政治素人による素人のための映画「新聞記者」徹底解説!【ネタバレ/キャスト】

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こんにちは。

エンタメブリッジライターのhappaです。

いきなりですが、

報道の自由度ランキング67位(180ヶ国中)

これってどこの国のことかお分りでしょうか。

このランキングは毎年、国境なき記者団が発表しているもので67位というのは実は2019年度の日本の順位なんです。

先進国としてはかなり低い順位にあり、G7のなかでは最下位。

「問題のある状況」とされています。

要因としては、経済最優先で多様な報道がしづらくなっていること、沖縄の米軍基地問題など非愛国的な報道がしづらくなっていることなどが挙げられてます。

もちろん、このランキングはあくまでも一機関が独自の方法で調査し発表しているもので、現状の全てを表しているわけではありません。

しかし、今の日本の報道と政治を考える1つの指標にはなるのではないでしょうか。

これからご紹介する映画「新聞記者」はそんな現代の日本の報道記者と官僚が主人公の物語です。

ではさっそく始めていきましょう!

1.「新聞記者」の作品紹介

公開日:2019年6月28日 (日本)
監督:藤井道人
原案:望月衣塑子
出演者:シム・ウンギョン、松坂桃李、本田翼、岡山天音、郭智博、長田成哉、宮野陽名、高橋努、西田尚美、高橋和也、北村有起哉、田中哲司、ほか。

2.「新聞記者」のあらすじ

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画像出典;https://eiga.com/movie/90346/gallery/2/

まずは「新聞記者」のあらすじからご紹介していきますね。

この映画、政治がテーマでポスターもちょっと暗め。

なんとなーく暗くて真面目な映画を想像している方も多いのではないでしょうか。

確かに暗くて真面目なのもこの映画の1つの面です。笑

しかし私が実際に観た感想は、“けっこうしっかりエンターテイメントとして作られているな。”ということでした。

なので、あらすじを読まれる方にもまずは気軽に、エンターテイメントとしてこの映画を楽しんでもらえたらいいなと思います!

「新聞記者」のあらすじ(ネタバレなし)

さて、まずはネタバレせずにざざっとあらすじをご紹介します。

主人公吉岡は、記者として正義感を持って東都新聞で働いています。

そんな彼女の元にある時、大学新設計画に関するファックスが匿名で届きます。

その認可先が通常の文部科学省ではなく内閣府であることなどを不審に思った彼女は、調査を始めます。

一方、内閣情報調査室に勤める官僚の杉原は、現政権に不都合な情報を操作する現在の自分の仕事に戸惑いを感じていました。

そんな時、彼はやりがいを持って働けていた外務省時代の信用する上司、神崎の自殺を知ります。

神崎の葬儀で出会った吉岡と杉原は、神崎の死の真相を調べるうちに思わぬ事実を知ることになります…。

「新聞記者」のあらすじ(ネタバレあり)

東都新聞の社会部で記者として働く吉岡は、現政権に逆らった人間が、内閣情報調査室(通称:内調)のリークによって社会的信用を失墜させられていることや、現政権に近い記者が加害者のレイプ事件が被害者側の過失のように報道される現状に怒りを感じています。

ちなみに内閣情報調査室とはそもそもどんな機関なのか?

内閣官房の公式ホームページには以下のように説明されています。

内閣情報調査室は、内閣の重要政策に関する情報の収集及び分析その他の調査に関する事務並びに特定秘密の保護に関する事務を担当しており、内閣情報官のもとで、次長及び総務部門、国内部門、国際部門、経済部門、内閣情報集約センター並びに内閣衛星情報センターで分担し、処理しています。

