こんにちは!ここ1か月でダン・ブラウン原作映画3連発レビューをしてすっかり脳があっち側に行ってるエンタメブリッジライターしおりです。
「ダ・ヴィンチ・コード(2006年)」「天使と悪魔(2009年)」に続き、ようやく今回、最新作「インフェルノ(2016年)」までたどり着きました…ゼェゼェ。
2020年1月にはインフェルノ制作裏話を題材としたミステリー映画「9人の翻訳家 囚われたベストセラー」も公開となりましたね。
※ダ・ヴィンチ・コード、天使と悪魔についてのレビューはこちらからご覧ください。
ダ・ヴィンチ・コード
⇒【ネタバレ】超難解!?映画ダ・ヴィンチ・コード20分でわかるあらすじ完全解説
天使と悪魔
⇒【ネタバレ】映画「天使と悪魔」意味深ラストの考察は原作がミソ
さてダン・ブラウン映画第3弾「インフェルノ」の気になる題材はダンテ「神曲」です。
ダンテ「神曲」…私は世界史で学生時代かすかに習った記憶がございますが、「神曲」とか言われても「音楽だっけ?戯曲だっけ?ハムレットみたいな舞台だっけ?…」という全然イメージわかない情けなし状況でございました。
私と同様、覚えていない皆さんのためにズバリ結論を言っておきましょう、ダンテ「神曲」は叙事詩です。
「叙事詩ってなんだよ」というさらに私と同じ疑問を持った方のためにもう1歩踏み込みましょう、叙事詩とは「小説のような長い詩」です。
映画を観る前にまずこれを押さえていればOKです!
映画「インフェルノ」は121分とラングドンシリーズ3作の中で最も短い映画なのですが、個人的には「物語があって、そこに絶妙に『題材』がハマる」という前2作と比べて、インフェルノは「『題材』があって、そこに無理やり物語を入れこむ」という感じがなくもなかったです…(原作はそうでもないのだが…)。
題材が叙事詩という「文章」ということもあり「う~ん、なんだか意味わからん」と思いつつ進行していくことはある程度覚悟しておいたほうがいいですね。
とはいえ、原作や解説本をフムフムと読んでいるとかなり面白い要素、現代の私たちが無視できない問題まで詰まっているんですよ。
今回は、そんなわかりづらい「インフェルノ」の理解が10倍深まるあらすじ紹介と、宗教や歴史用語をパパっと解説、そして個人的な見どことトピックをピックアップしてご紹介しましょう!
1.映画「インフェルノ」の作品紹介
予告動画で1分20秒頃「時が来た、今日が審判の日だ」というセリフが不穏な雰囲気を醸しますね…。
「インフェルノ」って24時間の話を2時間にぎゅっと凝縮しているのですが、この1日に一体何が起きるのでしょうか…?
監督:ロン・ハワード(Ron Howard)
原作者:ダン・ブラウン(Dan Brown)
原作:インフェルノ(The INFERNO)
出演者:トム・ハンクス(Tom Hanks)、フェリシティ・ジョーンズ(Felicity Jones)、オマール・シー(Omar Sy)、ベン・フォスター(Ben Foster)、イルファーン・カーン(Irrfan Khan)。
2.映画「インフェルノ」のあらすじ
画像出典:https://tsutayamovie.jp/
始めに映画「インフェルノ」のあらすじをご紹介します。
まだ観ていない方は3つの都市を意識しておいてくださいね。
「フィレンツェ」「ヴェネツィア」「イスタンブール」です。
映画「インフェルノ」のあらすじ(ネタバレなし)
今作はいつにも増して波乱の幕開け!
病院の集中治療室で目が覚めた主人公のハーバード大宗教象徴学教授ロバート・ラングドン(トム・ハンクス)は、なんと2日間の記憶を失っていました。
ラングドンは頭部を銃で撃たれており、ラングドンの見る幻覚『赤く染まった街、手を切断された人、地中に上半身を埋められた人、顔が前後反対についている人の群れ』などサイコホラーな幻覚シーンから始まります。
目が覚めましたか?
今日が何日かわかりますか?
とやってきた担当医の女医はシエナと言い、9歳でラングドンの講演会に行ったとかいうIQ200の才女。
しかしラングドンは、なぜ今自分がフィレンツッェにいるのかさえ思い出せません。
とたん、『軍警察』のロゴ入り黒バイでやってきた謎の女が病院に侵入、ラングドンに向かって銃を発砲してきたのです!
頭部の損傷と幻覚が激しいラングドンは、轟音に幻覚が誘発されまくり。
「ゔああああ!」と絶叫しながら、回復していない体でフラフラしながら女医シエナに支えられて2人タクシーで逃げます。
シエナのアパートに一時保護されたラングドンですが、命を狙われている理由はなぜ?!
映画「インフェルノ」のあらすじ(ネタバレあり)
↑このように最終的に誰が「細菌ばらまき推進派」で、誰が「細菌止めたい派」になるのか整理しておくと、インフェルノは格段にわかりやすくなります。
この図であれ?と思っていただきたいのはラングドンを助けた「女医シエナ」の立ち位置です。
ラングドン映画シリーズの共通項は、ラングドンがヒロインの女性の知恵を借りて一緒に謎解きをして問題を解決することですよね。
例えば「ダ・ヴィンチ・コード」ならソフィー、「天使と悪魔」ならヴィットリア。
今回は女医シエナがそうなるかと思いきや、終盤で最強の裏切りをする悪役へ変貌、「え~~!?」と観る側を驚かせます。
シエナはある思想家の信奉者でした。――そいつの名はゾブリスト(図の左上)。
ゾブリストとは遺伝子工学が専門の生化学者で、「地球人口の過剰問題」に対して過激な救済手段を説いていたトランスヒューマニスト兼バイオテロリストです。
「日本救済」と銘打って多数の信者を抱え、地下鉄にサリンをまいたオウム真理教教祖を彷彿としますね…。
ゾブリストのスピーチの一端を聞いてみましょう。
1800年代10億人だった地球人口は、1920年には20億人、1970年には40億人、今や80億人に迫る勢いだ。
50年経てば100億人になり、人類は住む場所がなく地は荒れ果て、犯罪や飢饉がはびこり絶滅する。
人類を守るためには、今すぐ細菌感染兵器によって人口を減らすのだ!
