どもっ!エンタメブリッジライターしおりです。
今回はジブリ初期代表作、映画「天空の城ラピュタ」についてご紹介&マニアックに考察していこうと思います!
天空の城ラピュタは1986年、ジブリが会社として独立した初の作品。
当時の宮崎駿監督は今のように天才や鬼才と言われる人ではなく、まだ「アニメ業界で知る人ぞ知る」人でした。
つまり、私たちと同じ(?)人間だった頃。
ラピュタといえば、テレビで放送されるときに必ず起こるバルス祭り(笑)
デジタル放送でdボタンを押せば、
「呪文バルスまであと〇秒」
と表示され、2016年はオンエア中にネットで90万バルスが飛び交いました。
そんなラピュタですが、バルスばかりフューチャーされる現象を制作サイドはどう感じているのでしょうか?
ラピュタに対して、バルス以外の見どころって何よ?って方。
あと、ラピュタを反戦映画だと思っている方。
33年前、宮崎駿監督がこの映画に込めた思いと葛藤…このバックグラウンドを知ることで、よりラピュタの理解を深めていただきたく思います!
目次
1.天空の城ラピュタの作品紹介
監督:宮崎駿
脚本:宮崎駿
製作:高畑勲
制作:スタジオジブリ
出演者:田中真弓、横沢啓子、寺田農、初井言榮、常田富士男。
音楽:久石譲
2.天空の城ラピュタのあらすじ
画像出典:https://www.youtube.com
宮崎駿監督にとって、初の劇場長編オリジナルアニメとなった天空の城ラピュタ。
ストーリーはA→B→C→Dとパート分けされていますので、このレビューもそう書きますね。
後々、この時間配分がとても大切になってくるんです!
「もう全部頭に入ってるよ!」って方は、あらすじは読み飛ばして見どころまで進んでください♪
天空の城ラピュタのあらすじ(ネタバレなし)
【Aパート】
ある夜、シータという美少女が、軍の謎の男たちによって誘拐され、飛行船に乗せられていました。
軍のリーダーの名前は、いかにも悪役ヅラのムスカ。
シータはおびえてだんまり…ただ窓の外を見つめています。
そこへピンクの髪をおさげに束ねたドーラ(通称ママ)率いる空中海賊一家が飛行船を襲撃!
あの石だ!飛行石だよ!
とドーラ。
軍や海賊が狙っていたのは、シータがネックレスにしていた飛行石だったのです。
シータは窓から脱出。
しかし、足を滑らせてしまって、ヒューンと真っ逆さまに地上へ落ちてしまいました。
オープニングをはさんで、鉱山のスラムで働く少年パズー。
突然女の子が空から降ってきたことに気が付きますが、その女の子はどこか不自然。
シータは、スローモーションのようにゆ~っくりと落ちてきていたんです。
親方!空から女の子が!
うっ!…とパズーが抱きかかえて救出成功!←このアニメーションは名場面ですね!
シータの胸には、ネックレスの飛行石がピカーっと光っていました。
ここから、2人の少年少女パズーとシータの大冒険が始まります。
天空の城ラピュタのあらすじ(ネタバレあり)
画像出典:https://www.youtube.com
【Aパート続き】
さて、シータと意気投合したパズー…2人とも孤児です。
パズーの家には「LAPUTA」と書かれた空に浮かぶ島の絵が貼られていました。
ラピュタは伝説って言われてたけど、僕の父さんは見たんだ。
宮殿にたくさんの財宝が眠ってるんだって。
父さんは詐欺師扱いされて死んじゃった…きっと僕がラピュタを見つけてみせる!
- ラピュタ⇒700年間主人の帰還を待ち、天空に浮いている島。巨大な飛行石の力で浮いており、城の周りに「竜の巣」と言われる乱気流を作って守っている。
パズーは自作で飛行機を作り、自力でラピュタを探そうとしていたんです。
そこへドーラ率いるオートモービルに乗った空賊が通りがかります。
シータを狙ってるんだ!
パズーとシータはトロッコの線路を突っ走って逃走!
