こんにちは。エンタメブリッジライターのやぶなおです。
今回は、サイコサスペンス映画「ハンニバル(Hannibal)」についてご紹介します。
ハンニバルは、アカデミー賞5部門を受賞した大人気映画「羊たちの沈黙」の続編として、全米を震撼させたバッファロー・ビル事件から10年後の物語です。
しかし今作は、前作の「羊たちの沈黙」でクラリス・スターリングを演じたジョディー・フォースターが、原作とシナリオを見て、出演を断ったという逸話があります。
ジュリアン・ムーアが抜擢されましたが、あまりにもサイコパスでグロテスクすぎたシナリオは原作と変更され、まったく別の展開になりました。(それでも、かなりグロいです。)
つまり、映画「ハンニバル」は、原作とは別の完全オリジナルストーリーです。
今作は、前作と比べるとサスペンスな推理要素は少なく、サイコパスなグロさを全面的に出した作品です。
「人間の脳を食べる」、「飼い犬に顔面の皮膚を食べさせる」、「豚に人間を食べさせる」などなど…、文字にするだけでも鳥肌が立つような内容です。
なので、上記のような表現が苦手な人には難しいですが、前作以上にドロドロとした濃い部分を楽しむことができます。
それは、レクターとクラリスの人格や関係性についても同じことが言えます。
可愛げがあったクラリスも大人になってベテランFBIの冷静な女性となり、レクターもより猟奇的な行動をとります。
前作との心境の変化からは『人間の闇』の部分を学ぶことができます。
人間のドロドロとした闇の部分をこの映画を通して学んでいきましょう。(笑)
それでは、早速解説していきますね。
目次
1.「ハンニバル」の作品紹介
監督: リドリー・スコット(Sir Ridley Scott)
原作者: トマス・ハリス(William Thomas Harris III)
原作: ハンニバル(Hannibal)
出演者:ジュリアン・ムーア(Julianne Moore)、アンソニー・ホプキンス (Anthony Hopkins)、ゲイリー・オールドマン (Gary Leonard Oldman)、レイ・リオッタ (Ray Liotta)、フランキー・R・フェイソン (Frankie Russel Faison)
2.「ハンニバル」のあらすじ
画像出典:http://tenchi849.blog.fc2.com/blog-entry-21.html
続いては、「ハンニバル」のあらすじをご紹介します。
まだ映画を見ていない方は、ネタバレなしだけ見るようにしてください。
ネタバレありでは、衝撃的な事実や、物語のかなり具体的な流れを書いています。
映画を見終わった後に、ネタバレありを読むことで、より理解が深まるように書かせていただきました。
「ハンニバル」のあらすじ紹介(ネタバレなし)
全米中を震撼とさせたバッファロー・ビル事件から10年後。
レクターとの面談をヒントに犯人逮捕の手柄をあげたクラリス・スターリングは、FBIのベテラン捜査官となっていました。
彼女に与えられていた任務は、強暴な麻薬売人イヴェルダ・ドラムゴ逮捕の指揮をとることでした。
FBI、DEA(麻薬取締局)、ATF(アルコール・タバコ・火器取締局)、ワシントンD.C.警察の応援を得た中での大役です。
しかし、現れたイヴェルダは赤ん坊を抱えていたため、「作戦は中止!」と指示したクラリスですが、D.C.警察が言うことを聞きませんでした。
あっという間に、現場の魚市場は激しい銃撃戦となり、逃走をはかったイヴェルダの銃弾にさらされたクラリスは、やむなく赤ん坊を抱いたイヴェルダをを射殺してしまいます。
クラリスの失態は、ニュースで放映されてマスコミの非難を浴び、さらにはFBI内部からも厳しい追求を受けることになります。
クラリスは、「適切な判断を下したが無視され、大切な仲間を殺された」と言いますが、味方になってくれる人はいませんでした。
