「ROMA/ローマ」美しさに秘められたる、時代に翻弄された人々の姿【映画・NetFlix/ネタバレあり】

こんにちは!
エンタメブリッジ・ライターの小紅春子です。

今回は2018年から2019年にかけて、ヴェネツィア映画祭、NetFlixにての公開、そしてアカデミー賞とその評価が高まり続け、ついには日本でも全国劇場公開となりましたアルフォンソ・キュアロン監督作品「ROMA/ローマ」をご紹介したいと思います。

映画祭・賞レースへの参加の是非が議論となるなど様々な面から話題を呼んだ作品です。

さっそくご案内していきましょう。

1.「ROMA/ローマ」の作品紹介

公開日:アメリカ国内 2018年11月21日
世界公開(順次) 2018年12月14日
監督・脚本:アルフォンソ・キュアロン
撮影:アルフォンソ・キュアロン
編集:アルフォンソ・キュアロン、アダム・ガフ
出演者:ヤリッツァ・アパリシオ、マリーナ・デ・タビラ
2018年8月30日 第75回ヴェネツィア国際映画祭コンペティション部門 最高賞である金獅子賞を獲得。
2018年11月21日 アメリカ合衆国内 限定公開開始、12月14日よりNetflixで配信。
第76回ゴールデングローブ賞 外国語映画賞、監督賞、脚本賞にノミネートされ外国語映画賞と監督賞を受賞。
第91回アカデミー賞外国語映画賞 メキシコ代表作として出品。同賞および作品賞を含む同年最多の10部門にノミネート。
外国語映画賞・監督賞・撮影賞の3部門を受賞。

2.「ROMA/ローマ」のあらすじ


画像出典:https://www.youtube.com/watch?v=zS2lhcz47m

それではあらすじをご紹介いたします。

「ROMA/ローマ」のあらすじ(ネタバレなし)

1970年のメキシコ。メキコシティのコロニア・ローマという地区に暮らす医師一家、夫アントニオとその妻で元生化学者ソフィア。

子供は男の子が3人と女の子が1人。

トーニョ、パコ、ソフィ、ぺぺ。

そこで家政婦として働く先住民族出身の若い女性、クレオが主人公。

他の使用人たちと共にこの家で日々を過ごし、一切の家事と子供たちの世話、朝全員を起こして、夜寝かしつけるまでずっと働き詰めているせいか、子供たちもクレオを慕っている。

この家の主、アントニオが帰宅するとき、その車幅ぎりぎりのガレージに自らの運転でフォード・ギャラクシーを停める。

サイドミラーを軽くかすめつつ、煙草とカーラジオをつけたままゆっくりゆったりと門の中まで車を進めていくのだった。


画像出典:https://www.youtube.com/watch?v=6BS27ngZtxg

家族の団らん中、クレオは一緒にテレビを観つつも常に一家の身の回りに気を配り働き続ける。

アントニオは会議でカナダのケベックへ行く予定なのだが、家の中が散らかっていると妻にいらだちをぶつけている。

家事を担うクレオに聞こえないよう部屋の扉を閉めるソフィア。

ある休日、クレオと同僚のアデラはボーイフレンド達と共に街で落ち合う。

クレオにはフェルミンという青年がいて、二人はある部屋で過ごすことにした。

フェルミンはポールを使った武芸をクレオにみせ、自分の生い立ちを語る。

翌日、アントニオがケベックへと発つ際、家の前でソフィアがその背中をぐっと抱きしめる。

アントニオの車が去るのと入れ替えに物々しい隊列がすれ違っていく。

門の前でその様子を見守るクレオをソフィアが叱責して立ち去るのだった。

画像出典:https://www.youtube.com/watch?v=6BS27ngZtxg

後日、クレオは映画館で、自分が妊娠しているかもしれないとフェルミンに告げる。

しかし映画がもうすぐ終わるというのに彼は席をはなれてしまい、その後戻ってくることはなかった…。

「ROMA/ローマ」のあらすじ(ネタバレあり)


