ネタバレあり『グエムル漢江の怪物』はどういう映画?怪物の正体を考察!

こんにちは!

エンタメブリッジライターのriezoです!

カレーを食べた後のお皿、そのままジャーっと水で流す派ですか?

それとも一度キッチンペーパーなどで拭きとってから洗う派?

一度拭き取ってから洗う方が洗剤の量も少なくてすむし、排水も汚れませんよね。

私たちは毎日洗濯したり食器を洗ったりしていますが、洗剤や汚れが混じったいわゆる「汚水」がそのあとどこにどのように流れて行っているかなんて、普段気にもとめていません。

私たちが夕飯の後片付けを終えてゴロゴロテレビを見ているころ、家庭から出た排水は下水管を通り、下水処理場できちんと処理されて川に流されていきます。

では工場などから排水される産業排水は?

こちらもきちんと決められた処理方法で適切に処理されています。

無毒化できない毒性の強い薬剤などを捨てるときは、流しにザバーッなんてことはもちろんなく、専門の処理施設に運ばれて処理します。

でも、もしそういう決まりを無視して毒物を川に流してしまったら・・・。

前置きが長くなりました。

今回レビューする「グエムル-漢江の怪物-」は、韓国の米軍基地から不法に廃棄されたホルムアルデヒドが、漢江という川に流れ込んだ結果、川の生態系に影響して怪物が生まれてしまった、というモンスタームービーです。

監督はアカデミー賞受賞監督のポン・ジュノ監督。

主演は、ポン組(って言っていいのかな)でお馴染みのソン・ガンホです。

一見ワーワーとした怪獣映画のようでもありますが、きっちり風刺的なメッセージも盛り込まれている作品。

ポン・ジュノ監督自身も言っているように、2000年に駐韓米軍による漢江への多量の毒物放流が問題となった「龍山基地油流出事件」が契機となって「グエムル」は作られました。

環境汚染による怪獣発現の映画というと、ポン・ジュノ監督も影響を受けたというゴジラを思い出します。

しかしあちらがゴジラ対国家なのに対し、こちらはグエムル(韓国語でモンスターの意味)対パク家の人々という、いち民間人と怪獣の戦いが中心。

しかも、主人公のカンドゥはかなり情けないキャラクター。

ポン・ジュノ監督は、インタビューで怪獣が現れたことによる人々の反応を描きたかったとも言っています。

図らずも新しいウィルスで世界中が混乱している今、「分からない脅威」に対して人はどう動くべきなのか。

「グエムル-漢江の怪物-」を観ると何かヒントが分かるかもしれません。

それではさっそくレビューしていきましょう!

ちなみにグエルムで親子を演じたソン・ガンホとコ・アソン。

この後のポン・ジュノ監督作品「スノーピアサー」でも再び親子役で共演しています。

ちょっと大人になったアソンちゃんが可愛いですよ。

環境問題と格差社会を描いた「スノーピアサー」のレビューはこちらから!

ネタバレあり!映画「スノーピアサー」絶望の先に見えたのは希望か不安か

1.「グエムル-漢江の怪物-」の作品紹介

公開日:2006年9月2日(日本)
監督:ポン・ジュノ
脚本:ポン・ジュノ
出演者:ソン・ガンホ、コ・アソン、ピョン・ヒボン、パク・ヘイル、ペ・ドゥナ他
受賞歴:青龍賞にて、最優秀作品賞受賞。大鐘賞にて、最優秀監督賞受賞。アジア・フィルム・アワードにて、最優秀作品賞受賞。アジア太平洋映画祭にて最優秀編集賞、最優秀音楽賞、最優秀助演男優賞(ピョン・ヒボン(朝鮮語版))受賞。ファンタスポルト国際ファンタジー映画賞にて、最優秀監督賞受賞。シッチェス・カタロニア国際映画祭にて、最優秀視覚効果賞、オリエント・エクスプレス賞(ポン・ジュノ)受賞。

2.「グエムル-漢江の怪物-」あらすじ


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怪獣がなんとも言えないフォルムですが、スピード感は抜群です。

怪獣の尻尾にからめとられるヒョンソ(コ・アソン)の場面は予告編でもおなじみですが、果たして命は助かるのか?!