そんな彼女の窮地に目をつけた人物が、レクター事件の4番目の被害者で、唯一の生存者である、大富豪のメイスン・ヴァージャーでした。
かつてレクターの患者だった彼は、洗脳によって自らの顔の皮膚をはぎとり、飼い犬に与える苦行を受けました。
それ以来、顔面は皮膚移植で原型をとどめていない醜い姿となり、車椅子生活になってしまったメイスンは、レクターに復讐をするべく、レクターの行方を追っていたのです。
メイスンが最初に接触したのは、レクターが精神異常犯罪者病院に収容時代に雑用係をつとめていたバーニーでした。
バーニーからレクターとクラリスの特別な関係を聞き出したメイスンは、政界入りをめざす司法省のポール・クレンドラーを巧みに利用し、クラリスをレクター事件の任務につけました。
こうしてクラリスは、再びレクターに向き合う日々が始まるのでした……。
「ハンニバル」のあらすじ紹介(ネタバレあり)
画像出典:http://canalize.jp/5738.html
クラリスは、6年間雑用係を勤めていたバーニーの元へ会いに行きます。
メイスンから受け取ったレクターの証拠品の中にバーニーの筆跡に一致するものがあったからです。
バーニーを問いただすと、これまでのレクターの証拠品をコレクターに売っていたことが判明しました。
「羊たちの沈黙」では、優しく誠実な印象だったバーニーの裏の顔が見えた瞬間でした。
残りの証拠品だった、レクターとクラリスの録音テープをバーニーはクラリスに手渡し、一番印象的だった「クラリスに関するレクターの話」をします。
レクターは『宙返り鳩』の例を挙げ、クラリスについて語り始めたそうです。
鳩は地上めがけてバック・ターンで降りる。
ターンには浅い深いがあり、両親とも深いターンをする鳩だと、その子鳩は地面に激突して死んでしまう。
スターリング(クラリスのこと)は深いターンをする。
片親がそうでないことを祈ろう。
と言ったそうです。
場面は変わり、レクターはイタリアのフィレンツェでフェル博士と名前を変え、カッポーニ宮の司書の座になっていました。
司書の前任者は行方不明になっており、中年男性のレナルド・パッツィ主任刑事がレクターに会いに来て、「前任者の失踪について探しているので、もし遺書かその類のものが残っていたら教えてほしいのと、前任者の私物を渡してくれ」と頼みます。
パッツィ刑事は第一線の刑事として連続殺人犯を追っていましたが、失態を犯して小さな事件を担当するようになっていました。
パッツィ刑事は仕事の意欲を喪失し、若い妻・アレグラが遊びたがるので、金も必要としていました。
ある日、レクターの動向を追っていたクラリスの元に1通の手紙が届きます。
なんと、その手紙はレクターから届いたものでした。
ずっとクラリスの動向を気にしていたレクターは、イヴェルダ事件で傷を負ったクラリスに手紙を送っていたのです。
内容は、クラリスの失態を慰める言葉や、十大凶悪犯のリストにレクターが加わったことを知ったこと、社会への復帰を考えていることについて書かれていました。
早速、その手紙を鑑識に回しますが、封筒、便箋、インクは全て世界中の文具屋で簡単に入手できるもので、どこから出されたかも不明でした。
しかし、証拠品の入ったビニール袋からかすかな香りを感じ、調香師に分析してもらうと、香りの正体は主成分が竜涎香(りゅうぜんこう)の、テネシー・ラベンダー、羊毛の香りがする「ハンドクリーム」でした。
竜涎香はクジラの分泌液で、日本とヨーロッパで入手できるものですが、ハンドクリームは特注で調合された香りだと、調香師は断定しました。
日本とヨーロッパにレクターが潜伏している可能性が濃厚になり、クラリスはヨーロッパと日本の大手香水店の監視カメラ映像を、取り寄せました。
その取り寄せ先で、監視カメラ映像のダビングをしているのを見たフェル博士(レクター)担当のパッツィ刑事は、そこに先日会ったフェル博士(レクター)の姿が映っているのをたまたま見つけました。
理由はわからないが、FBIが映像を要求していると聞いたパッツィ刑事は、何か事情があるのかもしれないと勘づき、レクターを尾行して観察します。