そんな彼女の元に、あるファックスが届きます。

それはある医療系の大学の新設計画に関する極秘資料でした。

最後のページには羊の絵が…。

資料を読んだ彼女は、その新設計画の認可先が文部科学省でなく、内閣府となっていることに疑問を持ち上司の許可を得て調査を始めます。

調査の行方も気になるところですが、ここでもう1人の主人公をご紹介します。

内調に勤めるエリート官僚、杉原です。

彼は吉岡が怒りを感じている、現政権を守るための情報操作、まさにその仕事をしています。

情報操作なんて言うと、難しいことをしてそうですが、その実情が驚きです。

先のレイプ事件に関しては、被害者女性と野党議員のつながりを示唆する相関図をでっち上げたり、いわゆるネトウヨのふりをしてツイッターに書き込みをしたり…。

杉原はそんな仕事に戸惑いを感じていました。

家に帰れば、妊娠中の妻がいます。

妻は良き理解者ではありますが、仕事のことは話せず、悩んでいました。

ちなみに対する吉岡の方は、家に帰っても出迎える人もおらず、仕事漬けの毎日です。

しかし彼女を支えているもの、それは同じジャーナリストだった父の存在です。

今は亡きその父が亡くなった原因も気になるところですが、まずは杉原の話に戻りますね。

彼の元に外務省時代の上司、神崎から連絡があります。

神崎は杉原にとって、尊敬できる大切な存在でした。

旧交を温めたその数日後に、神崎は、

俺たちは一体何を守ってきたんだろう。

すまない。

という言葉を残して投身自殺してしまいます。

メディアでは、神崎が公金を不正流用しており、その罪の意識に耐えかねて自殺したと報道されます。

神崎がそんなことをするわけがないと思った杉原は、内調の上司の多田にも訴えますが、神崎を追い詰めた張本人が実は内調だったことが次第に明らかになります。

一方で、神崎が内閣府に出向していたことを知った吉岡は大学新設のことを調査するため神崎の葬儀に参加します。

しかし、そこでマスコミに囲まれる家族を、父を失った自分自身に重ね合わせた吉岡は思わず彼らを擁護します。

それを見ていた杉原が、「君もそっち側だろう。」と言うのに対し、彼女は

私は神崎さんが亡くなった本当の理由が知りたい。

家族を残して、背負えないものがなんなのか。

と答えます。

葛藤する杉原の元に、妻が帝王切開で出産したと連絡が入ります。

杉原は何度もかかってきていた連絡も無視し、家庭を顧みなかった自分自身、家族に誇る仕事をしていない自分自身を責めます。

さて、大学新設について調査していた吉岡は少しづつ真相に近づき始めます。

建設地が新潟に決まっていたが、それが頓挫していたことが分かったのです。

ファックスを送ったのは神崎で、大学計画を止めたかったのではないかと吉岡は疑い始めます。

同じ頃、杉原も神崎の死の真相を知るために、調査していました。

そして、大学計画はまだ終わっていないこと、場所を変えて来月には申請されることを突き止めます。

杉原はそれでは神崎の死が無駄になってしまうと、吉岡にそのことを伝えます。

そこで吉岡の葛藤が始まります。

新聞社のトップに圧力がかかり、記事を出せば誤報になると言われるのです。

吉岡の父は実は誤報を出したとされ、その責任を取って自殺していたのです。

確証を得たい吉岡は神崎宅を訪れます。

そこで、神崎の妻に夫が娘のために書いた羊の絵を見せられます。

それは、ファックスに描かれていたものと同じものでした。

そして吉岡はそこで1冊の本を見つけます。

それは“Dugway sheep incident”を題材としたものでした。

ちょっとこの事件について1968年4月5日付のタイム誌の記事を参考に解説すると、

1968年アメリカのユタ州にある陸軍の軍事施設ダーグウェイ試験場から風下14マイル広がる地域において4,500頭以上の羊が死んでいるのが発見されました。

原因はそこで研究されていた神経ガスが漏れたことでした。

衝撃的な事件ですよね。

政府は日本のダーグウェイ、つまり生物兵器を作ることができる施設を作ろうとしていたのです。

大学設立の真の目的は、医療ではなくて軍事だったのです。

吉岡は杉原に確証を持って記事にするために協力を仰ぎます。

杉原は自分は国側の人間だからと一度は断りますが、妻と子どもの将来を顧みた時、吉岡に協力する決心をします。

彼は神崎の後を継いで計画を担当している都築のデスクを探し、とうとう大学がBSL4(バイオセーフティーレベルの最も高いエボラウイルスなど)の研究が可能な施設であること、そしてそれが表向きは平和目的でも実際は軍事転用が可能と明記してある資料を見つけます。