しかし今度は前方からムスカの軍隊が追ってきて板挟みに…。
ガラガラ線路が崩れて谷底に落ちるパズーとシータですが、飛行石がまた光輝いてゆっくり落ちていきました。
それはまるで、大勢の前で飛行石の力を見せつけたショー。
【Bパート】
谷底に落ちるとそこにいたのは、ポムじいさん。
ポムじいさんは、石と会話ができる不思議なおじいさん。
飛行石を説明できることから、制作現場では「労働者階級のラピュタ人の末裔ではないか?」とささやかれていたそう(宮崎駿監督もその解釈は面白がっていたそう)。
わしのおじいさんが言ってたよ。
岩達が騒ぐのは、山の上にラピュタが来とるからだとな…。
ポムじいさんは、ラピュタが今いる場所から近い天空にいることを教えてくれます。
シータはラピュタ語の別名があり、「ルシータ・トエル・ウル・ラピュタ」だとを打ち明けます。←名前に「ラピュタ」が入っているのがポイント!
おばあさんからもらったという飛行石も、シータの家に代々伝わる大切なお守りだったのです。
地上へ上がった2人はとうとう軍に捕まり、要塞へ連行されます。
シータはお姫様扱い、パズーは1人監禁。
シータがムスカに連れられ、地下牢で見せられたものは、ラピュタ王国から落ちてきた壊れた巨大ロボットでした。
そしてこのラピュタロボットの胸には、シータの持つ飛行石と同じ模様が描かれていたのです!
あたしなんにんも知りません。
石が欲しいならあげます!あたし達をほっといて!
なぜムスカがシータにしつこく付きまというかというと、飛行石はシータの手にある時だけ働くからなんです。
そしてムスカは、シータの正式名を知っていて、
ルシータ・トエル・ウル・ラピュタ⇒ラピュタの正当な王位継承者・ルシータ王女
ムスカは、ラピュタを最強先進科学の帝国だと妄信し、飛行石のテクノロジーで世界征服を目論んでいたのです!
ムスカはシータに「協力してくれるなら、パズーを助けてやる」と交換条件を提示&シータは泣く泣く承諾。
牢から出されたパズーは、ムスカに手切れ金を渡され、シータからも「もう逃げて」と追い払われます。
パズーと別れ、1人部屋で落ち込んでいたシータが、ふと、おばあさんから教わった「困ったときのおまじない」の呪文を口にしました。
その瞬間、飛行石がピカーーーッ!
地下牢にいたロボットとも共鳴し、ロボットの封印が解けてウィーンと動き出して、顔からレーザーのような火を出してちゅどーんと要塞を破壊し始めました。
パニクる軍人たちの中、ムスカだけはバンバンザイ!
飛行石が本当に働いてロボットの封印が解けたこと、飛行石がラピュタがと思われる方向へ光を差したことで、ラピュタ王国の場所がわかったのです!
そのころ、1人すげすげと故郷に帰ってきたパズー。
パズーの家には、なぜか空賊親子が転がり込んで飯を食らっていました。
- 空賊の目的→飛行石やラピュタの財宝が欲しい
- パズーの目的→シータを助けて、お父さんのかたき討ちのためラピュタへ行きたい
と利害が一致して、パズーと空賊は手を組むことにします。
シータ救出のため、あの虫の羽のような伝説の小型飛行機「フラップター」で要塞へ…。
要塞は大火事でしたが、シータ救出に成功!
この惨事て飛行石は地面に落ちてしまい、ムスカがちゃっかり手に入れています。
ムスカたち軍部は、空中戦艦ゴリアテに乗ってラピュタへ向かいました。
【Cパート】
ゴリアテと空賊のたどる進路はおおよそこうなるので書いておきますね↑↑(参考「もう1つのバルス」木原浩勝)
ドーラたち空賊&パズー、シータも飛行船タイガーモスに乗ってラピュタへ飛び立ちます。
ムスカVS空賊…どっちが先にラピュタへ突入するのか?
パズーとシータは飛行船の見張り係になり、2人で飛行船と繋がった凧に乗って雲の上から見張ります。
あたし、他にもたくさんおまじないを教わったわ。
絶対使っちゃいけない言葉だってあるの…滅びのまじない。
と暗に「バルス」のことをシータが打ち明けていると、突風にあおられ始めた飛行船。
真下には軍のゴリアテがおり、ミサイルを打たれ被弾します。
凧は飛行船と糸が切れたまま、ラピュタを囲む柱のような分厚い雲に突入!