自宅のパソコンでFBIのデータベースにアクセスしたパッツィ刑事は、フィル博士の正体がアメリカの十大凶悪犯のひとり、ハンニバル・レクターだと知りました。
レクターの懸賞金を調べていくと、「情報提供者に懸賞金300万ドル(約3億3700万円)」と書かれており、大金が手に入るかもしれないチャンスに動揺を隠せないパッツィ刑事は、震える手で連絡先を控え、公衆電話から情報提供の連絡をしました。
そのサイトは大富豪のメイスンに繋がっており、「前金で10万ドル(約1100万円)支払うが、条件として物体に残された指紋を提出しろ。確認されたら残額をスイスの銀行口座に振り込む」と言われたパッツィ刑事は、レクターの指紋入手を試みます。
しかし、レクターはカフェレストランでワインを飲む時も、さりげなく布のナプキンでワイングラスの持ち手を持ち、飲み終わった後の飲み口部分も拭き取るほど、自分の痕跡を絶対に残しません。
前任者の私物を取りに行ったときさえも、レクターが軍手をはめて作業をしたので指紋入手はできませんでした。
一筋縄ではいかないことを察したパッツィ刑事は、スリのニョッコを雇い、「わざと財布をスリとったと気づかせて、手首の腕輪をつかませるように」と指示をしました。
ニョッコにより、レクターの指紋入手は成功しましたが、ニョッコは犯行の瞬間にレクターに刺され、死んでしまいます。
レクターの凶悪さを実感する出来事でしたが、金属の腕輪は指紋一致が認められました。
レクターの居場所を教えろと言われたパッツィ刑事は、レクターがフェル博士としてフィレンツェにいることを伝えます。
その頃、FBIの閲覧履歴を見ていたクラリスは、「pfrancesco」というアクセスが集中しているのを見て、パッツィ刑事がレクター事件に関与しようとしていることに気がつきます。
パッツィ刑事のいる警察署に電話をし、これまでのレクターの凶悪な犯行を伝え、レクター事件に関わらない方がいいことを警告しますが、パッツィ刑事はどうしても手柄が欲しいため、電話を切断してしまいます。
クラリスの電話を切って、カッポーニ宮に急いで足を運んだパッツィ刑事でしたが、レクターは既にパッツィ刑事の行動を全て把握していました。
パッツィ刑事を気絶させて拘束した時に、パッツィ刑事の携帯が鳴りました。
レクターが電話に出ると、相手はクラリスでした。
久しぶりの声にレクターは喜び、クラリスもレクターの居場所を知ることになります。
しかし、パッツィの処刑中だったため「タイミングがよくない」と答えて電話を切り、レクターは、パッツィを質問責めにします。
パッツィ刑事の行動を全て言い当てられ、パッツィ刑事は祖先が処刑された方法と同じ刑で殺されます。
腹を切ると同時に、カッポーニ宮のバルコニーからパッツィ刑事を首吊り処刑にし、腹圧ではらわたが吹き出し、ぶら下がった遺体になり、周囲からは悲鳴が上がりました。
メイスンの手下がレクターの犯行を見ていましたが、レクターに殺されてしまい、レクターはそのまま姿を消しました。
レクター捕獲に失敗したメイスンは、レクターからクラリス宛の嘘の絵ハガキを作り、クラリスに証拠品を隠した罪を被せ、身分剥奪と停職処分に追いやります。
停職処分になって落胆し、自宅で眠りこんだクラリスの元にレクターから電話がかかりました。
クラリスに車に乗るように命令しました。
後ろに追尾車両があり、メイスンの手先も尾行していました。
クラリスはレクターを探すことに必死でしたが、なかなか見つけることができません。
しかし、クラリスを見張っていたメイスンの手下が、レクターを発見し、スタンガンで気絶させて、連れ去ります。
クラリスはFBIに知らせますが、謹慎中の身であるため、許可がおりません。
止むを得ず、クラリスは単身でメイスン宅へ乗り込む決意を固めます。
レクターは十字にはりつけにされ、顔にはマスクをはめられ、獰猛な豚に生きたまま徐々に食べさせられようとしていました。