吉岡は内調から再び情報を出せば誤報になると圧力を受け、杉原もまた、動きに気付いた多田から圧力を受けます。

しかし杉原は吉岡に、誤報だという記事が出た場合は続報で自分(内閣の官僚である杉原自身)の実名を出すよう言います。

そしてとうとう、東都新聞の一面で記事が出ます。

すぐ後を追うようにそれが誤報だというフェイクニュースが出ますが、大手の新聞各社が東都新聞の記事の後を追い始め、約束どおり続報で杉原の名前を出します。

多田は、吉岡に

あなたのお父さんの記事は本当は誤報ではなかった。

でも死んでしまった。

と脅しの電話をかけます。

そして杉原にも、

外務省へ戻れるよう口利きしてやる。

今持っている情報は全て忘れろ。

と取引を持ちかけます。

さて、2人はその後の決断をどうするのでしょうか。

ラストシーンは交差点を挟んだ2人で終わります。

彼らが闘い続けるのか、それとも屈するのか、みなさんはどちらだと思いますか?

3.「新聞記者」のみどころ

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最初に言っておきたいのですが、タイトルにもある通り、私は政治や報道に関しては全くの素人です。

政治学なんて大学で一般教養として講義を聞いた程度、毎日のニュースは人並みに気になって選挙にも行くけれど、専門的なことや難しいことなんて全く分からず、感覚で生きている人間です。

そんな、素人なりの目線でこの映画で描かれる政治の裏側についてちょっと考えつつ、見どころをご紹介していきたいと思います!

演じる側も覚悟が必要⁈キャストに注目!

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ここでは主演の2人についてご紹介していきます。

この映画、後でも触れますが“現在の日本という国で現役の政権を批判的に取り上げている”という意味では制作側にとっても興行側にとってもリスキーだったのではと言われています。

その中で最も目立つ存在であるキャストの選択は、やはり相当気を使ったのではないかなと思います。

そうして選ばれたのが、新聞記者吉岡役にはシム・ウンギョンさん、そして杉原役には松坂桃李さんです。

まずは吉岡役のシム・ウンギョンさんですが、どうして日本人の名前なのに韓国人俳優が?と思う方も多いのではないでしょうか。

実は吉岡という役の設定が、日本人の父と韓国人の母を持ちアメリカで生まれ育ったというものになっています。

プロデューサーは、吉岡と杉原に観客が恋愛を期待してしまう可能性を鑑み、恋愛を超えた関係であることを表現できる役者ということで彼女を選んだとインタビューで答えています。

実は私は初めて彼女の演技をちゃんと見たのですが、とにかく演技が上手くて表情が印象的なイメージを持ちました。

映画を観てからは、彼女以外が吉岡を演じるというのはちょっと想像できないくらいでした。

この映画のプロデューサーの河村光庸さんは韓国映画「息もできない」などを配給し、「かぞくのくに」や「あゝ、荒野」などにもプロデューサーとして関わっているので、もともと韓国人俳優を起用することが彼にとってそんなに異例なことではなかったというのももちろんシム・ウンギョンが吉岡役を演じた大きな理由の1つでしょう。

しかしここで一歩踏み込んで空想を働かせてみると、彼女のキャスティングというのは別の意味での必然性があったのではないでしょうか。

つまり、彼女が日本人俳優ではないという点でです。

吉岡の出自の設定というのは、この映画の原案の著者であるために必然的に吉岡というキャラクターのモデルにもなるであろう望月衣塑子さんの出自とは大きく異なります。

あくまでも私の想像ですが、吉岡の出自はこの役に日本人の女優さんをキャスティングすることのリスク回避もあったのではないでしょうか。

さて、そんな吉岡に対して、内調に勤める官僚杉原は松坂桃李さん。

バリバリの日本人でしかもかなりの知名度の俳優さんですよね。

キネマ旬報のインタビューでは、脚本を読んだ段階で、観た人の解釈によっていろいろと言われるだろうと思ったこと、そして撮影前にはプロデューサーにこの映画は公開されないかもとまで言われたと語っています。

そんな彼が、どう役にアプローチしたのかというと、官僚という立場よりもあくまでも1人の人間としての喜怒哀楽や感情を大切に演じること。

つまりは映画が政治性を孕んだものであっても、役者としてはそうではない映画と同じように仕事をするということですよね。

当たり前のことといえばそうですが、やはり通常以上のプレッシャーもあるでしょうし、誰でもできることではないと感じますよね

映画の中のあの事件、現実では一体?

