聖地は新宿御苑!「言の葉の庭」愛よりも昔、孤悲のものがたりとは?【予告動画・あらすじ・ネタバレ】

いつのまにか、日本の雨はシトシト降る雨というより、暴力的に降るゲリラ豪雨のイメージになってきてしまってますね。

自転車通勤の私にとって、雨は敵。

こんにちは、エンタメブリッジライターのriezoです。

でもそんな雨の日を心待ちにしている人もいるのです。

今回は、監督自ら「雨は3人目のキャラクター」と言うほど雨が重要な位置づけになっている作品、「言の葉の庭」について書いていきたいと思います。

監督は大ヒットした「君の名は。」の新海誠監督。

私は新海監督の作品はこの「言の葉の庭」のほかに「秒速5センチメートル」と「君の名は。」だけしか観たことがありませんが、当時「秒速5センチメートル」と「言の葉の庭」に比べて、ある意味ものすごくポップでストーリー性のある「君の名は。」のインパクトは大きかったです。

でもこの「言の葉の庭」も45分という短さでありながら、とても印象的で美しい作品です。

「”愛”よりも昔、”孤悲”のものがたり」というキャッチコピーのとおり、切ない”孤悲”の話です。

万葉の昔の人々は、「恋」のことを「孤悲」と書きました。

会いたい人に1人寂しく思いを寄せる、思いを寄せる人が共にいないことの寂しさを意味する言葉だそうです。

作品の中でも万葉集の短歌が使われており、まさに2人の「孤悲」が伝わってくる内容です。

作品の舞台となっているのは新宿御苑。

ファンにとっては聖地ですね。

実際に写真と見比べても本当に忠実に再現されています。

それでは短い中にも「孤悲」の切なさがギュッと詰まった「言の葉の庭」をご紹介していきましょう。

こんなに美しいなら雨の日もまたいいかな、なんて思ってしまうかも!

1.「言の葉の庭」の作品紹介

公開日: 2013年5月31日(日本)
監督: 新海誠
原作者: 新海誠
出演者:入野自由、花澤香菜、平野文、前田剛、他
受賞歴:カナダ・モントリオール ファンタジア国際映画祭にて、今敏賞/劇場アニメーション部門にて、観客賞 受賞。第18回アニメーション神戸賞にて、 作品賞・劇場部門 受賞。ドイツ シュトゥットガルト国際アニメーション映画祭にて、「ITFS」長編映画部門 最優秀賞 受賞。

2.「言の葉の庭」のあらすじ


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雨の日は憂鬱・・・なんて思う人は私だけじゃないはず。

洗濯物は乾かないし、湿気で髪形も崩れるし自転車通勤できないし。

でも、そんな雨の日が特別な日になっている人たちがいるのです。

どんな人たちで、なぜ雨が特別なのか。

さっそくあらすじをご紹介していきましょう。

ネタバレしたくない人は、ネタバレなしだけ読んでくださいね。

「言の葉の庭」のあらすじ(ネタバレなし)


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4月に高校に入学したばかりのタカオ(入野自由)は靴職人になる夢を抱いていました。

そんなタカオは雨の日は必ず午前中の授業をさぼり、公園に行って靴のデザインをスケッチしています。

ある雨の日、いつものように公園に行くと東屋で1人ビールを飲んでいる年上の女性(花澤香菜)に出会います。

女性の方も何かワケがあって仕事に行けず、この公園にやってきているようです。

それ以来、雨の日にはこの公園で一緒に過ごすことが2人の暗黙の日課となりました。

そんな2人はいつしか心を通わせるようになり、ある日タカオはこの名前も知らない女性のために靴を作ることを決めます。

「言の葉の庭」のあらすじ(ネタバレあり)


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ぶっちゃけて言っちゃうと、一回りも年の離れた(しかも女性が年上パターン)男女の淡い恋の話です。

恋の話と言っても、冒頭にも書いたとおり「孤悲」なので、おおよその想像どおり成就はしない思いを描いています。

主人公の女性は雪野という名前です。

どうでもいいけど、私、クレジットを見るまで名字ではなく下の名前だと思ってました。

ちなみに名前は百香里(ゆかり)というらしいです。

タカオの家は両親が離婚して、彼氏がいる若作りな母親と兄の3人暮らし。

タカオは母の代わりに家事をしたり、靴作りの専門学校に進学する学費を稼ぐためアルバイトに励んでいます。

一方会社をサボって公園でビールを飲んでいる年上女性の雪野については、詳しい描写はされていませんが、どうやらいろいろ問題を抱えていて、仕事に行けないメンタルになってしまっているようです。