画像出典:https://www.youtube.com/watch?v=6BS27ngZtxg

クレオはソフィアに相談します。

直前までいらだった様子で子供たちに厳しく接していたソフィアでしたが、クレオの事情を知ると同情し、自らフォード・ギャラクシーを運転して病院へ連れていくのでした。

その病院はアントニオの勤務先であり、クレオを旧知の女医に預けソフィアは知人医師と話しこみます。

やはりクレオは身ごもっていましたが、新生児病棟を見学していた際、不吉な揺れが襲います。

この地震で天井がはがれ落ち、保育器に落ちたのでした。


画像出典:https://www.youtube.com/watch?v=6BS27ngZtxg

クリスマスを過ごすため、アントニオを除いた一家は友人たちの集うアシエンダへ向かいます。

各家族の主人、女主人たちは射撃やパーティーで楽しみ、使用人たちも地下でパーティーを楽しむことができました。

しかし廊下で一人になったソフィアを酔った知人男性が執拗に誘い、丁寧でしたがきっぱりと断るソフィアに男はひどい言葉を投げつけて去っていきます。

この夜、ちかくの森での火事の知らせが入り、子どもたちも混じり消火活動をしました。

地主と住民の間で不穏な空気が流れているようなのです。

画像出典:https://www.youtube.com/watch?v=6BS27ngZtxg

この休日が去り、ある時、クレオは子どもたちとその友人を映画館に連れていくことになりました。

ところが劇場の前で、若い女性と過ごしているアントニオを偶然見かけてしまいます。

長男のトーニョもその様子を目撃してしまい、人違いだというものの沈んだ空気が流れてしまいます。

クレオは同僚アデラの恋人にたのみ、彼のいとこであるフェルミンの居場所を知ります。

フェルミンは武術の集団訓練を受けていました。

師匠に精神の大切さを説かれ訓練していましたが、クレオが彼に近づき子供ができたことを話すと、彼はクレオを威嚇し立ち去っていくのでした。


画像出典:https://www.youtube.com/watch?v=6BS27ngZtxg

アントニオはまだ家族のもとには帰ってきません。

夫が若い愛人と過ごし6か月生活費もいれていないことを、ソフィアが知人に電話で相談している会話を次男のパコが聞いてしまいました。

ソフィアは思わずパコを叩きそして他の兄弟に告げないよう哀願、なぜ立ち聞きさせたのだとクレオを怒鳴りつけます。

ある夜、ソフィアがフォード・ギャラクシーを運転して帰宅します。

アントニオの運転とは違いたどたどしく車を停め、玄関に迎えに来たクレオに言うのです。

私たちは独り。何と言われようと私たち女性はいつも孤独。


画像出典:https://www.youtube.com/watch?v=6BS27ngZtxg

子供たちの祖母がクレオのベビーベッドを見るために街へと連れ立って出かけます。

路上には機動隊と政府に対する抗議活動のために集まる学生達であふれかえっていました。

建物2階の家具店でから見下ろすと、活動団体と警察が衝突。

武装集団が投入され抗議活動をしていた人々が次々と追い立てられ、発砲がはじまりました。

若い男女が店内に助けを求めて飛び込んでくるのですが、すぐに武装集団が追いつき、クレオたちの前で引きずり出され射殺されます。

その武装集団のなかにはフェルミンがいました。


画像出典:https://www.youtube.com/watch?v=6BS27ngZtxg

彼はクレオにまで銃口を向けそして立ち去ります。

その直後、クレオは破水してしまうのです。

車で病院にむかうも、路上は混乱が続きなかなかたどり着けません。

やっと病院へと到着し、エレベーターのなかで勤務中のアントニオに会います。

彼は声をかけてきたものの、立ち合いを許可されたにもかかわらず及び腰でした。

なんとか取り上げられましたが、クレオの子供に心拍数はありませんでした。

短いお別れの後、息のない赤ちゃんはすぐに布にくるまれるのでした。


画像出典:https://www.youtube.com/watch?v=zS2lhcz47m8

産後、仕事に戻っても上の空のクレオ。

車の音がしたので部屋から出てみると、ソフィアがアントニオには告げずに小さな新しい車を買ってきたのです。

ギャラクシーで最後の旅行をしよう

ソフィアは、ビーチへ行こう、クレオも誘おうと子供たちに提案します。

そして、彼女も休暇だから彼女に仕事をさせないよう子供たちに言い含めるのでした。

目的地のトゥスパンについた日の夕食、ソフィアはついにアントニオが家を出たこと、自らも出版社で働くことを子どもたちに告げます。

この旅行はアントニオが自分の荷物を家から持ち出すための期間でもあると。

トゥスパンのビーチで過ごす最後の日、ソフィアは子供たちに海へ入ることを禁じて場所を離れます。

しかし、言いつけを破ってしまった子供たちのうちソフィが波にのまれてしまいます。

泳げないクレオでしたが必死に子供たちの名前を呼びながら波に向かい、助け出しました。


画像出典:https://www.youtube.com/watch?v=zS2lhcz47m8

気持ちが昂ったクレオは集まった一家の前で、赤ちゃんがほしくなかったこと、小さいのにかわいそうだったと泣きだします。