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この映画はフィクションです。

しかし映画を観ながら、あれ?この事件知ってるぞと思った方も多いのではないでしょうか。

そこで、いくつかの事件での映画と現実の相違を検証しつつ、報道の傾向なんかも見ていきたいと思います。

まず取り上げたい映画の冒頭に登場する、ある女性記者のレイプ被害告発記者会見。

これは明らかに2017年10月の伊藤詩織さんの告発会見をモデルにしています。

ここで加害者として訴えられたのは現政権と繋がりの深い記者。

男性は犯罪行為を否認し、検察審査会でも不起訴相当となっています。

そして伊藤詩織さんはSNS上などでかなりのバッシングを受け、渡英しています。

映画の中で吉岡は、会見に参加し記事を書きますが、非常に小さくしか取り扱われず、上司に抗議します。

実際に当時の大手新聞5社の記事を探してみると、見翌日に記事が出たのは産経新聞と朝日新聞のみでどちらもかなり小さな記事です。

世界での#MeToo運動の広がりの中でニューヨークタイムズ紙やイギリスのBBCなどが大きく取り上げ、日本のこの対応は批判されました。

それを受けて、朝日新聞、毎日新聞が後追いで現在に至るまで多くの記事を出していますが、産経新聞は続報が1件、読売新聞は0件でした。

この結果を見て私が感じたのは、真実を伝える新聞も、あくまでもその新聞に合った読者が求めているであろうもののみを求められたように伝えているということです。

さらに言えば、求めないものは出さないという選択肢もあるのです。

そして映画ではさらに一歩踏み込み、新聞でさえも本来なら記事にしないようなことを政府の意向に沿って記事にするということまでやってのける描写があります。

私たち自身が、情報をただ与えられるだけでなく、アンテナを広げ、掴み取っていかなければ世の中の出来事は私たちにとってなかったこと同然になってしまうのです。

さて、もう1つ実際の出来事とシンクロするものに少しだけ触れておくと、医療系大学新設に関するものです。

わざわざ書かなくてもお分りだと思いますが、加計学園問題がモデルになっています。

そこに、原案の著者の望月衣塑子さんが記者として取り組んでいるテーマのひとつであり、また現政権の目標のひとつでもある日本の軍事力強化問題が絡められています。

この他にも、元文部科学事務次官前川喜平氏の出会い系バー報道など、実際の出来事を思わせるものがいくつか登場します。

興味を持たれた方はぜひ、当時の報道と照らし合わせて検証してみてください。

多田語録にみる現代日本政治とは?

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この映画を観た人の中でひときわ印象に残るであろう人物、それは杉原の上司である多田智也ではないでしょうか。

内調の仕事に疑問を感じ、揺らぐ杉原と比較して多田の姿勢は一貫しています。

彼は、

現政権を安定させることが我々官僚の仕事だ。

それが国の安定につながるんだ。

と言い、現政権を守るためなら何をすることも厭わない、強固な意思を持った人間として描かれています。

同時に彼の存在はある意味では映画の中で現政権そのものとして描かれているのではないでしょうか。

つまりは彼の考え方=現政権の考え方(映画制作側が考える)と捉え、彼のある言葉を通して私なりに日本の現在の政治を覗いてみたいと思います。

その言葉というのが、

この国の民主主義は形だけでいいんだ。

けっこう衝撃的な言葉ですよね。

今さら必要ないかもしれませんが、ちょっとだけおさらいしておくと、民主主義とは簡単に言うと、

国のあり方を決める権利は国民が持っていると言うことです。

そして日本において権力の暴走を防ぎ、民主主義を下支えするための仕組みとして、三権分立があります。

「立法」「行政」「司法」の三権が独立し、監視し合う仕組みです。

立法府は国会、内閣が行政府、そして裁判所が司法府です。

そしてその中で「国権の最高機関」とされるのが、国民から民主主義の象徴である選挙で選ばれた議員から構成される国会です。

さて、では現在日本ではそれがきちんと機能していると言えるのでしょうか。

出入国管理法の改正案審議などでは、「強行採決」という言葉を耳にしました。(ちなみに報道時この言葉を使ったのは大手新聞社では朝日新聞、毎日新聞。使わなかったのは、読売新聞、産経新聞、日経新聞です。)