ちなみにこの凧の発想は、シータとパズーが2人だけでラピュタに入れる方法はないか…?と考え抜いた宮崎駿監督のアイデアだそう。
激しい稲妻が落ち、風は大荒れ。
「ああああーーー!!」と凧は振り回されながらも、どうにか雲を突破!
【Dパート】
命懸けで雲を抜けると、2人はついにラピュタに不時着しました!
しかし、ラピュタにかつての面影はありません。
城は廃墟、町は水底に沈み、草木だけが生い茂って、寂しそうなロボットが1体生き物を守ったりラピュタ人のお墓参りをしたりしていました。
同時に、あのムスカ率いる軍の戦艦ゴリアテも到着。
なんとドーラたちは軍に全員捕まって、縄で拘束されていたのです!
ドーラたちを助けに行ったパズーは軍部に見つかってしまい、シータと離れ離れに…。
ここからは悪役ムスカ劇場。
ムスカは軍部を抜け駆けし、ラピュタに来た本当の目的を明かします。
ムスカの本当の名前は、ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ。
ムスカもまたラピュタ人で、シータと同じラピュタ王家の末裔だったのです!
なにやら怪しいビジネス黒手帳にラピュタ語をメモしていたムスカ。
読める!読めるぞ!
とムスカは石碑に書かれたラピュタ語を解読し、シータから奪った飛行石の力を借りて、ラピュタの中核部に存在する巨大な飛行石を発見しました。
このダイヤモンドのような巨大飛行石には、地上を支配できる科学の力が結集しているのです。
見せてあげよう。ラピュタのいかずちを!
ムスカは軍部の前でちゅどーん!とジブリ最大のバイオレンスを発動、核実験のようないかずちを落として、飛行石の力を見せつけます。
「我こそラピュタの王!」と全権掌握気分のムスカ。
シータは、ムスカがネックレスの飛行石を落とした隙に、拾って逃げます。
そのころドーラに縛られていた縄を切って、空賊を救出したパズー。
ドーラから銃をもらい、シータを助けに生きます。
シータの居所を突き止めたパズーは「パズー!これ、海に捨てて!」とシータから壁越しに飛行石を渡されます。
ムスカに追いつかれたシータは、王の玉座の間にて急に成人皇族のように大人びた発言をします。
ムスカに向かってこの名言!
ラピュタがなぜ滅びたのかあたしよく分かる。
ゴンドアの谷(シータの故郷)の歌にあるもの。
『土に根をおろし、風と共に生きよう。種と共に冬を越え、鳥と共に春をうたおう』
どんなに恐ろしい武器を持っても、たくさんのかわいそうなロボットを操っても、土から離れては生きられないのよ!
そんな美談は受け流し、挑発を続けるムスカ。
パズーは飛行石を口に含みながら、銃で壁を壊してシータのいる場所へたどり着きました。
「2人だけで話がしたい!」「3分待ってやる」とムスカ。
パズーが「シータ、落ち着いてよく聞くんだ。あの言葉を教えて、僕も一緒に言う」と提案すると…
(さーて皆さんもご一緒にーーー!)
バルス!!
滅びの呪文に、ムスカは「目が!目が!!」と倒れこみ、ガラガラガラ~と解体していくラピュタ…。
木の根に守られたパズーとシータは、凧で脱出。
ドーラたちは空賊もちゃっかり財宝を奪って、フラップターで脱出していました。
ラピュタは大木と飛行石だけが残り、天空の木となって天に上ります。
ムスカの地球制服計画は終了。
空に憧れる平凡な少年だったパズーは、父のかたきを打つことに成功!
呪われたラピュタ王家の末裔、シータの命も見事に救ったのです。
3.天空の城ラピュタの見どころ
画像出典:https://www.youtube.com
続いて天空の城ラピュタの見どころを解説します!
呪文バルスが生まれた背景、宮崎駿と亡き母との関係など、表に出てこなかった話を掘り下げて行きますよ!
考察1.ラピュタ呪文バルスの真意は?
