15世紀イタリアで始まったルネサンスは「古典復興」と訳され、行き詰まった中世の文化を古代ギリシャやローマに戻ることで再生させました。
「古きを訪ねて新しきを知る」…これぞまさにきんきらきんの子供映画「アナと雪の女王2」に隠されたテーマでございます。
さてさて、エンタメブリッジライターしおりです!
今回は前作でアニメ史の記録を塗り替えたアナ雪の続編、「アナと雪の女王2」についてご紹介します。
感想をズバリ先に言いますがめちゃくちゃよかったです。
つい1か月前ディズニーからマレフィセント2が公開されましたが、マレフィセント2ってポリティカル・メッセージがわかりやすいんですね。
主に多様性、反戦、文明批判ですが、そのことはマレフィセント2のレビューで詳しく書いておりますのでよかったらご覧ください。
⇒【あらすじネタバレ】映画マレフィセント2はあっと驚く多様性と異質さに注目?
アナ雪2はその点、「えっこれ子供映画?!」と一瞬目を疑ったほどアナ雪1よりもかなりcomplex(複雑)になっています。
1よりもずっと「伝えたいものがある、でもそれって深く観なければわからない。だけど子供は感覚で理解できる…」って素晴らしい作品だと思いました!
すでにこの複雑さをはらむアナ雪2の大ファンになった私。
ええもうコンビニもデパートもペットボトルも街がアナ雪一色の昨今ですが、「いやもうホントに観てください」としか言いようがない作品です。
ひーひーふーふー落ち着きまして、今回はエルサのさらなる心の内的葛藤に重点を当て、あらすじや見どころを解説していきたいと思います!
目次
1.アナと雪の女王2の作品紹介
公開日:2019年11月22日 (日本)
監督:クリス・バック(Chris Buck)、ジェニファー・リー(Jennifer Lee)。
脚本:ジェニファー・リー(Jennifer Lee)
出演者:イディナ・メンゼル(Idina Kim Mentzel)、クリスティン・ベル(Kristen Bell)、ジョナサン・グロフ(Jonathan Groff)、ジョシュ・ギャッド(Josh Gad)。
日本語吹替え:松たか子、神田沙也加、原慎一郎、武内駿輔、松田賢二、吉田羊。
製作会社:ウォルト・ディズニー・ピクチャーズ、ウォルト・ディズニー・アニメーションスタジオ。
【日本語吹替え予告編】
【字幕版予告編】
2.アナと雪の女王2のあらすじ
画像出典:https://www.youtube.com/
続いてアナと雪の女王2のあらすじをご紹介します。
アナ雪1を観ていない方もちょこちょこ復習してくれますので、十分楽しめます。
もちろんアナ雪1を観た方は、パワーアップしたエルサの魔力やオラフギャグが100倍楽しめます。
以前書きましたアナ雪1のレビューはこちらからどうぞ。
⇒アナ雪2をみる前必見!アナと雪の女王”歌”から紐解く本当の物語
アナと雪の女王2のあらすじ(ネタバレなし)
前作から3年ーー24歳になった姉エルサと、21歳の妹アナ。
アナは王家の娘として「この幸せがずっと続きますように」と日常に感謝しながら暮らす日々。
ただ、エルサは心にうごめく「なんとなく一般の人間たちと過ごす違和感」を感じつつ毎日を過ごしていました。
アナとクリストフとの恋人関係はまだ続いていて、クリストフは今作で何度も何度もプロポーズを試みます。
アナ雪2はアナとエルサが仲良しだったころの子供時代の回想シーンから始まります。
エルサの魔法で魔法の国を作り、寝室でままごとをしていた2人。
「もう寝なさい」と入ってきた当時国王だった父が、「魔法の国なら、実際に見たことがあるよ」と少年時代の記憶を語り始めます。
一字一句同じではありませんが、このような回想録。
遠い遠い北の森に、ノーサルドラという魔法の国があった。
そこにいる人々が魔法が使えるわけじゃないんだ。
風、火、水、大地の精霊が国を治めている。
僕のお父さん(アナとエルサの祖父)は、ノーサルドラに友好の印としてダムを作った。
その完成式典で、アレンデールの人々とノーサルドラの人々との間に不思議なことが起こったんだ。
僕がちょっと目を離していたすきに、お父さん(アナとエルサの祖父)が死んでいた。
アレンデールの人々とノーサルドラの人々が、急に争いを始めていたんだ。
そのとき僕は頭を打って倒れた。
そこへ霧が立ち込めて壁となり、そこにいたすべての人々は霧に閉じ込められた。
だけどそのとき、僕には不思議な声が聞こえた。「Ah ahーー」
誰かが僕を引っ張って、霧の外へ出して助けてくれた…。
壁ができてからは誰も魔法の国には出入りできない。
森がまた目覚めたらどんな危険があるかわからない。
「どうしておじいちゃんは死んだの?」「なぜ争いが起こったの?」というアナたちの質問には「お父さんもわからない」という返答。
母はアナとエルサを寝かしつけるため子守唄を歌ってくれました。
(アナ雪1で、その後両親はエルサとアナが10代の頃に海難事故で死亡しています。)
ある日、エルサにはエルサにしか聞こえない不思議な声が聞こえ始めます。
「Ah ahーー(ああ ああ)」
声に悩まされつつ、声に呼ばれていると感じるエルサ…。
本作のキャッチコピーは「なぜ、エルサに力を与えられたのか」。
果たしてエルサは、自分が持つ魔法の真実を見つけることができるのか…?