日本の政治の中で本来の意味での国会の立場が弱くなっていることは、多少なりとも感じている方は多いと思います。

だからこそ映画の中で、内閣官房の組織である内調の多田から、形だけの民主主義という言葉が出てきてしまうのではないでしょうか。

事実上の国権の最高機関が内閣になってしまっているのです。

そしてそれを助長しているのは実は国民そのものではないでしょうか。

衆参の選挙の投票率は毎回50%前後を推移しています。

この関心の低さそのものが、形だけの民主主義を作りあげている大きな要因の1つだと思います。

4.「新聞記者」happaの視点

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この映画が公開され、最も話題になったことは現政権の闇の部分を取り上げていると言うことです。

実際に新聞記者の方がこの映画について語ったりされている記事もたくさんあるのすが、ここではあくまでもただの映画ファンとしての視点から、映画と政治について考えていきたいと思います!

そもそも映画と政治の関係って?

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突然ですが、映倫ってご存知でしょうか。

映画の最初や最後に右下らへんに出てくるあの小さなマークが映倫の審査を受けた証です。

映倫の審査を受けなければ、今の日本では商業公開は出来ません。

そして当たり前に話ですが、映倫が行っているのは検閲ではありません。

表現の自由の観点から、レイティング・システムと言って映画鑑賞の際にその映画を観ることができる年齢制限の枠を規定する制度です。

映画業界内で構成される映倫維持委員会が定め、第三者機関である映画倫理委員会が実施・管理する映画倫理規定(映倫規定)が用いられる自主規制の形を取っています。

つまり映倫は国の機関ではなく、あくまでも映画業界内で審査しており、内容に関して性描写や暴力描写の規制はあるものの、中国などのように、政治的検閲のようなことは行われていないのです。

ではなぜ「新聞記者」は制作時に、公開できないかもとまで言われたのでしょうか。

映画制作には少なくとも数千万、多ければ10億を超える製作費がかかります。

現在の日本の映画はほとんどが製作委員会、つまり複数の企業がお金を出し合って映画製作を行います。

つまり、それだけの企業が、公開することでお金を回収できると考えなければ映画は作ることができないのです。

この段階でかなり、自由に企画を出せるという状況からは外れますよね。

そして資金集めのもう1つの方法、それは国の助成金です。

例えば、是枝裕和監督の「万引き家族」は文化庁の助成金をもらって制作されました。

カンヌ映画祭での是枝監督の発言や政府の祝意の辞退が、ネット上などで批判を受けたことを考えると、日本は国から助成を受ければ批判的な言動さえ許されない社会であることを思い知らされます。

この問題は、あいちトリエンナーレにおける慰安婦像展示とそれに伴って起こった騒動にも共通するものがありますよね。

ちなみにアメリカなどの国では、映画業界が政治批判をするのは当たり前の傾向にあります。

例えばアカデミー賞の授賞式などでも、メキシコ出身の俳優ガエル・ガルシア・ベルナルなどがトランプ大統領の対外政策に皮肉を言ったりしていました。

「新聞記者」は挑戦的?

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ではこの映画に関してはどうでしょうか?