これがメイスンの復讐方法でした。
自分を洗脳してコントロールした復讐に、レクターを拘束してコントロールを奪い、殺す残虐なやり方です。
クラリスは、単身で突入し、2人の護衛を倒し、レクターの拘束を解きますが、隠れていた3人と合い撃ちになり、肩を打たれて気絶してしまいます。
そして、多数の豚が血の気を感じて倉庫になだれ込みました。
豚たちは血の匂いに反応して、倒れた男たち、そしてクラリスに襲いかかります。
しかし、レクターが間一髪のところでクラリスを救出します。
予想外の展開に怒ったメイスンは、コーデルに銃を取って来てレクターを殺せと言います。
しかし、銃は豚の群れの中にあり、コーデルは頑なに拒みました。
レクターはコーデルとメイスンの関係性が悪いことに気がつき、「コーデル、メイスンを突き落とせ。俺のせいにしろ」と言います。
コーデルは一瞬悩みましたが、これまでの苦痛だった介護から解放されると思うと、レクターの言う通り、メイスンを突き落とし、豚の餌食にしました。
レクターはその場を去り、すぐさまクラリスの肩の傷を手術をします。
クラリスは一瞬その姿を見ますが、麻酔の効果ですぐ眠ってしまいました。
場面は変わり、クレンドラーは休暇で別荘に戻ろうとしていました。
別荘に入ったクレンドラーは、キッチンの机の上にケーキがあることを発見しますが、背後からレクターに布で薬物をかがされ、気絶します。
クラリスは麻酔から目覚めると、黒いイヴニングドレスを着せられていました。
麻酔のモルヒネの効果でふらふらと歩きながら部屋を出たクラリスは、すぐに警察に通報します。
下の階に降りながら武器になるものを物色したクラリスは、スノードームを握ってレクターが料理をしているキッチンに入りました。
そこには野球帽をかぶったクレンドラーがテーブルに座っており、横にはレクターが立って料理をしていました。
「クラリス、君は休んでろ」と言われ、モルヒネでふらふらしていることもあったため、テーブルに座ります。
しかし、同じテーブルに座っているクレンドラーの様子が、どこかおかしいのです。
喋り方がゆっくりで、目の焦点が合っておらず、知恵遅れのような反応をしています。
「私は無礼な奴が嫌いだ」と言ったレクターは、クレンドラーの野球帽を取ります。
クレンドラーは頭に一周するように切れ込みが入っていました。
レクターが切り口にナイフを入れ、頭蓋骨を外すと、脳がむき出しになります。
脳は痛みを感じないようで、レクターはクレンドラーの脳膜を剥ぎ、左前頭葉の脳をひとすくいすると、焼き始めました。
クレンドラーは「いい匂いだ」と言い、自分で自分の脳を食べます。
その一部始終を見たクラリスは、あまりの光景に吐き気を催しますが、レクターを止めに行きます。
レクターは、必死で逃亡を邪魔しようとするクラリスを冷蔵庫に押し付け、クラリスの髪の毛を冷蔵庫の扉に挟み、取っ手を壊すことで、身動きができないようにします。
レクターは「『私を愛してるならやめて』と言え」と強要しますが、クラリスは「死んでも嫌」と答え、鼻に噛みつく振りをしますが、「それでこそ君だ」と言ってクラリスにキスをします。
クラリスはその隙に、レクターの手首に手錠をかけました。
「面白いことをするじゃないか」とレクターは笑い、手錠の鍵を渡すようクラリスに迫りますが、クラリスは渡そうとしません。
警察の到着まで時間がないため、レクターはすぐに説得をあきらめました。
そして、肉切り包丁を片手に、「手首の上がいい? 下かね? 痛いぞ」と言って、思い切り振りかぶりました。
少し時間が経って、警察が到着した頃には、クラリスが湖のそばにいました。
腕はしっかりと残っており、無事です。
レクターは、左手に三角巾をつけて機内にいました。
レクターはクラリスではなく、自分の手首を切断することで手錠を外していたのです。
レクターの隣の席に座っているアジア系の少年は、物珍しそうにレクターの弁当を見ています。