とこんな感じで、既に細菌兵器も製造済。
ラングドンを治療した女医シエナはゾブリストに心酔しており、ゾブリストと恋愛関係にまであったんですが、それがわかるのは物語のかなり後半です。
ゾブリストは、映画でチラッとセリフで出てくるのですが、生化学者として人口抑制策を、過去WHO(世界保健機関)に提言をするなどそこそこ健全な手段をとっていた時代もあったらしいのです。
しかしWHOが謎の過激な思想家など相手にするわけもなく、ゾブリストはWHOに敵対視され、逆にその身を追われることとなります。
そのため、ゾブリストは2年間アリバイ・ビジネス(民間の危機管理会社をやってる黒い組織)の大機構(事務所は『メンダキウム』という大型船内)という組織に頼み、2年間かくまってもらった準備期間後、Xデーと決めた日に世界中に細菌兵器をばらまく計画がありました。
このXデーが、ラングドンが病院で目覚めた翌日だったのです!
しかしゾブリストはとうとうWHOパリ支局長のブシャール(オマール・シー)に居場所がばれ、「細菌兵器のありかを教えろ!」と追い詰められて、口を割らないまま塔から飛び降りて自殺してしまいました。
ゾブリストは彼女シエナに遺言を残していました。
細菌兵器のありかは教えられないが、もし自分に万が一のことがあったら、地球を救うために君が細菌兵器をばらまくんだ!
そんなこんなで、ラングドンの担当医シエナは「ラングドンの助け手」を装って進行していきますが、それはバイオテロを決行するためにゾブリストの隠した”細菌兵器探し”にラングドンの知識が欲しかっただけなんです。
前置きはこの辺にしましょう。
シエナ宅に保護されたラングドンは記憶喪失から少しずつ回復、頭も明瞭になってきます。
病院服を脱いで私服のジャケットを羽織ったラングドンは、裏ポケットに謎の筒が入っていることに気づきます。
しかし、自分がなぜそんな筒を持っているかラングドンは記憶がないんです。
指紋認証はラングドンの指紋だけに反応、開封され、中には小さなポインターが入っていました。
早速壁に映し出すと、出て来たのはダンテ「神曲<地獄篇>」をモチーフにした、ボッティチェリの絵「地獄の見取り図」でした。
ボッティチェリはダンテの50歳くらい年下ですが、ダンテ「神曲」の挿絵を担当した画家です。
画像出典:https://tsutayamovie.jp/
ラングドンが冒頭見ていたおどろおどろしい幻覚とは、この「地獄の見取り図」の地獄のイメージだったのです。
映画「インフェルノ」で出てくる暗号は前作、前々作と比べて少なめで4つ。
1つ目の暗号はこの「地獄の見取り図」にゾブリストが書き足した文字。
絵には原画にない文字が加筆されており、「R、E、C、V、R、A…」と判読して並べ替えると、イタリア語で「CHERCA TROVA(チェルカ・トローヴァ)=尋ねて見出せ」となりました。
そして「地獄の見取り図」の下のほうには
The truth can be glimpsed only through the eyes.
(真実は死者の目を通してのみ見える)
という英文も書き添えられています。
『どういう意味だ?そもそもなんで自分はフィレンツッェにいるのか?』…ラングドンはこっそりシエナのいない隙に、シエナのPCでgmailにアクセス。
ざーっと見たところ、「イニャッツィオ」という記憶にないイタリア人から不思議なメールが来ていました。
我々が盗んだ物は隠した。
「天国の25」
私はしばらく姿を隠す。
『え、自分が何か盗んだ共犯者?!』と震え上がるラングドン。
2つ目の暗号はこの「天国の25」。
病院の一件で「警察には病院で追われている」と認識したラングドンは、シエナのスマホで領事館に電話して助けを求めますが、実際にシエナがこっそり電話をかけたところはゾブリストが利用していたアリバイビジネスの会社、大機構でした(ラングドンはそれに気づいてない)。
ちなみに病院にいたときラングドンを銃で撃ってきた軍警察女とは、この「大機構」に雇われた女だったのです。
このPC操作とスマホ通話が原因で、ラングドンの居場所がシエナのアパートであることがWHOと大機構それぞれにバレます。
にしてもなぜ大機構とWHOがラングドンを追っているのか?