しかも、ビールと一緒に食べているのはチョコレート。

実は彼女は味覚障害で、アルコールとチョコレートぐらいしか味が分からなかったんです。

味覚障害になるほどのストレスを抱え、仕事にも行けずに朝から公園でビールを飲んでいる雪野と、雨の日になると午前中の授業をサボって公園で靴のデザインをスケッチしているタカオ。

この2人が公園で何度も顔を会わせるうちに、だんだん心を通わせていく、というストーリーです。

しかし出会ってしばらくはタカオは雪野のことについて名前も仕事も分かりません。

まるで世界の秘密そのもののように見える。

そう思いながらも、どんどん雪野に惹かれていきます。

かたや雪野は、職場の同僚と不倫の末に別れ、さらにその職場では別のトラブルも抱えていて、行き場のない気持ちに鬱屈とした毎日を過ごしています。

そしてそれが彼女の味覚障害の原因でもあったのです。

ところがタカオと公園で会っているうちに、その味覚障害が少しずつ治っていくのです。

雪野はタカオに初めて会った日、別れ際に一篇の短歌を詠みました。

雷神(なるかみ)の 少し響みて さし曇り 雨も降らぬか 君を留めむ

実は雪野はタカオの学校の古典の教師だったのです。

雪野はタカオの制服を見て、自分の学校の生徒だと気づきました。

短歌を詠めば自分が学校の教師だと気づくかと思ったのですが、タカオの方は学校に興味がなかったので、雪野が自分の学校の先生だということが分かりません。

その後も雪野は自分が教師であることをタカオには告げず、雨の公園で会い続けました。

そんなある日、タカオは雪野のために靴を作り始めます。

しかしやがて梅雨が明け、雨が降らない日が続きました。

雨が降らなければタカオは公園に行かないので、2人が会えない日が続き、やがて夏休みになり、そして2学期に。

久しぶりに学校に来ている雪野がいます。

そこで初めてタカオは雪野が自分の学校の古典の先生だと知るのです。

雪野は3年生の一部の女子生徒とのトラブルで学校に行けなくなり、ついには学校を辞める決意をしました。

雪野を慕う生徒たちに見送られ、学校を去った雪野は公園に向かいます。

そこにタカオもやってきました。

その時突然の雷雨が降り始め、2人はずぶ濡れに。

雪野の部屋で濡れた服を乾かしながら、屈託なく笑いあうタカオと雪野。

ゆったりとした時間が流れています。

そしてこの時2人は同じことを思いました。

「今まで生きて来て、今が一番幸せかもしれない。」

タカオはついに雪野に気持ちを打ち明けました。

雪野さん、俺、雪野さんが好きなんだと思う。

雪野は一瞬顔を赤らめますが、その答えは、

雪野さん、じゃなくて雪野先生、でしょ。

そんな雪野の態度に傷ついたタカオは部屋を出ていきます。

でも本当は雪野もタカオと一緒に過ごすにつれて、タカオに惹かれていっていたのです。

雪野は部屋を出て行ったタカオを裸足のまま追いかけました。

しかしタカオは追いかけてきた雪野をなじります。

ちゃんと言ってくれよ。

邪魔だって、ガキは学校に行けって、俺の事嫌いだって。

あんたは一生ずっとそうやって大事なことは何も言わないで、自分は関係ないって顔してずっと一人で生きていくんだ。

雪野も自分の思いを吐き出します。

あの場所で、私あなたに救われてたの。

初めて2人はお互いの気持ちをぶつけ合いました。

ですが、結局雪野は故郷に戻って地元で教師として働きます。

タカオはその後も靴職人への夢をあきらめず、高校にも通っています。

いつか立派な大人になって雪野に会いに行こう、そして雪野のためにたくさん靴を作ろう、という思いを持ち続けて。

3.「言の葉の庭」の見どころ


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新海監督の作品と言えば、その映像の美しさです。

「そんなこたあ、お前に言われなくても知っている。」

はい、その通りです。

でもやはりそこは推していきます。

そしてそれだけではないのも新海監督の作品です。

アニメならではの映像美


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新海監督の光や水の透明感の描写には、鳥肌がたつほど感動します。