目の前で娘を奪われたカンドゥ(ソン・ガンホ)の悲痛な叫び声が響きます。

ニューヨークタイムスも「今年のカンヌ国際映画祭最高の映画だ」と絶賛した「グエムル-漢江の怪物-」(実際受賞はしなかったけど)のあらすじを、ネタバレなしとネタバレありでご紹介していきます!

「グエムル-漢江の怪物-」のあらすじ(ネタバレなし)


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2000年、駐韓米軍第8部隊。

ヨンサン基地内の霊安室から大量のホルムアルデヒドが不法に捨てられ、漢江に流れ込んだ。

アメリカ人の軍医に指示された韓国人の助手キムは、漢江に毒物を流すことは規定違反だと訴える。

しかし「これは命令だ」と一蹴され、言われたとおりに100本以上もあるかと思われるホルムアルデヒドをすべて排水口に流していった。

それから2年後、漢江では釣り人によって奇形の生物が目撃された、

またある男は、川の中に大きな黒い物体がいると言い残して漢江に身を投げ、その後無残な姿で発見される。

その漢江の河川敷で売店を営む、パク・カンドゥ(ソン・ガンホ)と父親のヒボン(ピョン・ヒボン)。

カンドゥには、逃げられた妻との間に愛娘ヒョンソ(コ・アソン)がいた。

カンドゥは金髪プリン頭にトレーナー姿で、店番をしてもいつも居眠りばかりしているダメ人間。

かたや娘のヒョンソはしっかり者の中学生。

カンドゥはヒョンソをとても大事に育てていた。

いつもと同じ、あるのどかな休日。

ヒョンソは、カンドゥの妹であり叔母にあたるナムジュ(ペ・ドゥナ)が出ているアーチェリーの大会をテレビで観ていた。

ところが外では、大きなナマズのような生き物が漢江に現れ、次々と人を襲っていたのだった。

「グエムル-漢江の怪物-」のあらすじ(ネタバレあり)


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ここからネタバレありです。

パク家の家族をもう少し紹介しておきましょう。

ナムジュはパク家の末娘で、アーチェリーの選手です。

カンドゥには末の妹のナムジュのほかに、ナミル(パク・ヘイル)というすぐ下の弟がいました。

ナミルは大学を出ているけれど、現在失業中で酒浸り。

家族みんながヒョンソを可愛がっていました。

さて、ヒョンソがテレビを観終わって家の外に出ると、そこは阿鼻叫喚の世界。

怪獣に頭から喰われてしまった人もいて、逃げ惑う人々がパニックになっています。

カンドゥは見知らぬアメリカ人の青年と一緒に怪獣に挑んでいましたが、歯が立ちません。

ヒョンソには、何が起きているのか状況を把握できませんでした。

ヒョンソの姿を見つけたカンドゥは手をつかんで一緒に逃げますが、転んだはずみで手を離してしまいます。

再び起き上がって走り出すカンドゥ。

しかし振り向くと、自分が手を握っていたのは知らない中学生女子でした。

えーー!ヒョンソどこ!?