それはひとえにポインター欲しさなのですが、両者の目的は全く違います。
大機構はクライアントだったゾブリストの任務を遂行するため、ポインターを取り返したいだけです。
WHOは「パリ支局ブシャール」と「本部事務局長エリザベス」を明確に分けて覚えてください。
パリ支局ブシャールはポインターを政治の脅しや交渉ツールに使えるとして、外国に売り飛ばしたくて欲しがっています(後々わかるんですがブシャールは思想もゾブリスト派ですね)。
ゾブリストと面会歴のある本部事務局長エリザベスは、単純にバイオテロを食い止めるためにポインターを取り返したいと思っています。
ラングドンはそんなことはいざ知らず、とにかく武装した雇われ警察女とWHOから逃げるため、シエナの車で脱出。
目指すはヴェッキオ宮殿。
先ほどの「地獄の見取り図」の「CHRCA TROVA(チェルカ・トローヴァ)」はヴェッキオ宮殿「五百人広間」に飾られた巨大絵画、ヴァザーリ作「マルチャーノの戦い」の小さな旗に描かれている美術史上最も有名な謎の文言の1つだったのです。
【フィレンツェ/ヴェッキオ宮殿】
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ヴェッキオ宮殿で「CHERCA TROCA」のある絵を見ていたラングドンとシエナは、「あら~今日もいらしたのね~!」と気さくなノリで妊婦の美術館員に話しかけられます。
ラングドンは記憶にないんですが、gmailの「イニャッツィオ」なる人物とラングドンは昨日もここに来たらしいんです。
あれが目的でしょ?
昨日ずーっと見てましたものね!
と言われるがまま通されたのは、ダンテのデスマスクのある展示室。
実はこのデスマスク、館員の説明によるとゾブリストに買い取られており、所有権はゾブリストにありながら美術館にそのまま展示されているのです。
「Dante again, always Dante, Why Dante…(またダンテかよ、いつもダンテ、なんでダンテなんだよ…)」とラングドンはぶつぶつ展示室に向かうと事件発生!
ダンテのデスマスクがなかったのです!!
すぐに防カメチェックになりましたが、そこに映し出されたのは衝撃な映像。
なんと盗んでいた2人組は、昨日ここを訪れたラングドンとイニャッツィオだったのですが、ラングドンは記憶がありません。
同じタイミングで武装したWHO、軍警察女がヴェッキオ宮殿に突入し、防カメ室にもけたたましいサイレンが鳴ります。
どさくさに紛れてシエナとラングドンは美術館の天井裏に隠れ、イニャッツィオがgmailで残した暗号「天国の25」がダンテ「神曲<天国篇>第25歌」を指しているとわかり、暗がりの中でシエナのスマホで該当箇所をググります。
声は老い 白髪でも 私は詩人として戻り
”洗礼盤”の前で冠を受ける
はい、この「神曲<天国篇>第25歌」が3つ目の暗号。
ラングドンは「ダンテが洗礼を受けた教会」⇒フィレンツェの「サン・ジョヴァンニ洗礼堂」が次の目的地だと推理。
そのとき天井裏まで軍警察女が追ってきたのですが、軍警察女は足を滑らせてそのまま五百人広間に派手に落下して死亡…。
シエナとラングドンはサン・ジョヴァンニ洗礼堂へ急ぎます。
一方、軍警察女死亡により連絡が途絶えた大機構のメンダキウム船内は混乱していました。
大機構も既に死んだゾブリストを怪しい目で見るようになり、ゾブリストから「Xデー(つまり明日)が過ぎたら流すように」と渡された動画を再生して観ることにしました。
これを見ているなら、ウィルスは昨夜すでに放出され、世界中の隅々にまで拡散している。
放出から6日以内にウィルスはすべての人間の体内で増殖し、地球の人口は現在の半数にまで淘汰される。
ガーーン( ̄ロ ̄lll)…。
闇の組織を率いる総監でさえあぼーんと口を開けました。
ここまでひどい計画を練っていたとは知らなかった総監たちは、ゾブリストの計画支援は中止。
総監自ら動き出して、WHO事務局長エリザベスらと手を組んでラングドン捜索&細菌兵器爆発阻止に動きだします。
【フィレンツェ/サン・ジョヴァンニ洗礼堂】
画像出典:https://tsutayamovie.jp/
シエナとラングドンはダンテ「神曲」<天国篇>第25歌の意味する、ダンテが洗礼を受けたサン・ジョヴァンニ洗礼堂へ到着。
ここの洗礼盤の水の中で、ジップロックに入ったダンテのデスマスクを発見しました。
デスマスクの裏をふきふきして出て来たのはダンテファンだったゾブリストがダンテ風に書き残した詩で、4つ目の暗号。
裏切り者のヴィネツィアの総督(ドージェ)を探せ。
彼は馬の首を断ち切った。
「英知に満ちた黄金のミュージアム」でひざまずき、ひそやかに流れる水の音に耳をすませ。
深く水に沈んだ宮殿で、「地底の怪物」が待っている。
地で赤く染まった水の中に沈み、そこに星が映ることはない。
「地底の怪物=細菌兵器」、では「英知に満ちた黄金のミュージアム」はどこ?
そこへ「教授!」と追ってきたのはWHOパリ支局ブシャールでした(まだ善人ヅラをしております)。
ブシャールはWHO本部のエリザベスのことを「ウィルスを外国政府に売ろうとしている」と悪者にでっちあげ、全面的にシエナとラングドンの細菌兵器探しを支持するとアピール。
ラングドンは「ヴェネツィア」「馬」から着想を得て、「英知に満ちた黄金のミュージアム」である次の目的地は馬の彫像がある「ヴェネツィアのサン・マルコ大聖堂」と推理。
3人仲良く列車で移動します。
しかし列車でラングドンは一時的に記憶が戻り、この事件に関わる重要な記憶がフラッシュバックします。
2日前ハーバード大キャンパスのベンチで本を読んでいると、1人の女性がやってきた記憶。
久しぶり、ロバート。
WHOを助けてほしいの。
これぞWHO事務局長エリザベスでした。
ラングドンとエリザベスはかつての旧友であり、しかも元恋人同士だったんです。
映画でラングドンの恋愛が出てくるのはこのインフェルノが初めてですね。
この記憶で、「エリザベスを悪役に仕立て上げているブシャールの嘘」に気づいたラングドン、こそっとシエナにも報告します。
ラングドンとシエナは車内のトイレでブシャールを消化器のようなものでぶって駅を下車、サン・マルコ大聖堂まで突っ走りました。
一方そのころエリザベスは、大機構の総監シムズと空港で鉢合わせます。
話していくうち「大機構がWHOの追っていたゾブリストをこの2年かくまっていた」とエリザベスは知り怒り心頭!