この作品の中でも、雨が第3のキャラクターというだけあって、さまざまな雨の表情を描き出しています。

特に素晴らしいのは、池や水たまり、そしてコンクリートや石畳や公園の板敷の小路を濡らす雨や、蒸せるような新緑に降る雨の瑞々しさです。

池の水面に円を描く雨粒、そしてそこに浮かぶアメンボたち。

まるで写真のようだけれど写真より美しい、実物を超える美しさを表現できるのもアニメの良いところだなと思います。

短歌の意味


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「雷神(なるかみ)の 少し響みて さし曇り 雨も降らぬか 君を留めむ」

初めてタカオと雪野が出会った日に、別れ際に雪野が詠んだ短歌です。

「雷が鳴って、曇が広がり、雨が降ってこないかしら。あなたを引き留められるように」という意味です。

これに対してタカオが返したのが

雷神(なるかみ)の 少し響みて 降らずとも 我は留らむ 妹し留めば」

「雷が鳴らなくとも、雨が降らなくとも、君が引き留めてくれれば私はここに残るよ。」

どちらも柿本人麻呂の歌です。

昔から雨というのは、恋しい人を自分のもとに引き留めるための理由に使われていたんですね。

知り合ったばかりの頃は、2人が会うために雨が必要だったけれど、やがてお互いに引き留め合う気持ちがあれば雨が降らなくても会うことができる(一緒にいられる)という、2人の状況の変化がこの二篇の短歌で表されているようです。

雨の映像美と雨を詠った”言の葉”で、作品の世界観を見事に描き出していると思います。

雪野の足


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何度か公園で会ううちに、タカオは雪野に靴を作らせてほしいと頼みます。

そのために、タカオが雪野の足のサイズを図るのですが、このシーンは個人的にこの映画の中で一番好きな場面です。

自分の靴を作りたい、と言われて(実際そのセリフは言ってないけど)若干はにかむ雪野。

そして、履いているパンプスを脱いで、綺麗な、ほんとうに綺麗な爪をした華奢な足をベンチに乗せる。

それを大事そうに手で包み、丁寧に採寸していくタカオ。

なんかもう変態の足フェチみたいに興奮してしまいますが、ひとつひとつの動作が実に生々しくて良い!

雪野の足の描写がほんとうに綺麗なんです。

アニメだということを忘れて、思わず見惚れてしまいます。

足フェチな方だけでなく、ぜひこのシーンは堪能してほしいところです。

女性の気持ちを分かっている監督


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作品の中で、雪野の精神状態を表しているシーンがいろいろあります。

ゴミや衣服が散乱した部屋の様子や、朝目覚めるときの気だるそうな様子など。

そういうシーンの中で、おそらく女性なら誰でも「まじかよ・・・」っていう気持ちになるシーンがあります。

それは、テーブルに置いてあったファンデーションが床に落ちて、中身が粉々に割れてしまうシーンです。

男性諸君にはよく分からないと思うので一応説明すると、ファンデーションってのは粉がギューッと硬く固められてお菓子の落雁のような状態になっているものなのです。

だからコンパクトを床に落としたりすると、その衝撃で固まっていたファンデーションは粉々になってしまいます。

いったんそうなってしまったファンデーションは、もう使えなくなってしまうんです。

私も何度やってしまったことか。

テーブルから落ちたコンパクトを開いて粉々になったファンデーションを見た雪野も、何とも言えないため息をつきます。

仕事に行きたくない気持ちに拍車がかかる。

こういう女性の心理が良く分かっている新海監督。

「やるな、おぬし」と敢えて上から言いたいと思います。

行動心理学的な位置関係の描写


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場面によって2人の位置関係を変えることで、タカオと2人でいるときの雪野の心理状態を表現している点もまた、よくできているなと思うところです。

ベンチで座っているとき、雪野の家でくつろいでいるとき、そしてタカオが告白したとき。

雪野がタカオに対してどう思っているか、また、どういう立場で接しようとしているかを雪野の座る位置を微妙に変えて描写しています。

どこにどう座っているか、ぜひよく注意して観てみてくださいね。

4.「言の葉の庭」のテーマを考える


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すごく乱暴なことを言ってしまうと、私はこの映画の映像の美しさだけを見られればそれでもう十分、とか思っちゃったりするわけですが、そこはやっぱりイメージビデオとは違って映画ですから、テーマについても考えて観た方が、より豊かな映画の「読後感」を味わうことができるんですよね。

ところで余談ですが、映画を観終わったあとの、この「読後感」にあたる言葉、一言でスパッと言い表せる言葉ってないでしょうかね。

孤悲だけじゃない


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この作品は、タカオと雪野の年の離れた2人の男女の淡い「孤悲」の話です。