「何か食べてみたいか?」とレクターが聞くと、少年は白色の白子のような物体を示します。
それは、レクターが料理をしていたクレンドラーの脳でした。
レクターは「君の母も言うだろう。新しいものを食べてみることが大事なのよ、とね。」と言うと、スプーンですくって少年に差し出しました。
このシーンを最後に映画は幕を閉じました。
3.「ハンニバル」の見どころ
出典:http://canalize.jp/5738.html
続いては、「ハンニバル」の見どころを紹介していきます。
この映画は、映画を見るだけでは本当のメッセージ性を知ることはできません。
映画だけの見どころはもちろん、原作も踏まえた見どころを読んでいくと、よりこの映画を楽しめます。
ハンニバル・レクターが言った「深く宙返りする鳩」の意味について
バーニーとクラリスが語るシーンでこのような表現がありました。
当時訓練生だったクラリスのことを、博士はこう言っていたと言います。
「彼女は深く宙返りする鳩だ」と。
鳩は高く飛んでから地上へターンする癖があり、それには深い浅いがあるそうです。
そして両親共に深いターンをする鳩だと、その子供は地面に激突して死んでしまうのだそう。
博士は「彼女の片親が深いターンをする鳩じゃないことを祈る」と言っていました。
これは、レクターがクラリスの将来への興味の比喩でした。
クラリスは、その強すぎる正義感ゆえに若くしてFBIで名声を上げ、そして今回のイヴェルダ事件で一気に地へ落ちました。
クラリスの最愛の父親は、仕事中に殺されていました。
クラリスの母親の死因は語られていませんが、もしも、母親も同じような死に方だったならば、おそらくクラリスもそうなってしまうであろうということをレクターは話しています。
「これ以上彼女が落ちるのか、そうではないのか。」レクターがクラリスに特別な興味を持つのはそこのようです。
レクターとしては、クラリスを殺す気はなく、どちらかというと今後も生き続けて欲しいと思っているようですね。
映画の最後に自身の腕を切り落としたのも、レクターがクラリスを大切に見守りたいと思っているからだったのでしょう。
ベテランFBIになり、冷静な人格に変わってしまったクラリス
画像出典:http://claif.blog.fc2.com/blog-entry-124.html
「羊たちの沈黙」では、日常的に男からの視線を感じながら生活しているクラリスの姿がありました。
前作では、優しく受け流すような可愛らしい対応だったのですが、今作ではすっかりベテランFBI女性といった感じで、クレンドラーからの視線を感じると、このような返答を返します。
あなたと話すときは、あなたの方を見て話します。
遠回しに「こっちを見るな」と言わんばかりの冷たい対応に、思わず悲しくなってしまった方もいるのではないでしょうか。
ジョディーフォースターから、ジュリアン・ムーア演じるクラリスに変わったこともあり、もはや別人のような風格です。
今作のクラリスは、心ここに在らずといった感じで、レクターと心を通わせることも映画の中ではありませんでした。
熱血少女から冷静な大人の女性に変わってしまい、10年という月日が経ったことによって、クラリスの心境も変わってしまったのでしょう。
実は、楽しみにしていた?ヴァージャーのレクターへの思い
ヴァージャーは、レクターへの思いとして、「私は感謝している」、「あの時楽しんでいた」、「心から繋がった気がした」と話していました。
このことから、ヴァージャーは、本当はレクターを殺す気はなく、拘束して痛ぶって楽しみ、自分も一緒に痛ぶられてもう一度あの快感を得ようとしていたのではないかと考えられます。
だから、同じくレクターと心を通わせていたクラリスにあえて厳しい思いをさせ、レクターを引き寄せたのでしょう。
そういう意味では、レクターの一言によってヴァージャーは豚の群の中に落とされたため、ある意味本望だったとも言えるでしょう。
なぜ、レクターはクラリスに脳を食べさせなかったのか?