しかし亡きゾブリストが大規模テロを計画していたことを知り、双方は「細菌兵器を探しているラングドンを探し出して、細菌が世にばら撒かれるのを阻止すべきだ」と利害は一致します。
シムズとエリザベスは今後手を組んで、ラングドンを追跡することになります。
【ヴェネツィア/サン・マルコ大聖堂】
画像出典:https://tsutayamovie.jp/
ヴェネツィアは年間24万人が訪れる観光都市。
中世で”黒死病”が流行したときは、入港する船は40日間港で待たされた。
「黒死病=ペスト」のことですが、14世紀にヨーロッパで大流行した感染症です(黒死病はインフェルノを読み解くポイントになりますのであとで詳しく解説)。
そんな会話をしながら馬の像がある大聖堂にたどり着いた2人ですが、ラングドンシリーズテッパンの「やっぱりここじゃなかった」が発動!
聖堂に飾られてある馬はレプリカで、現地イタリア人に聞いたところによると「馬は十字軍の戦利品で、コンスタンティノープルから来たのよ」ということで、目指すべきはコンスタンティノープル(現イスタンブール)だったのです!
ラングドンシリーズ、初のアジア登場ですね。
十字軍ときのヴェネツィア総督はエンリコ・ダントロと言い、最後の目的地はエンリコ・ダントロの墓所ってこと。
この墓所こそコンスタンティノープルのかの有名な聖堂「アヤソフィア(別名ハギアソフィア)」であり、ここが細菌兵器のありかだったのです!
しかしここでついにアノどんでん返し。
さっき列車内に置いてきたブシャールが追ってきて、シエナとラングドンは大聖堂を地下通路から脱出!
そこで先に外に抜け出したシエナが急にゾンビの形相となり、
ゾブリストが人殺しで異常者だと思うの…?
歴史は彼を「救済者」と言うのよ。
彼を愛してた、助けてくれてありがとう。
とアホなこと(?)抜かしてラングドンを1人地下の檻に取り残してイスタンブールへ行ってしまったのです!!
ラングドンは利用されたこと、シエナがゾブリスト信者であったことに気づいて茫然自失…。
その隙にラングドンはブシャールに捕まり、再び意識を失って気づけば船の倉庫のようなところへ拉致されていました。
ここでブシャールからも「実はゾブリスト支持」的な衝撃の真実が明らかにされます。
「あのよ、考えてみろ」的に始まったブシャールの演説とは、
この地球の人口は?生まれる子供の数は?
たまには淘汰が必要だ。
健全な考えだ。
ブシャールよ、お前もか…(カエサル風)。(←とはいえブシャールとシエナは結託してません)
とそのとき後ろからそーっと忍び込んできた大機構の総監シムズが、ブシャールを背後からナイフで一刺し!
ラングドン「誰だよ?」
シムズ「便利屋だよ。あんたが頭に傷を負ったと思うようにしかけたりね。ベンゾジアゼピンも打った。」
はい、ここでようやく記憶喪失からのすべての謎が解明されるので、コトの順番を最初から1度整理してみましょう。
つまりこういう流れです。
①2日前にゾブリストはブシャールに追い詰められて自殺、恋人だったシエナが大機構総監シムズのもとを訪れ「助けてほしい、ゾブリストの計画を実行したい」と依頼する。
↓
②ゾブリスト死亡に立ち会ったブシャールは、ゾブリストが所持していた「細菌兵器への地図」となるポインターを入手。
↓
③上司のWHO本部エリザベスがブシャールからポインターを入手、ハーバード大を訪れてダンテに詳しいラングドンをフィレンツェに呼ぶ。
ラングドンだけが解読できるようにポインターに指紋認証を入れる。
↓
④ラングドンは記憶があるときに「地獄の見取り図」を解読、ダンテ研究の第1人者イニャッツィオとヴェッキオ宮殿のダンテのデスマスクを訪れる。
↓
⑤ポインターに指紋認証までつけられた以上、シエナに依頼された大機構としては「ラングドン拉致」しかないと判断。軍警察女を雇う。
↓
⑥ラングドンとエリザベスがフィレンツェにいたところを、軍警察女が拉致。
ベンゾジアゼピン(精神安定薬によく使われるやつ)を注射し、記憶を失わせ、頭に切り傷を作って撃たれたようにでっち上げ、架空の病室をセッティングして、空砲の銃を持った軍警察女を侵入させる。
↓
⑦大機構としては計画通りに行っていたが、シエナが大機構を裏切ってラングドンと2人で逃走してしまった。
「何もかでっちあげか…」とラングドン渾身のため息…。
しかし時間は待ってくれず、刻一刻と細菌兵器を爆発させる時間が迫ってきます。
シムズ、エリザベス、ラングドン組もWHOのジェット機に乗ってイスタンブールへGO!