皆、砂浜で抱き合い、クレオのことが好きだと慰めるのでした。

一家が家に戻ると、アントニオによって荷物が運び出され、部屋の様子がすっかり変わっていました。

家族は部屋の配置換えをしながらくつろぎ、クレオはすぐさま家事を始めます。

クレオはアデラに言います。

話がたくさんあるの。

さっそく洗濯物を干しに屋上へ上がる彼女の頭上には飛行機が飛ぶ高く澄み切った空がありました。

3.「ROMA/ローマ」の見どころ


画像出典:https://www.youtube.com/watch?v=zS2lhcz47m8

映画というとついついストーリーや好きな役者の動きを追ってしまいがちですが、とても静かなこの作品ではこんな見方をしてはいかがでしょうか。

見どころ、オススメのポイントをご紹介いたします。

美しい画面構成 光と影


画像出典:https://www.youtube.com/watch?v=zS2lhcz47m8

アカデミー賞でも撮影賞を受賞していますが、この映画の美点は画面構成とモノクロームの濃淡の美しさにあります。

白と黒のコントラストが穏やかで、この二つの色の間にいくつもの階調のグレーが広がっています。

まるで精密な鉛筆デッサンを観ているような心静かな感動があります。

知られざるメキシコの一面

メキシコといえば、タコスやマリアッチ、カラフルな鳥やサボテンにテキーラと陽気で暑い国のイメージがありますが、ほとんど登場することはありません。

この作品では、

  • 政治・歴史的背景
  • 生まれた階級による生活の違い
  • 女性として、一個人としての人生

の3つを軸に知られざるメキシコが描かれています。


画像出典:https://www.youtube.com/watch?v=6BS27ngZtxg

このころのメキシコは学生を巻き込んだ政治的紛争が起こっていたそうです。

そしてその学生たちに権力側が対抗させたのが、クレオの恋人が所属していたと思われる集団。

実在した団体をモデルに描かれているようです。

また、ソフィアがクリスマスを過ごした場所で、酔った知人男性に言いよられ、ひどい捨てセリフを吐かれてしまうこと、生活費を入れなくなる夫や以前の地位の仕事に戻れていない描写を見るとどの階級であっても女性としての立場が厳しいものだったように見受けられます。

ネット配信作品は今後も賞レースに参加できる?


画像出典:https://www.youtube.com/watch?v=b9aItuLcD9g

(インタビュー中のアルフォンソ・キュアロン監督)

実は2018年のカンヌ映画祭での出品も予定していました。

しかしその当時に劇場公開が決まっていなかったため、コンペティション部門に選ばれることはありませんでした。

映画制作者の間でさえ、ネット配信作品をどう扱うか意見の分かれるところとなっています。

同じ動画配信でもNetFlixとAmazonでは劇場公開に対する姿勢や順序が違うなど、統一されたルールはありません。

また配信だからこそ「ROMA/ローマ」のような静謐で人々を丁寧に描いた作品が、動員や売り上げにとらわれず作られたとも言えます。

筆者もいち映画ファンとしてこれからの動向を見守っております!

4.「ROMA/ローマ」はこんな人におススメ


画像出典:https://www.youtube.com/watch?v=zS2lhcz47m8

この映画作品は流行の要素も持たなければ、日本人にとってはなじみのない俳優、文化の物語のため、ディープな映画ファン以外寄せ付けないように思われがちです。

しかし、これだけ上映館が広がっているのにはたくさんの人に受け入れられやすい要素があるからではないでしょうか。

特にこれから挙げるような人たちに是非お勧めしたいと思います。

写真や絵画が好きな人


画像出典:https://www.youtube.com/watch?v=zS2lhcz47m8

見どころでもご紹介した通り、この映画の特徴である美しい画面。

登場人物に対してカメラが距離感をもっておかれています。

顔のアップよりも、この場所がどこでなにが起きているのかが終始わかるよう、客観的な視点のもとに撮影されているので、構図のバランスに注目する見方もできる作品だと思います。

部屋に大きな画面のテレビモニターやプロジェクターがあれば、ただただ眺めているだけでもその美しさを堪能できます。

子供のころの記憶をたどりたい人に


画像出典:https://www.youtube.com/watch?v=6BS27ngZtxg

子供のころの出来事を、大人になって振り返りやっとその出来事の意味を知り、辻褄があったという経験はありませんか。

この作品は監督の子供時代の体験をもとにしているため説明的なセリフや政治背景についての補足的なシーンはありません。

その時々、何が起きているかはっきり自覚しないまでも自分の力の及ばない、大きな流れに巻き込まれながら日々過ごしていった家族やクレオの表情があります。

その時間をキュアロン監督がそっと振り返っているように感じられました。

たまには時間を作って、遠い昔の子供のころのことを思い返しながら観てみてください。


画像出典:https://www.youtube.com/watch?v=6BS27ngZtxg

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