そう思ったカンドゥの目の前で、ヒョンソは後ろから襲ってきた怪獣に連れ去られてしまいました。

ここからがいよいよ物語のスタートです。

怪物の犠牲になった人々の遺影が並ぶ合同葬の場。

ヒョンソの写真も飾ってあります。

そこにアーチェリーの試合でメダルを獲ったナムジュと、酒に酔ったナミルもやって来ました。

家族みんなで泣き崩れます。

ナミルは、ヒョンソと間違えて知らない子供の手を引いて逃げていたカンドゥを責めます。

床でもんどりうって泣きくずれているパク一家。

その姿をカメラに収めるマスコミたち。

その横で事務的に駐車違反の運転手を呼び出している警官。

なんだこのカオス。

そしてこんな場でもカンドゥはひとしきり泣いたあと、ぐーぐー寝てしまうのです。

ところがここに防護服を着た人々が登場。

怪物が現れた場所にいた人、またはその人と接触した人はいないかと探しにきます。

怪物は謎のウイルスを持つホストだというのです。

カンドゥは怪物を倒そうと挑んだわけですから、まさに怪物の濃厚接触者。

パク一家は全員病院に連行されてしまいます。

しかしその晩、カンドゥの携帯にヒョンソから着信が!

でも電波が悪くてすぐに切れてしまいました。

ヒョンソはまだ生きている!

そう知ったカンドゥたちは家族総出で病院を脱走し、ヒョンソを探しに行きます。

全財産をはたいて私立探偵から車や拳銃、地図を買い取り、一家のヒョンソ探しが始まりました。

ヒョンソが連れて行かれたのは地下の排水溝。


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怪物はいったん獲物をつかまえたあと、すぐに食べずに自分の巣に持ち帰るという習性があるようです。