この映画の報道でよく異例の好成績などと目にしますが、私は正直、この映画はヒットするべくしてヒットした気がします。

この映画の制作段階で危惧されたのは出資する企業が国から圧力を受ける、もしくは自ら忖度することでしょう。

しかし、実際にはそこを超え、結果的に大ヒットしました。

キネマ旬報や映画芸術などの映画雑誌を見ていても思うことですが、映画界の中で現政権への反抗意識というのは決して珍しいことではありません。

私はむしろ、ある程度映画を観る層としては主流に近いのではないかと感じます。

つまりそもそもこの映画のターゲット層は決して分母として小さくはないのです。

そして、雑誌の映画評、ネットの記事や毎日新聞、朝日新聞などではこの映画が現政権の闇を真っ向から描いていることが何度も取り上げられました。

話題性は抜群ですよね。

そこで普段映画を見ない層も観に行くという効果が生まれます。

キネマ旬報のインタビューで 河村光庸プロデューサーは

多くの人見てもらいたいというのがありました。

全国150館という規模で公開し、大きく展開できればつぶされないだろうと思って。

と語っています。

つぶされるというのはもちろんこの文脈の中では政権の圧力という意味ですが、そのエピソードさえも映画を観る側にとっては興味を誘いますよね。

この映画は実は見事にメディアを動かしてヒットに繋げて見せたマーケティング的お手本でもあるわけです。

もちろん私自身もこの映画が存在したことの意義に疑問はありません。

映画を通して多くの観客が知識得たり興味を持たせる機会得て、ある意味では現在の日本映画界のタブーを破ったのでしょう。

しかしこの映画の評価は映画としての面白さよりも、描いたテーマ自体を褒めたり批判したものがほとんどです。

この映画は日本の政治を描く映画のゴールではいけないと思います。

ここから始めて、映画が当たり前に政治を描き、映画人が当たり前に政治を語ることができるとき、日本の映画はもっと面白いものになるだろうし、形だけの民主主義の国から脱却できるのではないでしょうか。

ちょっと余談ですが、直接政治家や官僚を描かずに、政治と地続きの現代社会を描く映画もあります。

例えば秋公開ですが「タロウのバカ」では、経済最優先の政治で意味を見出せないものを排除するようになった現代社会を描いています。

他にも、主なテーマは違うところにあっても実は政治と私たちの生活が繋がっていることを感じさせる映画は沢山あります。

そんな映画の表現も意識してみると面白いかもしれません。

5.「新聞記者」はこんな人におすすめ

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最後にこの映画を特におすすめしたい方をご紹介していきます。

政治映画と難しく構えずに、まずは気軽に観てみてください!

選挙で投票に行かない人

まずは1番オススメしたいのが、政治には興味ないよ、選挙なんていかないよという方です。

選挙管理委員会のまわし者みたいですみません。笑

実はこの映画、あえて参議院選挙の前に公開されています。

制作者の意図としても、映画を観た人が選挙に行って欲しいという思いがあったのでしょう。

映画はフィクションなのでそこで描かれていることは全てではありませんが、興味を持つきっかけにはなるのではないでしょうか。

ネットが情報源の全てな人

映画の中で新聞記者にとって誤報が命取りになることが描かれます。

多くの人にとってネットが情報源の中心となって、フェイクニュースも当たり前の今、誤報を出さないために必死で裏どりをする姿には心を打たれます。

同時に、見どころでも少し触れましたが、今回記事を書くにあたって、同じニュースを大手新聞新聞5社がどのように取り上げているのか、比較してみました。

すると、その新聞が記事にしなくてもいいと判断すれば1文字も記事にならないものもありました。

そこには新聞社としての政治的立場が顕著に表れたりもします。

情報を受け取る側がどうあるべきかも考えさせられるのではないでしょうか。

ハラハラドキドキする映画が好きな人

最初にも書きましたが、この映画はエンターテイメント映画です。

新聞記者吉岡の報道に対する姿勢や焦り、エリート官僚杉原の葛藤、そして彼の上司多田のモンスターっぷりなど人間の描かれ方に注目しても面白いでしょうし、後半はスピード感のあるサスペンスぶりを発揮します。

おまけに上司からの圧力や家庭と仕事の板挟みなんて日常生活で心当たりのある方、ハリウッドの大きなアクションよりある意味冷や汗ものかもしれませんよ。

この映画は観る人が今の日本の政治をどのように捉えているかによってもかなり評価や思うことが変わる映画だと思います。

さて、長々と書いてきましたが、私自身が映画を観て思ったこと、それは疑ってみることの重要さです。

この記事自体も私の主観をメインに書いてきました。

この記事のこともまずは疑ってみて、ぜひ実際に映画を観てご自身で描かれていることを検証してみてください!

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