【イスタンブール/アヤソフィア大聖堂】
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イスタンブールに一足早く到着していたシエナは、ゾブリストと親交があった細菌兵器を爆発させる爆発物開発者と面会。
イスタンブールは古来より東西交易のぶつかる中心地であり、シルクロードの終着点です。
イスタンブールをテロの中心地とするのに、ゾブリストは地球の「グラウンド・ゼロ」として申し分ないと考えたのでしょう。
ラングドンらはアヤソフィア大聖堂に到着し、最初にゾブリストがデスマスクの後ろに残していた長文の4つ目の暗号解き。
「英知に満ちた黄金のミュージアム」でひざまずき、ひそやかに流れる水の音に耳をすませ。
ラングドンが聖堂で床に引っ付けると、水が流れる音が聞こえてきました。
この地下は古代からの貯水池と巨大空間があり、6世紀の沈んだ宮殿があったのです。
これもゾブリストの計画済みなことだと思いますが、最悪なことに、この日その巨大空間で世界中から人々が集まるクラシックコンサートが行われる予定で、観衆でごった返していました。
何十画もある地下空間の赤い水中を手分けして水中をくまなく探索、危険物処理班も出動してきます。
そこに忍び込むようにするりとシエナや爆発物開発者もやってきました。
「あったわ!!」とエリザベスが細菌の袋を見つけましたが、シエナがやってきて爆弾を水中に投げ込みます。
あとはリモコンでONにすれば人類は滅亡…観客も出演者もがキャーー!とパニックで退室していく中、ゾブリスト推進派VS反対派がもみ合いとなりました。
ラングドン「救うための大量殺人?圧制者のヘリクツだ!行動したいなら声をあげて人々を解決に導け!」
シエナ「人間を愛し、地球を愛するなら何をしてでも救うべきよ」
WHOは間一髪ゾブリストの細菌袋を頑丈な安全装置に入れますが、その瞬間激しい水中爆発が起こり、水しぶきで聖堂は奇声の嵐。
大機構シムズは細菌推進派に後ろから刺されて死亡。
細菌兵器の入った頑丈な安全装置を抱えたエリザベスは、何度も推進派に首を絞められ溺死しそうになりますが、ラングドンの助けもあり無事安全装置を死守!
ラングドンとエリザベスは外に出て、救急隊がせわしなく動く中、温かい飲み物を振る舞われながら恋人同士だった頃のような会話をします。
「また離れ離れね」
シエナはこの事故で水死してしまいました。
ラングドンの目の前で、遺体が黒いビニールに包まれて搬送されていきます。
彼女も地球を救いたかった…。
悲運の死を遂げ、いろんな意味で哀れなシエナに思いを馳せるラングドン。
両者とも「地球を救いたい」って目的は同じなのに、やり方が違うだけで「善/悪、合法/違法、倫理/反倫理」に振り分けられてしまったわけで、地球を救うってことは改めてデリケートなことなんだと考えさせられるシーン。
ラングドンは翌朝、約束通りデスマスクをヴェッキオ宮殿に返却し、妊婦だった例の美術館員が「今日無事出産した」との報告を受けました。
ラングドンは生命誕生の神秘を胸に称えつつ、美術館を去ります。
3.映画「インフェルノ」の見どころ
画像出典:https://tsutayamovie.jp/
続いては「インフェルノ」の見どころをご紹介します。
はじめに簡単に用語解説から入り、だんだんディープな見どころや感想に潜っていきましょう。
「インフェルノ」の意味とダンテ「神曲」について
インフェルノ=イタリア語で「地獄」の意。
映画では「地獄」と「インフェルノ」が字幕でも吹替えでも使い分けられています。
特に「インフェルノ」と使われるときはダンテの神曲<地獄篇>の意味で使われます。
そもそもダンテの神曲とは100の詩からなる叙事詩で、<地獄篇><煉獄篇><天国篇>に分かれており、ダンテ自身が主人公となってあの世を地獄から順番に彷徨って天国に到達するという話。
通常<地獄篇>だけ切り取って読むことはなく、あくまで3部合わせて神曲です。
ダンテ(1265~1321年)はフィレンツェ出身の政治家、詩人ですが、政争に巻き込まれて1301年フィレンツェを追放されてしまい、2度と故郷の足を踏むことはありませんでした。
そしてフィレンツェ追放から死ぬまで執筆していたのが「神曲」なのです。
意外にもダンテの「神曲」の影響は私たち現代日本人もしっかりと受け取っているんですよ。
私たちが通常イメージするような地獄ーー炎や血の池地獄にどぅわ~っと妖怪や怪物がいるようなおどろおどろしい「地獄絵図」のイメージはこのダンテの神曲に由来しているんです。
イタリアでは、私たちが学生時代に方丈記や源氏物語を学ぶのと同じように、高校生が「神曲」を基本全員学びます。
イタリアの高校は5年半なので、3年生で地獄篇、4年生で煉獄篇、5年生で天国篇と3年かけて学ぶそう。
この「神曲」が近年再び脚光を浴びている理由の1つに、「Life is Beautiful(ライフ・イズ・ビューティフル/1998年)」で主演を務めたイタリアの俳優ロベルト・ベルニーニが10年ほど前からメディアや劇場で「神曲」を暗唱したりコメントしたりして注目を集めていたことがあります。
ダンテ「神曲」と映画「インフェルノ」って結局どう関係ある?
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ダンテ『神曲』と映画『インフェルノ』って結局どう関係あるの…?