排水溝にはヒョンソのほかにも何人か人が倒れていましたが、生きていたのはヒョンソだけ。

そんななか、一組の幼い兄弟が捕まって連れてこられました。

兄のセジンは息絶えていましたが、弟のセジュは生きています。

2人は孤児で、空家になった売店からお菓子を盗んだ帰りに怪物に捕まってしまったのです。

ヒョンソはセジュを連れて、排水溝の側溝に隠れました。

携帯はつながらず、どうしていいか分かりません。

一方ンドゥたちはウイルスの保菌者として指名手配され、テレビでも大々的に報じられてしまいます。

追っ手から身を隠しながらヒョンソを探すさなか、怪物と遭遇する一家。

カンドゥたちは怪物に向かって銃を撃ちますが、なかなか倒せません。

それどころか、カンドゥの父親のヒボンが怪物に殺されてしまいました。

さらにカンドゥも軍隊に取り押さえられ、再び病院に収容されてしまいます。

カンドゥやナムジュとはぐれてしまったナミルは、大学の先輩の助けでヒョンソの携帯の電波から居場所を突き止めようとしていました。

するとヒョンソはウォニョ大橋の下水道にいることが分かりました。

ところがそのとき警察があらわれ、ナミルは警官に囲まれてしまいます。

実はパク一家にかけられた懸賞金を狙った先輩が、警察に協力していたのです。

なんとか警察を振り切ったナミルでしたが、体力も限界。

はぐれてしまったナムジュにヒョンソの居所をメールすると、気を失ってしまいます。

ナムジュはというと、なぜか橋の橋脚のなかに逃げ込んでいました。

ナミルからのメールを見たナムジュは、ヒョンソの居所をカンドゥにメールするとウォニョ大橋に向かいます。

病院ではカンドゥがヒョンソの居所が分かったと訴えますが、誰も取りあってくれません。

怪獣はウイルスのホストだと発表されていたものの、いまだにウイルスは見つかっていませんでした。

本当はウイルスなど存在しなかったのです。

しかしなんとかしてウイルスがいることを実証したい医者たちは、カンドゥの頭の中にウイルスがあるはすだと無理やりこじつけ、カンドゥの頭を手術します。

手術が終わると、カンドゥは朦朧としながらも看護師を人質にとって病院から逃げ出しました。

道端で気を失っていたナミルは、目を覚ますとそばにいたホームレスに手伝ってもらい、火炎瓶を用意してウォニョ大橋の下水道に向かいます。

そのころ政府は、怪物を倒すために「エージェント・イエロー」という化学兵器を散布しようとしていました。

街では人権団体がカンドゥの解放を求めて大規模なデモを行っています。

排水溝のヒョンソは、セジュを守りながらなんとか下水道から脱出する方法を考えていました。

連れてこられた人々の洋服をつなぎあわせてロープを作り、怪物が眠っている隙に排水溝から外に出ようと計画します。

しかし怪物は目を覚まし、ついに2人は怪物の口に飲み込まれてしまいました。

やっとのことでカンドゥが排水溝に到着しますが、時すでに遅し。

ヒョンソたちをくわえたまま走っていく怪獣を目にします。

カンドゥは怪獣を追って漢江の河岸までやって来ました。

ナミルとナムジュも駆けつけています。

ウォニョ大橋のたもとにはデモを行っている人々がたくさん集まり、制圧しようとする警官たちと押し合っています。

そのときエージェント・イエローが撒かれました。

黄色い毒煙が一面を覆い、煙を浴びた人々は体から血を流しながら苦しんでいます。

怪物も毒煙を浴びて倒れました。

カンドゥが倒れた怪物の口をあけるとヒョンソはすでに飲み込まれており、かろうじて怪物の歯をつかんでいた手だけが見えます。

カンドゥはヒョンソの手を掴んで力いっぱい引っぱりました。

出てきたのはセジュをかばうように抱きかかえたままのヒョンソ。

しかしヒョンソはすでに息絶えています。

悲しみに打ちひしがれたカンドゥたちは怪物を倒しに向かいます。

ナミルは火炎瓶を投げつけますが、なかなか怪物を倒せません。

そのとき一緒にいたホームレスが、怪物に向かってガソリンをかけました。

ごくごくとガソリンを飲んでいる怪物に向かって、ナムジュがアーチェリーで火炎瓶の火種を放ちます。

火に包まれた怪物にカンドゥは鉄パイプでとどめを刺し、ついに怪物は息絶えました。

カンドゥは倒れているセジュに向かって

お前は誰だ?

ヒョンソと一緒にいたのか?

ヒョンソを知っているのか?

と問いかけます。

セジュは生きていました。

冬になり、漢江の河岸にも雪が降っています。

家の中から暗い夜の闇をじっと見つめていたカンドゥは、何かに気づいて銃を構えました。

しかしそこには何もいません。

暖かい家のなかではセジュが眠っています。

カンドゥはセジュを起こすと、2人はまるで家族のように夕飯を食べ始めました。

3.「グエムル-漢江の怪物-」の見どころ


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「グエムル-漢江の怪物-」は、タイトル通り怪物が出てくるモンスター映画ですが、いろいろな要素が盛り込まれている映画でもあります。

どんなアプローチから見るかによって、作品自体の印象も変わってくるかもしれません。

4つのアプローチから映画の見どころをご紹介しましょう。

怪獣映画として観る


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これまでにも怪獣を扱った韓国映画はいくつかあるようですが、ここまで話題になったのは、この作品が初めてです。

韓国には、日本のような怪獣映画という文化が根付いていないからです。

ポン・ジュノ監督は、日本のゴジラやウルトラマンシリーズに影響を受けていました。

そしていつか本格的な怪獣映画を作りたいと思っていたそうです。

そうして完成したのが、この作品。

グエムル(怪物)は、川の生物が奇形化したものという設定。

なんで奇形化したのか、ストーリーの中で理由ははっきり言われていませんが、米軍基地から流されたホルムアルデヒドが原因なのは確かです。

放射能が原因で生まれたゴジラと共通する点がありますね。

グエムルの形状を見てみましょう。

魚が変異したらしく、見た目はナマズのような形です。

水陸どちらもイケるようで、しかも動きが速い!

足が生えているので走れるし、腕も生えていて腕力も強い!

