「手を上げろ( nigga) 」、「地面に伏せろ (nigga) 」。
「 nigga 」は黒人に対する差別用語です。
作品中では「nigga」の部分を友人の名前に変えてスターが叫んでいます。
最近では報道でこの用語を使う人はいませんが、過去の報道番組を見ると多くのレポーターがこの言葉を使っています。
過去の映像を見て言葉の中に無意識に表れている差別を見ると、差別の撤廃はかなり難しいものに感じられます。
しかし、2020年になり平和的な抗議活動の中には黒人だけではなく、多くの白人や他の人種の人々も参加しています。
そのうねりは世界的に広がり、日本国内でもデモが行われたほどです。
この点を見ると、差別に対する意識の高まりを感じられます。
「 Black Lives Matter 」の意味
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2020年の差別撤廃運動で有名になった「 Black Lives Matter 」という言葉はこの作品にも登場します。
日本国内ではこの言葉の意味が分からないという議論も起こりました。
日本語に訳すと「黒人の命も大切だ」という意味になります。
一時的に日本国内ではこの翻訳に対して疑問に思う人もいたようです。
その主張は、この翻訳だと黒人の地位が低いという事を前提にしているため、差別的だということでした。
しかし、これはまさに日本国内での意見と言っておかしくありません。
アメリカ黒人はこれまでに400年の間、白人からの差別に苦しんでいたのです。
この言葉は白人や権力者に対して現実を突きつけている言葉なのです。
日本語に訳し難いこの言葉は、スターが最後に叫びます。
あらすじでも紹介しましたが、もう一度引用しておきましょう。
名訳です。
カリルがどう死んだかは問題じゃない。
どう生きたかが問題だ。
カリルは生きていた。
大事なのは彼の命だ(His Lives Matter)
スターの叫んだ言葉には、幼馴染が生きていた証なのです。
5.「ヘイト・ユー・ギブ」をおすすめしたい人
画像出典:https://video.unext.jp/
「ヘイト・ユー・ギブ」は決して娯楽作品にはなっていません。
もちろん、家族愛などのホッとする部分もありますが、主題となるのは差別であり友人の死です。
この映画は、アメリカの現実や差別、暴力の問題を直視した映画になっています。
そのため、この映画は社会派映画として、日本に生きる私たち自身の差別意識についても考えさせます。
そんな「ヘイト・ユー・ギブ」をおすすめしたい人を紹介していきます。
アメリカ黒人の文化や歴史、現在の生活を知りたい人
画像出典:https://video.unext.jp/
日本は島国であり、外国籍居住者は日本の人口の約2%に過ぎません。
したがって、アメリカよりも人種差別が表立った問題にはなっていません。
ただし、今後は日本国内もグローバル化し、多くの外国人が居住することになっていくでしょう。
実感として、現在ではグローバル化も進み、日本国籍であるものの外国人の血を引いている人も多くなってきました。
テニスの大阪なおみ選手やバスケットボールの八村塁選手などは、海外でも活躍する日本人です。
彼らも国籍は日本人であるものの、見た目は明らかに海外の血を引いています。
現在は日本国内でアメリカほどの人種差別は起こっていませんが、もしかしたら近い将来日本国内もアメリカのような人種差別が起こっても不思議ではありません。
「ヘイト・ユー・ギブ」はアメリカ黒人の文化や歴史、現在の生活を知ることが出来る作品です。
アメリカのそういった影の部分を知りたい人や、今後の日本の社会をどのような国際社会にしていくか考えている人におすすめの作品です。
差別がどこから来るのか?という疑問を持っている人
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「差別がいけないことである」という意見や理想に反論を唱える人は、現在では少なくなっているかもしれません。
多くの人が差別が無くなることを願っていても、無くならないのが差別というものです。
それでは、なぜ差別はなくならないのか?
同様な事件が繰り返し起きてしまうのか?
こういった問いが立てられるはずです。
そして、発展して「差別はどこから来るのか」という問いとなるでしょう。
答えとして充分にはなっていませんが、一般的な回答としては「無知への恐怖」が挙げられます。
黒人の生活を知らない白人たち、白人の生活を知らない黒人たちの間に溝が出来て現在にまで差別が続いているのです。
「知ること」が全ての差別問題を解決するわけではありません。
しかし、知らなければ、差別問題は全く解決することはないのです。
そういった意味で、「ヘイト・ユー・ギブ」は差別がどこから来るのか?という疑問を持っている人におすすめの作品です。
未だ海外に行ったことのない若い人々
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「ヘイト・ユー・ギブ」は、未だに海外に行ったことのない学生や若い人々にはおすすめの作品です。
海外旅行に行こうというとき、旅行会社の宣伝による観光地としての外国しか知らない人も多くいることでしょう。
もちろん、観光地としての外国も一つの側面でしょう。
しかしながら、観光地として宣伝されている国にもそれぞれに問題を抱えています。
全く問題を抱えていない国はありません。
国は人間社会として成り立っている以上、生活する人々がどのような問題を抱えて生きているのか知ることも海外旅行の醍醐味の一つです。
渡航の前にはある程度、知識を蓄えておくことも大事です。
「ヘイト・ユー・ギブ」はアメリカに存在している問題を取り上げている作品です。
今後、アメリカに行くという機会がある人、特に若く感受性の高い人にこの作品はおすすめです。
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