呪文バルスの意味は、ジブリ公式サイトにあるようにラピュタ語で「閉じよ」。
いつの間にか
- バルス=トルコ語で「平和(barış)」
が定説になっていますが、「バルス=平和」の意図は制作サイドにはないと断言できますねぇ。
当時の制作過程が詳しく書かれた文献を読んでみると、バルスはそもそも意味のある言葉とは考えにくいんです。
しいて言うなら「パルス=電流」をもじったとするのが現実的ですね。
その理由は、ラピュタ制作はとにかく時間に追われていて、映画の時間短縮が大きな課題だったからです。
パズーとシータがラピュタの雲に突入するCパートまで、すでに84分。
当時の日本映画では、あと10分間で終わらせなければいけないのが常識でした。
また、当時主流だったLD(レーザーディスク)は、容量が2時間です。
DVDやブルーレイのない時代なので、2時間を超えたら、とてつもなく不便な2枚組になってしまうんですよ。
大前提としてバルスは「短い呪文」であることが重要だったんです!
ただし、宮崎駿は結末のDパートに「あと1時間くれ~」と嘆くほど、物語が終わらないことに悩んだそう。
ラフコンテを描いてはボツ、描いてはボツ、の繰り返し。
例えば…
- 滅びの呪文が長くなると、ムスカが銃で襲ってくるシーンが必要になる。
- シータの片方のおさげ髪だけムスカに撃たれると、ラストのシーンが不格好になる。
そこで生まれたのが、あの短い呪文「バルス」だったのです。
短時間で流れる電流…その意味のパルス⇒バルス。
ラピュタ突破以降、電流のような光が駆け巡るシーンが何度も出てきますよね。
なおさらパルス(バルス)は、作品の中身と合致したのでしょう。
宮崎駿監督の壮絶な苦闘の甲斐あって、最後のDパートは無事36分におさめられたそうですよ。
考察2.ラピュタ語はどのように生まれた?おまじないおさらい
画像出典:https://cinema.ne.jp
ラピュタ語ってどのように生まれたのでしょうか?
それぞれの単語に何か意味があるのでしょうか?
答えは、ラピュタ語は宮崎監督の完全な「思いつき」(笑)(公開時インタビューより)
主人公シータの名前でさえ、宮崎駿が学生のとき書いた精神病院を舞台にした人形劇「サイン・コサイン・シータ」からとったそうです。
映画に出てきたラピュタ語を整理すると、
- シータの本名⇒リュシータ・トエル・ウル・ラピュタ
- ムスカの本名⇒ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ
「ウル=王」「トエル=真」の意。
実はこれ、準備稿では「トエル=正統な継承者」だったそうです。
つまりムスカは直系の継承者でないため、シータと結婚しなければ王にはなれないことが示唆されていたそう。
続いてロボットを再起動させたおまじない、
- リーテ・ラトバリタ・ウルス・アリアロス・バル・ネトリール(我を助けよ、光よ蘇れ)
これも準備稿では「我を助けよ、つわものよきたれ」と少し違う意味。
シータが雲を突破するときも、当初はおまじないで突破する設定だったそうです。
- レヂアナオ・ルント・リッナ(ものみな静まれ)
- シス・テアル・ロト・リーフェリン(失せしもの汝 姿を現せ)
これらはすべて生粋のラピュタ語。
滅びの呪文バルスだけ、突然トルコ語になるとは、やっぱり考えにくいんですよ。
考察3.バルス祭りを製作陣はどう感じている?
画像出典:http://matsumoo.com
ラピュタがすっかりバルス祭りになっていることを、当時の製作陣はどう感じているのでしょうか?
2013年宮崎駿監督は引退しました。
2016年引退から3年後、初の天空の城ラピュタ地上波放送(公開30周年)がありました。
地上波放送はこのとき15回目。
国民的映画と銘打たれていたにもかかわらず、公開30周年ということはどこでも触れられませんでした。
しかも、それまで一部のネットユーザーが自己発信的に楽しんでいたバルス祭りを、この年ついにTV局側が追認します。
カウントダウン画面が表示され、参加型とし、視聴率を上げる工夫。
宮崎駿監督はバルス祭りを知らなかった。
と翌日ニュースが流れました。
ラピュタ=バルス祭り、宮崎駿=天才…とただ片づけられてしまうこの現象に製作陣は、何とも言えない寂しさや歯がゆさを感じるようです。
公開から30年以上経過し、ラピュタ制作に携わったアニメーターは亡くなられた方もおられ、優秀なスタッフ、作品への敬意が踏みにじられる心情になるのかもしれません。
ラピュタは、バルス祭りだけしか魅力はないのか…?