新体操の選手か中国の雑技団かというくらいに身軽。

橋の橋脚にうんていのようにぶらさがりながら渡ったり、鉄棒のようにくるりと回転したり自由自在に動きます。

そして人間を丸飲みしてしまう大きな口。

パカッと4枚の口先が割れると、中に鋭い歯が生えていて、その奥に口があるという二重構造です。

寄生獣とプレデターを足したみたいな感じで、なかなか良いんじゃないでしょうか。

確かにエイリアンやゴジラなどの特撮と比べると、B級感が漂うのは否めません。

でも、ひょっとするとここからさらに進化した怪獣映画が現れるかもしれません。

パニック映画として観る


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突然怪物が現れたことで社会に混乱を起こすパニックムービーという側面もあります。

カンドゥは怪物と濃厚接触した人物として、謎のウイルスに感染している人物にされてしまいました。

このウイルスに感染するのではないかという恐怖が世間に広まるのです。

ウイルスに感染しているらしいカンドゥには風邪のような症状があると報道されると、近くで咳をしている人に対しても感染を疑い警戒する。

人は未知のものに対して恐怖を抱きます。

怪獣の存在そのものに対するパニックではなく、見えないものに恐怖する人々の反応を描いているところが面白い。

ポン・ジュノ監督は怪獣に街を歩かせるのではなく、目に見えないウソのウイルスを街の中に蔓延させたのです。

家族の物語として観る


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「グエムル-漢江の怪物-」は怪獣映画ですが、派手な怪獣退治のシーンはほとんどありません。

カンドゥたちがやっつけるラストシーンぐらい。

そもそも怪獣に対して国や軍が対策をとっている場面がほとんど描かれていないのです。

では一体誰が怪獣と対峙してるのか。

それはカンドゥたちです。

怪獣に連れ去られたヒョンソを助けるためです。

そして、この映画はそこに焦点を当てて作られている作品。

パク家の人々のキャラクターとか、家族関係とか、みんなでご飯を食べるシーンとか。

ヒョンソが家族にとってどれだけ大切な存在なのか。

家族の物語と言って良いでしょう。

同様の映画に、シャマラン監督の「サイン」やスピルバーグの「宇宙戦争」があります。

地球外生物の襲来にあった家族がどうなったか、ということにスポットをあてて作られていました。

ゴジラやインディペンデンスデイのように、怪獣・エイリアンvs国家ではなく、怪獣vs普通の人。

怪獣との戦いではなく、家族の話にスポットライトを当てているのです。

導入文でも書きましたが、ポン・ジュノ監督は怪獣が現れたことによる人々の反応を描きたかったと言っていました。

グエムルが現れ、娘のヒョンソを奪われたことで、ダメ人間だったカンドゥは変わりました。

合同葬のシーンで、カンドゥの父親ヒボンは

おかげで家族全員が集まれたよ。

と言います。

孫が死んだのに何言ってんのと思いますが、ヒョンソを連れ去られたことで今までバラバラだった家族が一致団結したんです。

でも決して悲しいだけの話として描かれていないのもポン・ジュノ作品らしいところ。

カンドゥを馬鹿にするナミルとナムジュに、父親のヒボンが「カンドゥを馬鹿にするもんじゃない」と説教するシーンは、作品の中で一番面白いと思います。

アンチアメリカ映画として観る


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怪獣が生まれた原因は、米軍の遺体安置所から不法に流されたホルムアルデヒドです。

