【あらすじネタバレあり】17歳のカルテの考察を10倍深くする神レビュー

17歳のカルテ

こんにちは!エンタメブリッジライターのしおりです。

今回は、1999年に公開され、アンジェリーナジョリーの出世作となった「17歳のカルテ」についてのあらすじと、この映画の見どころについて解説していきたいと思います。

では、早速始めていきましょう!

1.「17歳のカルテ」作品紹介

監督 ジェームズ・マンゴールド
製作総指揮 ウィノナ・ライダー、カロル・ボディ
出演者 ウィノナ・ライダー、アンジェリーナ・ジョリー、ウーピー・ゴールドバーグなど
受賞歴 アカデミー助演女優賞(アンジェリーナ・ジョリー)
ゴールデングローブ賞助演女優賞(アンジェリーナ・ジョリー)
全米映画批評家協会賞新人賞(アンジェリーナ・ジョリー)
脚本 ジェームズ・マンゴールド、リサ・ルーマー、アンナ・ハミルトン=フェラン
公開年数 1999年12月21日(アメリカ)
原作 スザンナ・ケイセン「思春期病棟の少女たち」
ジャンル ヒューマンドラマ

2.17歳のカルテのあらすじを紹介!

17歳のカルテ
(画像出典 https://www.allmovie.com/movie/v181272)

続いては、17歳のカルテのあらすじをお伝えしたいと思います。

17歳のカルテのあらすじ(ネタバレなし)

1960年代のアメリカは、ヴェトナム戦争激化や反戦運動、公民権運動、ウーマンリブ旋風などこれまでの価値観が崩れ、新しい時代へ突入する混とんとした世の中でした。

そんな中、高校卒業直後の主人公スザンナ・ケイセン(ウィノナ・ライダー)はアスピリン1瓶とウォッカ1本を一気飲みして自殺を図り、「境界性人格障害」と診断され1年間精神病棟で過ごすこととなります。

最初は病棟生活に抵抗があったスザンナだが、そこで出会ったティーンエイジャーの患者たちと交流を深めていきます。

中でも反社会性的人格の小悪魔的なリーダー、リサ(アンジェリーナ・ジョリー)との交友は、心の闇までえぐられるように深く、目が離せないんです。

スザンナはこの病棟でいかにして成長し、どうやって再び社会へ戻ったのか…?

「狂っているは私のほうか…?それとも世の中か…?」

「17歳のカルテ」はそんな命題を突きつけてきます。

17歳のカルテのあらすじ(ネタバレあり)

「17歳のカルテ」は、主人公スザンナ・ケイセンのアスピリン量服薬による自殺未遂から始まり、精神病棟入院、1年後に退院して社会復帰していくという1人の少女の成長物語を描いた映画です。

自殺未遂で入院したスザンナは「境界性人格障害」と診断され、その後アンジェリーナ・ジョリー演じるリサら女子病棟の患者たちと交流を深めていきます。

「境界性人格障害」とは、若い女性に多いと言われる「自己像や情緒不安定、自傷行為(リストカットなど)、希死念慮」を主症状とする疾患です。

空虚感や倦怠感を常に感じており、感情の浮き沈みが大きく衝動的な行動を起こす。

自信がなく、安定的な対人関係を築くのが難しいとされます。

ここの患者たちとつるんでいることが楽しくなったスザンナは、治療にはまったく積極的にならず、医師や看護師には反抗的な態度をとるようになりました。

そして、とうとうリサと病院を脱走します。

脱走後は、つい最近退院したばかりの過食症のデイジーのアパートに転がり込みます。

しかし、その夜リサがデイジーに詰め寄って喧嘩をふっかけて追い込み、デイジーは翌朝首を吊って自殺します。

友人を救えなかったことを悔やみ嘆くスザンナは、リサや患者たちとついに一線置き、自分と向き合う決意します。

精神科医にも積極的に心を開くようになり、自分に起きている問題を考察するようになりました。

その後も患者たちとすったもんだありながらも、着実に自立の過程をたどり、ラストは「快復した境界性人格障害」と診断され退院し、再び元の世界へ戻りました。

3.17歳のカルテ見どころ

17歳のカルテ
(画像出典 https://www.allmovie.com/movie/v181272)

続いては17歳のカルテの見どころについてお話したいと思います。

起承転結の「結」は自分で考える映画!

一見わかりやすいハッピーエンドのストーリーに見えるが、この映画ははっきりとした「起承転結」がありません。

実際この映画を観た人は

1回観たけどよくわからなかった…

と感想を残す人も多く、1度ではなかなか深い内容まで飲みこみづらいんです。

しかし、何度か繰り返し観ているうちに、ストーリーやキャストが何を言いたいのか?