これは私が「インフェルノ」を鑑賞して1番に思ったことです…。
そりゃ暗号はデスマスクの裏とかに書かれてたけど、「なぜ、ダンテ?」とイマイチ深みにはまっていけないんですよね…。
「インフェルノって意味わからん」と感想を持つ方は同じように思われたのではないでしょうか?
ダ・ヴィンチ・コードのレオナルド・ダ・ヴィンチの絵の暗号はバシッと作品にハマっていましたが、今作は「題材がダンテではなければこの物語が絶対に成立しない!」というほどフィット感は第1印象ではなかったですねー…(汗。
そんなこんなで私なりに原作や解説本を読んで、「あ~やっぱりダンテじゃなきゃこの物語は成立しなかったんだ」と思った点を紹介します。
まず、ゾブリストはこんなセリフを残しています。
「天国」にたどり着くには、人は「地獄」を通り抜けなければいけない。
ここで言う天国、地獄とは、作品を通して次の比喩になっています。
神曲自体がまず「地獄の旅」から始まり、「地獄を経なければ天国に行くことができない」構成。
要するにこの映画はそのプロセスが暗号やメタファーとしてたくさん組み込まれていて、ざっと書き上げたように中世ヨーロッパの人口増加問題やそれに付随する犯罪増加、疫病の流行があのルネッサンス(ゾブリストの言葉でREBIRTH/再生)を生んだという暗喩なんです。
ダンテの大ファンだったというゾブリストは生前、
「インフェルノにたどり着け」
「インフェルノは治療法」
「何があってもインフェルノの門を解き放ってくれ」
と、まず「インフェルノ(地獄)に行くことが天国世界が始まるためのスタート」と考えていました。
それをWHOや世間は「荒治療すぎる!」と阻止に向けて動くわけですが、ダンテが題材でないといけない理由はこの「地獄から天国への対比、道順、プロセス」にあるんだと思います。
天国と地獄の間「煉獄」とは?
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原作では、ゾブリストは「今の世の中は煉獄だ」と言っています。
「煉獄(れんごく)」とは一体何でしょうか?
日本ではあまりなじみのない言葉ですが、煉獄とは天国でもない地獄でもない「中間のあの世」で、「すぐに天国に行けない魂が罪を浄化される場所」でカトリック特有の用語です。
カトリックでは、生きている人が「煉獄にいる死者」のために祈りを捧げ、祈りによって「死者が煉獄にいる期間を早められる」と考えます。
煉獄思想が成立したのは12世紀頃で、1562年トリエント公会議で「煉獄」は正式な教義となりました。
「なーんだ、キリスト教の考えなら自分は何にも関係ないわ」と思ったアナタ!
煉獄の概念は実は非常に日本にも浸透しているんですよ。
「千の風になって」、一時期流行りましたよね。
「自分は死んだら天国に行くのかなあ、地獄に行くってほど悪いこともしてないしなぁ」という魂が彷徨う千の風のイメージは「煉獄」に近いですね。
次、アニメ「ドラゴンボール」。
悟空は死んだら「天国みたいなとこ」に行って再び訓練し、ドラゴンボールによって力を得て蘇りますがこれぞ「煉獄」です。
最後、仏教の「六道輪廻」。
六道輪廻は興味深いことに煉獄とほぼ同時期の11世紀に誕生した概念であり、浄土に行けない魂が天道・人間道・修羅道・畜生道・餓鬼道・地獄道をぐるぐるぐるぐる回っていますがこれも「煉獄」に近いと言っていいでしょう。
仏教はそこで女神の観音信仰が生まれ、慈悲と慈愛によって衆生を救済する存在が生まれましたが、これもカトリックの聖母マリア信仰とよく似ています。
煉獄はカトリック特有のものかと思いきや、実は私たちも身近に体感しているものなんです。
ゾブリストが「この世は煉獄」と言っているのは、「この世は行動を起こさない限り地獄に落ちる、俺のバイオテロだけが地上を天国にさせる!」という意味で使っているのでしょう。
ラングドンシリーズがいつも”カトリック”な理由
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ダンテの神曲や、ミケランジェロの「最後の審判」みたいな宗教画って、古来の人々には現代人と比較にならないほどのリアリティで迫ってきていたんです。
原作者ダン・ブラウンが題材をプロテスタントや聖公会でなく、必ずカトリックになるのはそれ相応の理由があるんです。
15世紀宗教改革が起こって分派したプロテスタントがダン・ブラウンの題材にならないのはひとえに、ダン・ブラウンにとってプロテスタントはつまらないからでしょう(笑)
私の通っているプロテスタント教会ときたら、美容室を改装したようなビルに十字架と台があるだけで、ダン・ブラウンが入ってきたら「ネタなんて1つもねーじゃん!」ととんぼ返りしてしまうのがオチでしょう。
カトリックは歴史も古く、幾度も争いに巻き込まれ、組織的で絶大な権力を持つゆえに黒い部分があるとも言われますが、宗教画が豪華絢爛なのは有名ですし、観光スポットとしても人気ですよね。
なぜそこまでカトリックの宗教画が今と比較にならないほどのリアリティがあったかというと、当時の人々は文字が読めない、読み書きができない人が多かったからです。
そういう人たちに聖書の内容を教える教育ツールとして使われたのが宗教画だったんですね。
ダンテ神曲の画期的なところは、ラテン語ではなくイタリア語源のトスカナ方言で書かれたことです。
これを聞いた人々は聖なる高潔なラテン語よりも、より普段の会話に近い俗なるトスカナ方言で書かれたことで、地獄や煉獄、天国が活き活きと五感を揺さぶるように庶民に迫ってきたのです。
ラングドンの”黒死病の幻覚”と”トランスヒューマニスト”の関係