確かに、会いたい人に会えない、会いたいという気持ちを1人で抱く、という切なさが伝わる話です。

でもこの2人の場合、それだけじゃない気がします。

この作品はタカオと雪野の心の成長物語としても描かれていると思います。

タカオに靴を作ってもらうことになった雪野は

私ね、上手く歩けなくなっちゃったの。

こう言います。

それはもちろん、いろんなことがうまく行かなくなって、どうしたらいいか分からなくなってしまったという意味です。

私はあの場所で1人で歩けるようになる練習をしてたの。靴がなくても。

雪野は公園で何度かタカオに会ううちに、だんだん自分を取り戻していくことができたんです。

歩く練習をしていたのはきっと俺も同じだと今は思う。

タカオもまた、故郷に帰った雪野のことを思いながらこう考えます。

2人とも、人生の中で乗り越えなければならない課題を抱えているときに出会ったのです。

雪野はまさに今まで自分が歩んできた道を振り返り、これからの人生をどうするのか。

タカオは靴職人になりたいという夢とどう向き合って大人になっていくのか。

そんな2人が雨の降る公園という、ある意味「現実とは離れた異世界」で出会い、自分たちの課題に立ち向かい乗り越えていく、そしてそれを支えているのがお互いの存在であったということ。

「孤悲」とは1人悲しくあなたを思う、という意味の言葉ですが、誰かを好きになる気持ちは、自分を強くさせるだけではなく、相手にも前に進む強い力をあたえるものでもある。

そういうメッセージを感じます。

靴の意味


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もう1つ、この作品で雨と同じく重要なアイテムとなっているのが、靴です。

そもそもタカオはなぜ靴職人になりたいと思ったのでしょうか。

タカオが昔のことを思い出すシーンがあります。

まだ両親が離婚する前、母親の誕生日にみんなでプレゼントを贈ったときの思い出です。

何だろう?って言いながら母がプレゼントの箱を開けると、そこには綺麗な紫色のパンプスが。

それをタカオ少年はキラキラした瞳で見ています。

おそらく、タカオはこの時靴をプレゼントされた母親の嬉しそうな顔を忘れられないのだと思います。

靴作りはタカオにとって大切な人への気持ちを伝えるための作業なのかもしれません。

そして出来上がった靴は大切な人へのタカオの気持ちそのものなのかもしれません。

最後のシーンで雪野のために作った靴が出てきます。

でもまだ未完成なのです。

タカオはもっと一人前の大人になって雪野に会いに行こうと心に決めています。

だから、一人前になったそのときにきっと靴も完成するのだと思います。

5.「言の葉の庭」をおすすめする人


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毎回映画を観終わったあとに、「あ、あの人にこの映画見てもらいたいな」なんてことを考えるのですが、さて、この「言の葉の庭」を観てもらいたい人はどんな人でしょう。

絵を描く人


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やはり新海監督作品と言ったら映像の美しさです。

どうやったらこんなに鮮やかな色を表現できるのだろう、どんな風にこの透明感を出しているのだろう、などと思いながら、その圧倒的な美しさに心を奪われてほしいです。

映像美によるカタルシスというものがあるのかどうか分かりませんが、絵を描く人は、1枚の絵がもつパワーというものを改めて感じることができるのではないでしょうか。

好きな人と離れてしまった人


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タカオと雪野はお互いに惹かれているのは確かだけれど、それぞれ離れた場所で自分の道を確立することになりました。

それは寂しいこと、悲しいことのようにも感じるけれど、きちんと雪野と向き合うには1人で生きていける大人にならなければならないとタカオは考えます。

今、好きな人と離れ離れになってしまっている人も、寂しがるだけではなく、愛する人を幸せにできるような人間になるための訓練だ、と思って観てもらいたいです。

聖地巡礼に興味がある方


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アニメ映画で話題となるのが、これはいったいどこが舞台なのか?っていうことですね。

この作品は、東京の都心のど真ん中、新宿御苑がその舞台となっています。

タカオと雪野が出会う東屋も、公園の入り口のチケット売り場も、そして雨にけむる新宿の高層ビルも、実際の位置関係が細部にわたって忠実に再現されています。

鑑賞後に映画の世界を思い出しながら聖地巡礼してみるのも楽しみの1つですね。

古典が好きな人

「言の葉の庭」というタイトルのとおり、雪野とタカオが詠んだ万葉集の短歌がひとつのキーワードになっています。

古典が好きで短歌に詳しい方が観たら、歌の背景や意味と2人の出会いや別れについてもっと深く感じるものがあるかもしれません。

「言の葉の庭」という作品は、言葉の深さと映像の美しさを堪能できる映画です。

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