この喧嘩や口論に何の意味があるのか?

この発言はどういう意味か?

などがじわじわと理解できてきて、観た人自身が自分の問題と重ね合わせたり、どうすれば今より楽に生きられるのか?とヒントを与えてくれたりします。

「17歳のカルテ」には起承転結の「結」の部分は「あなた自身で考えて!」というようなメッセージ性があります。

それはまるで、私たちが困難にぶつかって人生の岐路に立ったとき、

他人の言葉は助けになっても、実際にコマを進めるのはあなたしかいないのよ

といった演者からのメッセージのようですね。

アンジェリーナジョリー
(画像出典:https://www.allmovie.com/movie/v181272)

「正常」と「異常」の境界って何?

本作のテーマになるのは「境界」の話です。

なにしろ主人公スザンナにつけられた病名は「境界性人格障害」(英語ではBorderline Personality Disorder)ですから。

この病名を精神科医から告げられたとき、スザンナは

Borderline what and what?!(何と何の境界?!)

と医者に突っかかります。

この映画で境界とは、「正常と異常」「正気と狂気」「病院の外の世界と病院の中の世界」といったところでしょう。

正常と異常の定義なんて時代や場所によってうつろうものだし、永遠普遍に変わらないものなどありません。

だけど、大人になるということは、そんなうつろいやすい社会や価値の中でも、アイデンティティを確立し、自分の人生を自己決定していくことです。

思春期にさしかかった人は、大なり小なりこの狭間を揺れ動くものでしょう。

その狭間を極端に揺れ動き、自己像がはっきりせずにゆらゆらといつも陰鬱な気分にさいなまれているのが、本作の主人公スザンナの状態です。

そんなスザンナがいかにして快復したのか、そもそも「快復」とはどういう意味なのか…?

これはとても興味深いテーマで、それを一緒に考えていくことが見どころの1つです。

ウィノナとアンジーも実は精神を病んでいた…

ウィノナ・ライダーは、幼少期に親の離婚・再婚を経験し、「10代は自身も境界性人格障害だった」と告白しています。

彼女は万引き報道などでゴシップ欄を騒がせていたから「不安定さ」を持ち得ていることは本当なのでしょう。

12歳で女優デビューしてから、持ち前のキュートな容姿と演技力でスター街道を昇りつめていました。

スターであるがゆえに、「常に周りに見られている」という苦悩を思春期から過剰に体験していたようです。

また、本作で反社会性人格障害のリサを完璧に演じきったアンジェリーナ・ジョリーも幼少期に親の離婚を経験しており、10代は鬱状態で死ぬことばかり考えていたそうです。

「反社会性人格障害」とは、10~20代に多く、社会的なルールや他者の権利や感情を軽視し、喧嘩や暴力を衝動的に引き起こす疾患です。

他人の感情を理解することが困難で、平気で安全を脅かし、傷つけてしまいます。

今からは想像できないが、リストカット癖があったことも告白しています。

そのためか、アンジェリーナ・ジョリーは本作のオーディションの段階から「リサ」になりきっていたそうです。

うつろな目、投げやりな態度がまさに「リサ」そのものであり、リサ役に即抜擢されたと言います。

結果、アンジェリーナ・ジョリーは本作でアカデミー助演女優賞を受賞し、のち「トゥームレイダー(2001年)」など華々しいキャリアへはばたくこととなりました。

「なじむなよ」タクシー運転手が放った何気ない言葉が肝!

この映画のキーワードとなるセリフは

なじむなよ

でしょう。

「なじむ=子供の世界に留まる」ということです。

この言葉は、冒頭、スザンナを精神病棟へ送り届けるタクシー運転手がポロッと言うセリフです。

たった数分のシーンなのだけど、このセリフが「映画の肝」といっても過言ではないです。

「なじむなよ」とは、「精神病棟に心地よくなってはいけないよ」という忠告です。

なじむということは「狂気(だけど居心地のいい)世界に留まる」ことを意味します。

しかし、そんな忠告も虚しく、スザンナは病棟の患者たちとすっかり馴染みました。

セラピーにやる気もなく、まるで子供返りしたように大人に反抗的な態度をとるようになってしまいます。

この「なじむなよ」こそが、スザンナの人生を決める岐路の言葉です。

私たちの人生でも、そういうことってないだろうか?