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ラングドンは冒頭の幻覚シーンで、クチバシがある仮面を被った人、皮膚のただれた人の幻覚を見ます。
これは14世紀ヨーロッパを襲った黒死病(ペスト)の幻覚であり、クチバシは当時の医者が着用していた服であり、皮膚のただれは患者の幻覚なのです。
実際当時の医者の服を再現した絵がこちらです。
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神曲が書かれた1300年初期にヨーロッパは終末思想が急速に広まっていました。
そしてダンテの死後14世紀に黒死病が大流行、ヨーロッパでは人口の3割近い約2000~3000万人が死亡したと言われています。
もうお分かりだと思いますが、ゾブリストはこの黒死病大流行を逆に評価しています。
なぜなら「人工淘汰」によってこの直後「ルネッサンス」という高度な再生、復活が生まれたと考えているからです。
結局ゾブリストが細菌兵器を作った理由はこの黒死病流行の模倣であり、人間が生き残ってより高度な文明社会を構築するためには人口を減らして絞り込む必要があるという思想からなんですね。
ただしゾブリストの細菌兵器とは黒死病のような自然病理ではなく、科学技術を駆使した産物。
ゾブリストのように「科学技術を駆使することによって人類という種をより向上させようとする思想を持つ人」をトランヒューマニスト、超人間主義者と言います。
ただこれには当然倫理の介する必要があることで、例えば遺伝子工学、出生前診断、幹細胞研究も「人間はどこまでやっていいのか?」という問題は常に付きまとい考えねばならないことです。
このトランスヒューマニストの思想の果てはナチスの優生思想、民族浄化、ホロコーストまで行きついていってしまうからです。
ちなみに原作の細菌兵器はただ単に人を殺すのではなく「人口の3分の1を生殖不可能にする」と一歩踏み込んだ細菌兵器だったんですよ。
インフェルノのいう「地獄に堕ちる人」はあなたです
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さてここで質問です。
あなたは天国に行けると思いますか?地獄に堕ちると思いますか?(あ、そんなの信じてないしどーでもいいよって方は煉獄ですよw)
ボッティチェリがダンテ神曲を忠実に再現した「地獄の見取り図」を見てみましょう。
アイスクリームのコーンのような形ですが、下に行けば行くほど地獄の闇は深くなります。
神曲では生前犯した罪の度合によって9つの圏谷に振り分けられます。
ちなみに最下層の大魔王領域には3人だけがいるとされ、イエスを裏切ったユダ、カエサルを裏切ったブルートゥス、カッシウスです。
さて、「あなたが地獄に堕ちるか否か問題」ですが、これはダン・ブラウンの原作を見てみましょう。
ダン・ブラウンは1ページ目に、
地獄の最も暗きところは、倫理の危機にあっても「中立を標榜する者たち」のために用意されている。
と難しい言葉で書いていますが、これはダンテ地獄篇の引用で元のイタリア言語では「暗い」ではなく「暑い」となっています。
ジョン.F.ケネディ大統領が引用したため有名になった文でもありますね。
肝心のこの難しい文の意味ですが、映画インフェルノで「中立な人」とは「社会・倫理的に何かする必要があるときに何もしない人」のことを指します。
今世界は社会・倫理的に何かする必要がある問題なんて山ほどあります。
でも「今あなたは何かしていますか?」と言われると「YES」と答える自信がありません。
「えーまー、こうやってインフェルノのレビュー書いて一応世にその大切さを訴えてるしー(モジモジ)」なんて言い訳したところで偽善の罪に定められ更なる第8の圏に落とされそうです…。
本作のテーマ人口問題に関しても「じゃあ何をすればいいの?」と言われても何やっていいかわかりません。
ただ、311の時の私の教訓だけを最後に私の視点として最後に伝えたいと思います。
4.映画「インフェルノ」ライターしおりの視点
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311が起きた当時、私は名前を言えば誰でも知っているであろう某人道支援団体に勤めていました。
団体が募金を募ったところ、ウン十億という巨額の募金が集まりました。
私はすぐに宮城チームに配属され、震災2週間後から宮城でしばらくの間活動することになりました。
もちろんそこに集まった中核のメンバーはこういった災害緊急支援のプロたちであり、私はペーペーの手伝い役です。
この宮城チームが毎日のように首を垂れてミーティングで話していたことは「集まった募金が使い切れない」ということでした。
もちろん募金は予算組みとして「311の震災のためだけ」に遣われなければいけません。
しかし緊急支援というのはこのとき私は初めて経験したのですが、「○○市は○○団体の管轄、○○市は○○団体の管轄」とまるで縄張り争いのように決まって(取って?)いき、支援団体が決まった区域は他の団体は手を出してはいけないという暗黙のルールがあります。
そして支援団体が実際に資金で物的・プロジェクト的援助をするには非常に高い壁があり、日本特有の縦割り行政の中で、県、市、町…どこと誰とどうやって物的支援を行えば支援が成立するのか、非常に煩雑な構造になっているんです。
しまいには「現金ばらまくか…」というため息さえ聞こえてきたミーティングですが、じゃあどの地域からどの地域まで、誰が対象で誰が対象じゃないか…なんて問題が出てきますよね。
このように当時現場というのは支援方法の選択し難い状況があり、私は初めてその状況を目の当たりにしました。
しかし、そもそも私が驚いていたことは想定をはるかに超える募金額と、4tトラック何十台分にもなる支援物資の量です。