映画の終盤にてクレンドラーの脳を食べるシーンがありますが、「なぜ、クラリスに脳を食べさせなかったのか」というものが疑問として残るでしょう。
「羊たちの沈黙」のレクター博士とクラリスの関係性から考えると、レクターはクラリスに脳を食べさせてもおかしくないからです。
実は、この記事の冒頭でも話したように、原作とストーリーが変わっており、肝心なラストシーンが映画ではすり替わっているからです。
つまり、原作では、レクターとクラリスか、クレンドラーの脳を食べながら楽しい会食をしているのです。
映画では、悪趣味でグロテスクすぎたため、ラストシーンが穏やかなものに変えられてしまったため、本来の「ハンニバル」のメッセージ性は、映画だけでは理解することができません。
見どころの解説にもあったように、映画『ハンニバル』のクラリスは、ただの冷酷なFBI捜査官になってしまい、前作のようにレクターに「共感」の感情を抱いていません。
レクターは、クラリスにキスしたことによって愛の感情を抱いていると思われがちですが、原作では違うのです。
「羊たちの沈黙」では、監獄に入っていたレクターが、クラリスのトラウマを見抜き、彼女をカウンリングして、彼女が夢の中で苦しめられていた羊たちの叫びを沈黙させるという物語でした。
2人の関係は「愛」ではない、不思議な関係性で結ばれていたのです。
クラリスは、自分の心の中を打ち明けることによって、レクターに癒され、そこには「共感」という特別な感情が生まれました。
この「共感」という感情が、映画「ハンニバル」では、ラストシーンが変わってしまったことにより、失われました。
レクターとクラリスが脳を一緒に食べるという行為は、「ハンニバル」の2人の関係性を表す「共感」の行為でした。
「羊たちの沈黙」では、クラリスは凶悪犯罪者のレクターに自分の秘密を打ち明けたばかりではなく、精神的な共感を得るという危ない一線を超えています。
レクターがクラリスに共感するという行為でした。
その「共感」の感情をより深くまで突き詰めると、レクターとクラリスが一緒に脳を食べるということになります。
レクターの人肉嗜好をクラリスが共感するのです。
「羊たちの沈黙」でレクターはクラリスを癒し、「ハンニバル」ではクラリスがレクターを癒すという物語でした。
映画の中では、どうしても表現できなかった大切なメッセージ性は小説に込められていたのです。
4.ライターやぶなおの視点から見た「ハンニバル」
画像出典:http://canalize.jp/5738.html
「羊たちの沈黙」では、凶悪犯罪者のレクターにトラウマを克服してもらい、クラリスが光に導かれる物語でしたが、「ハンニバル」はその逆で、闇に導かれる物語でした。
映画冒頭のドラムゴ事件の失敗によって、赤子を抱いた犯人を射殺し、仲間の捜査官にも犠牲者を出してクラリスは謹慎処分を受け、失意のどん底に落ちました。
そんな彼女の失敗体験、彼女が精神的なダメージを受けていたことが、ラストシーンのレクターの心理的接近を思わず受け入れてしまうという、非常に恐ろしい闇への導きだったのです。
これは、失恋した女性に悪い男性が優しく歩み寄ってあげて、その後に付き合ってしまうことに似ていますね。
他にも、パッツィが「金への執着」によってレクターに歩み寄ってしまったこと、バーニーがレクターの証拠品をこっそり売っていたことも、お金という欲望をちらつかされた「闇への導き」でしょう。
このように、「ハンニバル」からは「闇に導かれる人の物語」がわかります。
自分に余裕がないとき、人は明らかに辞めたほうがいいことでも、正しい判断ができなくなってしまいます。
この映画を見た方は、自分が物事を判断するときに「闇に導かれていないか?」を意識してみてくださいね。
5.「ハンニバル」はこんな人におすすめ
画像出典:http://www.reviewanrose.tokyo/article/446323470.html
まずは、「羊たちの沈黙」を見てから見られることをオススメします。
「ハンニバル」はR15指定で、グロテスクなシーンも多いため、苦手と感じる方もいるかもしれません。
ただ、日常を退屈に感じており、刺激を欲しているような方には特にオススメできます。
サイコパスや、猟奇的な映画が好きな人
「ハンニバル」は、かなりグロテスクなシーンが出てきます。
とにかく、刺激的なシーンを見たい!という方には、オススメできます。
アンソニー・ホプキンスの演技は、前作を超えて残虐性を増しており、前作が苦手だと思った方は絶対に見ないほうがいいレベルでグロテスクです。
著者は、夜寝る前にこの映画を見て本当に後悔したほど、ラストシーンはおぞましいです……。
映画の考察が好きな人
「ハンニバル」では、映画の細かい部分に謎が残されたまま、終わってしまいます。
考察が好きな人にとっては、考える要素が満載なのですごく楽しむことができます。
考察の答えは、原作の小説「ハンニバル」を読むことで、より納得することができるため、映画「ハンニバル」を見た後は、ぜひ小説を見ることをオススメします。
映画との物語の違いも含めて、楽しむことができます。
「最近、気持ちに余裕がないな」と思う人
「ハンニバル」では、多くの登場人物が闇に導かれています。
反面教師のような感覚で登場人物の闇落ちを見ることで、自分は気をつけようと思えるので、余裕がないと感じている人にはぜひ見ていただきたいです。
余裕があるとき方でも、こうはならないでおこうと思えるので、学びにしてみてください。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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