「自分にとってよくないこと」「自分を破壊してしまう行動」だとわかっていても、居心地がいいからと居座ったり、やめられなかったり、拒絶してしまったり…。

「まとも」になることに、恐れさえ抱いてしまうかもしれません。

スザンナは、ついに病棟の看護師長に睡眠薬を飲ませるほどの問題行動を起こしてしまい、この病院でもっと威厳のある精神科医と面談することになりました。

そこでで突き付けられたのは、

「いるか?出るか?」
「正常か異常か?」
「自分の弱点をどうするか?それは弱点か?」

といった、スザンナ自身が引き裂かれている相反する2つの感情でした。

大人になるのには、「勇気」や「決断」も大いに必要なのだと思わせられます。

アンジェリーナ・ジョリーの魅力

この映画でもひときわ存在感があるのは、反社会性人格のリサを演じたアンジェリーナ・ジョリーです。

今でこそハリウッド女優というスーパーセレブの地位が確立されているが、17歳のカルテでは、まだスターに上り詰める前の若くフレッシュなアンジーがいます。

しかしそこにはすでに、他を圧倒する色気や迫力で溢れていて、目や口、眉毛の微細な動きや声のトーンが「リサ」を完璧に表現していて、アカデミー助演女優賞を受賞したのも納得です。

反社会性人格を演じているのに、どこか憎めないキャラクターに仕上がっています。

みずみずしい病棟の交友関係


(画像出典:https://www.allmovie.com/movie/v181272)

この映画で見逃せないのが、病棟の若い女性患者たちとのみずみずしい交友関係です

反社会性人格のリサ、空想虚言症(病的な嘘つき)のジョージーナ、過食症のデイジー、拒食症のジャネット、顔に火をつけたポリーなどです。

スザンナは確かに、患者たちとつるむことで一時的に成長が止まったが、ある意味で「自分が未熟だ」ということを鏡のように映し出して、気づかせてくれたのが彼女たちでした。

その意味で、病棟の患者たちはスザンナの自立を手助けしてくれたとも言えます。

退院時、スザンナは彼女たちを「大切な友達だった」と振り返ります。

みんな上手く生きられないけれど、異常なんじゃない、揺れが大きいだけ

そうなんです。

結局、このセリフが「自分はおかしいかもしれない」と思っているすべての人への励ましの言葉になると思います。

人は、特に10代~20代は誰しも不安定さを持ち得ているけれど、おかしいように見えるのは、その揺れがただ大きいというだけです。

スザンナやこの映画はそういう人を「受け入れるよ」「それでいいんだよ」と包み込んでくれるような優しさがあります。

映画に描かれなかった患者たちのその後

映画はスザンナの退院で終わります。

しかし、原作本にはその後の話まで書かれています。

70年代には少女たちのほとんどが退院したそうです。

ルームメイトで空想虚言症だったジョージーナは結婚して家庭を築き、あのリサもシングルマザーで子供を産み母親になりました。

わたしに子供がいるなんて、狂っていると思わない?

と冗談を交えて会話を楽しむ様子が原作本には描かれています。

スザンナの人生は、彼女ら抜きに語れないものになっているようです。

4.17歳のカルテをオススメしたい人

「17歳のカルテ」の舞台は、混乱期にある1960年代アメリカだが、今の日本だって決して万人が生きやすい世の中とは言えないでしょう。

ひきこもりや不登校、心の病で悩む人は多いです。

悲しいことだが、自殺率も先進国の中ではトップを争う高さです。

悩んでいるのは子供たちだけでなく、その親世代も、子供の気持ちがうまく理解できずに苦しい思いをしているのではないでしょうか?

「17歳のカルテ」は、そのように心に悩みや迷いがある若い人、その周囲にいる人にオススメです。

日本の映画やドラマでは、どうも制限が多くて、ここまで過激に正直にメンタルヘルスを映し出す作品は少ないです。

「なんだか上手く生きられない」
「生きることに迷いが多い」
「死にたいと思うことがある…」

こういった気持ちは、思春期になって自分の頭で世界を再構築しなければいけないとき、大なり小なり誰もが持つ感情でしょう。

不安や虚しさにいたたまれなくなった人や、その周囲の人たち、人間の心の不思議さを痛感した人たちにとって、本映画はきっと励みとなるでしょう。

この映画は、様々な問題を抱える様々な人が出てきます。

きっと彼女たちの誰かが

「わかるよ、わかるよ」「あなたはひとりではない」

といったメッセージを発してくれるはずです。

さらに「これから自分はどうすればいいのだろう?」ということに対しても、少なからずヒントを与えてくれるに違いないです。

時代や場所が変わっても、「自立する」という作業には共通点は多いです。

「17歳のカルテ」の英語の原題は「Girl, interrupted(中断された少女)」です。

作品では1年間の病棟生活を「中断」と例えているのだが、大人になるために1度人生を中断してじっくりと考えることも、その時間の長さに個人差はあれ、必要なことなのでしょう。

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