私たちはもっと見なければならないことがあるのではないか…?
そのことをもう少し掘り下げますね!
考察4.ジブリ立ち上げ1作目!人間宮崎駿の苦悩
画像出典:https://www.youtube.com
ジブリってすごい!宮崎駿は天才!
今となっては常識ですが、独立仕立てのジブリはとてもそんな状態ではないです。
当時、宮崎駿は45歳。
アニメ業界で知る人ぞ知る人であり、まだ一般人に知られた人ではありません。
徳間書店と二足のわらじだった鈴木敏夫さんが、駆けずりまわって探した新オフィスは吉祥寺のビルの一角。
親会社の徳間書店の休眠会社をもらったため、ジブリは借金3600万円という負のスタートだったんです。
そもそも宮崎駿監督は、1984年の前作「風の谷のナウシカ」を手がけた後
もう監督はやらない、友達を失うのは嫌だ!
とさんざん懲りて当たり散らしたそう。
しかし、ジブリ立ち上げ1作目となるラピュタで、宮崎駿のスタッフへの口癖は
この作品は失敗できませんよ。
毎日毎日スタッフにそう言い続けたそうです。
ラピュタがこけたらジブリは終わり。
当時わずか17人の事務所で、自分のキャリアが終わるかもしれない窮地に立ちながら、どうすれば観客を満足せられるのか…?
人間宮崎駿が苦悩と葛藤の中で、「失敗できない」という激しいプレッシャーを背負って作り上げられたのがラピュタなのです。
朝10時に出勤して帰る深夜2時まで、飯以外はずーっとパイプ椅子に座って地蔵のように絵コンテを書く日々。
○○さん、これ、どう思う?
迷ったときはすぐ周囲に質問。
たばこの量も1日3~4箱とどんどん増えたそう。
ロボットの構想1つとっても、アニメ「ポパイ」を生んだフライシャー兄弟のアニメ版「スーパーマン」のメカニカルモンスターズをイメージ基盤とした、「ルパン三世」最終回の装甲ロボット兵ラムダと自立思考型シグマが元ネタ。
中盤ナウシカのキツネリスも登場しますが、過去の作品を再利用するのも「少しでも興行収入を上げなければいけない」という宮崎駿監督の重圧の表れなんです。
天才という言葉ではとうてい片づけられない、人間らしい研究と苦労の賜物が、あの「天空の城ラピュタ」に詰まってるんですよ。
「生まれながらにして天才、自分とは違う人間」って私は思ってましたけど、宮崎駿だって私たちと同じ人間だったんですよねぇ。
あのレベルに到達するまで、血のにじむようなすさまじい努力があったんだ!と新鮮に感じます。
考察5.ドーラに重ねた宮崎駿の母への思い
画像出典:https://cinema.ne.jp
ラピュタを語る上で忘れちゃいけないのは、宮崎駿の亡き母への思い。
実は、母親は前作のナウシカ制作中に、71歳で亡くなったのです。
ラピュタは、それまでの宮崎アニメ史上、初めて母親を出した作品。
弟の宮崎至朗さんは公開直後、ラピュタのことを
あれは、駿兄貴が映像を通してオフクロに送った、不器用だが精一杯のはなむけだったのかもしれない。
と語っています。
男だらけの4人兄弟の次男として生まれた宮崎駿。
母親は病弱で9年間脊椎カリエスと闘病し、最初の数年は入院、あとはギプスベッドで自宅療養となります。
母親の闘病9年間は、宮崎駿の6~15歳に相当します。
脊椎カリエスといえば作家の三浦綾子さんってイメージですが、結核菌が脊椎に入り炎症を起こす病気で、綾子さんの場合も14年間ギプスベッドで寝がえりも打てず仰臥していました。
「風立ちぬ」公開時、宮崎駿自身が初めて母親との関係をテレビで語られましたよね。
おんぶしてもらいたいときも、泣いて断られた。
自分は生まれてこなければよかったと思った。
これだけ聞くと、病に伏した弱々しいお母さん像が想像できますが、実はそうではないんです!