「日本から日本」の支援だけあり新品同様の物しか送れないので、私は心苦しくその物資を大量廃棄しながら、正直に言えば311以前に海外に行っていた支援のしーーーんとした雰囲気とははるかに違う、支援をする側が妙に活気づいている日本に何とも言えない違和感を感じていました。
そのことを当時の彼氏に言ったところ、
募金するんだったら、もうちょっと今周りにいる人を大切にすればいいのにね。
このセリフを言われ、すべてがストンと腹落ちした気分になりましたね。
支援は自己アピールツールになってはいけないし、支援者をカリスマにするものでもないし、有事の際だけ心優しさを発動するというのも出し惜しみすぎてもったいないんです。
マザー・テレサは言いました。
あなたにはあなたのゴルゴダを見つけなさい。
「中立を標榜しないために何かする」ということは、つまりはそういうことなのでしょう。
5.映画「インフェルノ」をオススメしたい人
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↑水の都ヴェネツィアの光景がきれいですね~。
最後に、映画「インフェルノ」をオススメしたい人を考えてみましたのでご紹介しますね。
実話スピンオフ映画「9人の翻訳者 囚われたベストセラー」を観たい人
ロバート・ラングドン教授シリーズ、「ザ・トランスレーター(邦題『9人の翻訳者 囚われたベストセラー』)」を観たい人はオススメです。
「ザ・トランスレーター(9人の翻訳家 囚われたベストセラー)」は映画インフェルノ世界同時公開に向け、違法情報漏洩を防ぐため9か国の翻訳者がパニックルームのごとく密室に軟禁状態で翻訳するという前代未聞のエピソードを題材にしたミステリー映画。
ダ・ヴィンチ・コードの大大大ヒットを受けて、「インフェルノ」公開時に実施された驚くべきミッションですが、ここまでのヒット作となれば「誰を信頼するか」はダン・ブラウンが描いてきた秘密結社に入る級の難題だと思わされます。
予告編50秒頃のセリフ「冒頭の10ページをネットに公開した」が情報漏洩の真犯人なのか…?誰のセリフか気になりますね。
この映画は「インフェルノ」制作の裏話なので、「インフェルノ」の持つおぞましさと繊細さを把握してこそ楽しめる作品だと思います。
トルコという我らがアジアに初めて足を踏み入れた「インフェルノ」は多彩な意味で他作品の差別化があります。
神曲という「文章が暗号」なだけあり、かなり意味不明な点もあるのですが、紐解いていけばダンテらしさはいたるところに散らばっていますし、ダン・ブラウンの得意とするカトリック要素もたくさんあります。
そしてダン・ブラウン最新作「オリジン」(2018年刊)は今度はスペインが舞台。
ちらっと原作を読んだところ、ガウディのサグラダファミリア、グッゲンハイム美術館、ゴーギャンなどが素材と暗号になっており、しかもキャストは何とも現代的な「人工知能」。
ロン・ハワード監督&トム・ハンクスコンビによる映画化はまだわかりませんが、「ザ・トランスレーター」の映画背景や、「オリジン」が公開されるかも?!との期待も込めて予習の意味でもぜひ観ていただきたいと思います!
環境問題や気候変動に興味がある人
画像出典:http://www.aragonvalley.com/
環境問題、気候変動など地球規模の問題に興味がある人はオススメです。
いかにも怪しげな容貌の活動家ゾブリストではありますが、あまりにド直球に人口問題に疑問を呈するので何かを考えずにはいられません。
原作には地球破壊が如実に伝わるグラフが載っているので、海外サイトより類似グラフを拝借しました。
スマホだと字が小さいですが、急に右肩上がりになっている分岐点は「1950年」です。
日本は少子化少子化と言われるのであまりピンと来ないですが、グラフは「マジかよ」…と呟かずにはいられない凄惨な地球環境の現状が映し出されていますね。
ネイティブ・アメリカンの格言に、
土地は、先祖から受け継いだものではなく、子孫からの借り物である。
という格言がありますが、まさしくその通りなんですよ。
私もまた小さな子供がいる以上、彼らが生きることのできる環境を保証する責任を背負っています。
地獄の最深部に堕ちる「中立の者」にならないために、大人はこの責務をしっかり考えて行動すべきでしょう。
悲哀な物語が好きな人
画像出典:https://tsutayamovie.jp/
ダンテ「神曲」が悲哀な通り、悲哀な物語が好きな人には「インフェルノ」はオススメですね。
地球を救おうと思って救えなかった若い少女シエナは、原作では先天的な脳の変形障害があり、だからこそIQ200もあり、ゆえに絶対的な孤独だったんです。
そしてゾブリストも遺伝子工学分野を極めたが故、まるでダイナマイトを発明したノーベルのように自らの業に苦しみ、「何かしなければいけない」と行動を起こした根はいいヤツだったんです。
両者を結び付けたのは圧倒的な孤独です。
また、実在の人物ダンテとベアトリーチェの生涯結ばれぬ恋にも心打たれます。
神曲も<天国篇>になると「ダンテとベアトリーチェしかいない世界」が繰り広げられます。
それは生涯神曲を書き続けたダンテが、若くして亡くなったベアトリーチェに永遠ともいえる思いを寄せていた何よりの証。
今作ではラングドン初の恋愛物語が出てきますが、エリザベスとラングドンもまた結婚まで考えながらもキャリア選択の違いにより「生涯結ばれぬ恋」を選んだ男女。
恋愛は人類の歴史上変わらぬテーマですが、そんな切なさも湛えているのが映画「インフェルノ」の新たな魅力と言ってもいいでしょう。
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