そしてこの毒物不法廃棄は、実際に2000年に駐韓米軍基地で起きていました。

監督は、この事件をきっかけに「グエムル」を作ることを決めたとのこと。

アメリカに対する批判が込めているのは間違いありません。

ウイルス壊滅に用いられた「エージェント・イエロー」は、明らかにベトナム戦争で使われた枯葉剤のコードネーム「エージェント・オレンジ」への皮肉です。

エージェント・イエローの黄色い煙を浴びた人たちが血を流して苦しんでいたことから、人体にも危険がある薬剤であることが分かります。

アメリカが作り出した(であろう)怪獣を、アメリカが開発した化学兵器で殺そうとする。

なんという皮肉。

しかし結局怪獣を殺したのはエージェント・イエローではなく、カンドゥたちの火炎瓶とアーチェリー、鉄パイプだったというところにカタルシスを感じます。

4.「グエムル-漢江の怪物-」riezoの考察


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いろいろな見方ができる「グエムル-漢江の怪物-」。

今パンデミックになっている新型ウィルスにも通じるものがあるかもしれません。

見えるものへの恐怖と見えないものへの恐怖

「グエムル-漢江の怪物-」は怪獣映画ですが、内容は怪獣がメインではなくそれをとりまく人々の話です。

怪獣の姿は恐ろしいですし、食べられてしまうという恐怖もあるので人々は皆パニックになります。

でも同時に別の不安も広まるのです。

怪獣にはウイルスがいるという風評が流されました。

そしてそのウイルスを保菌しているとされるカンドゥが恐れられます。

実際にはウイルスはいなかった、というオチなのですが、この映画の中では怪獣そのものの存在より、見えないウイルスに対して恐怖や不安を抱いてる人々が描かれているのです。

なぜ人は見えないものを恐れるのでしょう。

目に見えるものは観察できます。

観察できるということは相手を知ることができます。

しかし見えないものは、見えないのですからどんなものかを知ることができません。

どう自分を守ればよいのかも分からないのです。

防御する方法も、壊滅させる方法も分からない。

つまりコントロールできないということ。

そして見えないものに対しては、その存在を否定することもできないということです。

見えない=分からない恐怖は時に人々をあらぬ方向に暴走させます。

暴走してしまった人々のエネルギーは想像を超えます。

見えないものに対して一番恐れるべきは、そういう人間の集団心理なのかもしれません。

反米映画なのか?

この作品は反米映画であるとも言われています。

ジュノ監督も、2000年の龍山基地油流出事件が制作のきっかけになったと言っています。

ホルムアルデヒドの廃棄から生まれたというグエムルは、アメリカの脅威そのものとも受け取れますし、最後に散布されたエージェント・イエローはベトナム戦争での枯葉剤の散布を連想させます。

それに立ち向かうカンドゥたちは、単なるひとつの家族ではなく、韓国の市民だという見方もあるでしょう。

そんななかで最もアンチアメリカを感じたのが、アメリカ人科学者の描き方です。

いかにもという感じでインチキくさい。

狙ったのかたまたまなのか分かりませんが、そこはかとなく漂う偽物感と、悪意を感じるうそっぽさ。

個人を描くことで国家全体をディスる思惑なら成功していると言わざるを得ないかも・・・。

5.「グエムル-漢江の怪物-」をおすすめする人


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「パラサイト半地下の家族」がアカデミー賞を受賞してから、ポン・ジュノ監督の過去作品を見直してみようと思った方も多いのでは?

ジュノ監督数珠繋がりな方以外にもおすすめしたいのはこんな方です。

韓国版怪獣映画に興味がある人

韓国の怪獣映画ってどうよ?

そんな風に思っている方はぜひ観てはいかがでしょう。

日本のゴジラやアメリカのエイリアンとは、また一味違ったグロさがあります。

橋脚で「うんてい」する怪獣って初めて見た。

ハッピーエンドじゃ物足りない人

ハリウッド映画だったら、たぶんヒョンソは助かったでしょう。

そして家族全員抱き合って、カンドゥもダメ父から脱却。

王道といったら王道だけど、そういう予定調和に食傷気味の方は、「しっかり者で家族の大切な存在だった娘が死ぬ」というアンハッピーエンドを味わってください。

モヤモヤや不安を抱えている人

日頃の生活にモヤモヤや不安を抱えている人は、この映画を観てほしいです。

グエムルは、得体のしれない恐怖や不安を具現化しているのかもしれません。

でも最後はカンドゥたちが、きっちりやっつけてくれます。

映画を観る一つの醍醐味は、映像を通してひとつのカタルシスを感じられること。

怪獣への復讐をするカンドゥたちを通して、日頃のモヤモヤを吹き飛ばしましょう!

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