弟の至朗さん曰く「ドーラは母そのもの」。
病床にありながらも、気丈で感受性が強く、ものすごい精神的迫力で男5人を支えた母。
「しっかりしろ、グズは嫌いだ!」
「このバカ息子ども!」
「だてに女50年やってるんじゃないよ!」
ドーラはかなり強烈なセリフを吐いてますが(笑)、これが宮崎駿の母像なんです。
ラピュタで母の弔いとはなむけを行った2年後、1988年「となりのトトロ」発表。
弟の至朗さんは、トトロに対して、
「何の気負いもなく温め続けてきた兄自身の世界が、全編にあふれている」
と思わず喜んだそうです(あのトトロのか弱い母は宮崎家の母ではないらしい…)。
4.天空の城ラピュタをオススメしたい人
画像出典:https://cinema.ne.jp
金曜ロードショーの常連作品、天空の城ラピュタ。
素晴らしい日本アニメの遺産で、きっと今後も何度も何度も放送されるでしょうね!
そんな天空の城ラピュタは、次のような方にオススメしたいと思います!
バルス祭りが楽しみな人
ラピュタ=バルス祭りになってしまった昨今。
バルス祭りが楽しみな人は「ちょっと待てよ」という意味でオススメですね。
私も今回改めて「天空の城ラピュタ」の制作背景を知り、ラピュタがどれほどの重圧と使命を背負って出来上がったのか…背筋が伸びる思いでした(私は作ってないけどねw)。
ジブリはすごい、宮崎駿は天才。
果たしてそう簡単に片づけていいものなのか…?
この作品は失敗できませんよ。
ラピュタに制作陣と人間宮崎駿に血のにじむような努力があったことを思い出しつつ、味わい深く観ていただきたいですね~。
ラピュタを反戦映画だと思っている人
ラピュタを反戦映画と思っている人にはオススメです。
確かにラピュタを反戦映画とする見方は主流で、東西冷戦下における当時の時代背景からも、飛行石=核、いかずち=核実験、ラピュタ=科学の業、バベルの塔などと語られて然りです。
平和学からの観点でもたくさんの文献が出ていますよね。
もちろん解釈は鑑賞者の自由ですが、「バルス≠平和」なので制作サイドにどこまで意図があったかは不明瞭…。
宮崎駿監督が公開当時インタビューで「作品のテーマはなんですか?」と聞かれ、
テーマも何も、男の子が女の子と出会って一肌脱ごうという話で(笑)、男になったってだけなんです。
ある子が、ラピュタを観て「爽快な話ですね」と言ってくれたんですが、この映画をよくぞ受け取ってくれたと思いましたね。
と言っています。
うーん、やっぱりこの映画は少年パズーが宮崎駿、ドーラが強い母像、シータが病に苦しむ母像、空賊の息子が残りの兄弟…その中で宮崎駿が映画を通して「男になった」と考えたほうが現実的?
この愉快な冒険活劇は、反戦以外にもいろんな見方ができるんですよね。
皆さんはどう考えますか?
宮崎駿と母との関係を知りたい人
画像出典:https://www.youtube.com
宮崎駿と母との関係を知りたい人にはオススメです。
弟・至朗さんはとなりのトトロ公開時、「トトロの病弱なお母さん」が宮崎家のお母さん像となることを恐れたそう。
トトロのメイとさつきの母ちゃんとラピュタのドーラ、あまりにキャラ違いますよね(笑)
ドーラがまんま母像なのだということには本当に驚きです。
読書好きだった宮崎監督は、病床の母親と安保闘争やイデオロギー、経済のこともよく語っていたそうです。
そして後年、お母さんから「1番純粋な子だった」と言われていたそう。
宮崎駿が作られるまでの母子関係を知りたい方も、ぜひラピュタをご覧ください。
引退作品「風立ちぬ」は、それまでの保護者不在の設定や、少年少女がどちらかを助ける設定が完全に消えます。
男女が対等に愛し合う関係となり、宮崎監督は映画人生50年の中で、作品の中で母親との関係を乗り越え、やり残した仕事をすべて終えたのかもしれませんね。
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