謎に満ちた魔法の国ノーサルドラとアレンデールの関係は?
アナと雪の女王2のあらすじ(ネタバレあり)
画像出典:https://www.youtube.com/
前作はエルサの内的葛藤に重点が置かれていましたが、その点は今作もガッツリ引き継いでいます。
ただし、世界と歴史を巻き込んだ壮大な冒険物語へと進化しています。
アナ雪2制作のため、より1人1人のキャラ理解を深めて「両親の謎」にスポットを当てたという製作陣。
さらに北欧の神話やおとぎ話を織り交ぜて、フィクションでありながらいたるところにリアルを散りばめた、つかみどころがあるようでないようであるような…思慮深い作品ですね。
さて、お城でジェスチャー当てっこゲーム”シャレード”をしていたエルサ、アナ、クリストフ、スヴェン、オラフの5人。
またエルサにだけあの声が聞こえてきます「Ah ah ah ー」
譜面にするとこんな感じですかね。
「ごめんなさい、もう休むわね」と寝室に戻り、亡きお母さんの紫のスカーフを巻いていたところをアナが心配そうに入ってきます。
不安なとき、エルサはこのスカーフをお守りのように巻くんですね(このスカーフが後でキーポイントになりますよ!)。
アナはエルサにお母さんが小さいころ歌ってくれていた「魔法の川の子守唄」を歌います。
お母さん役の吹替え声優は今作新たに加わった吉田羊さん。
歌というイメージがなかった大女優さんですが、子守歌は「本当のお母さん」といった哀愁あるすばらしい歌声です。
エルサは、今作で「ほぼ」魔法を暴発させることのない成人女性に成長していますが、この「ほぼ」ってとこがアナ雪2のポイント!
エルサは今もなお魔法が使えることに、アレンデールで「所在なさ」「窮屈さ」を感じていたんですね。
どうして私を呼びつけるの?あなたは私に似た誰かなの?
本当はここにいてはいけない。
みんなと違うと思ってきたの。
あなたはどこなの?
姿を見せてよ!
と声についていって、あの主題歌「Into The Unknown(未知の旅へ)」を大熱唱してとうとう魔法を大爆発!
スクリーン中がきんきらきんに!
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この結晶、よく見ると4種のシンボリックな模様があり、これぞ謎に包まれた国ノーサルドラの風、火、水、大地の精霊のシンボルマーク。
しかしこのエルサの魔法が、魔法の国ノーサルドラの森の風、火、水、大地の精霊を呼び覚ましてしまったのです!
精霊の怒りによって町中が停電、暴風が吹き荒れ、建物が吹き飛ばされる特別警報避難指示並みの災害が起こったアレンデール。
「みんな!崖の上に逃げて!」とアナが指示して住民たちは全員避難。
住民が怖がる中、エルサは魔法の国ノーサルドラや自分を呼ぶ声が危険ではなく、「いい人だと感じる」とあくまで弁護(なにか自分の魔法と共鳴するのですね)。
そこへメンター役のトロールの首長パビーがやってきて、空中で幻のプレゼンをしながらこう言いました。
精霊が怒っている。
過ちを正さねばならん。
さもなければ…未来は見えん。
今できることをしよう。
これは、ノーサルドラの精霊の怒りを何とかしなければアレンデールが滅亡するという危機的予言。
過ちって何?との疑問も浮かびますね。
この「今できることをする」は劇中で何度も何度も繰り返されるキーワード。
本作は以後、次の2点の解決に向かっていきます。
- なぜエルサに魔法が与えられたのか?
- アナとエルサは、アレンデールをどう救うのか?
エルサは謎の呼び声にすべての解決のヒントがあると、アナ、クリストフ、オラフ、スヴェンと旅に出ることを決意。
野を超え山を越えたどり着いたところは真っ白な霧の壁に閉ざされたノーサルドラ。
人間のクリストフはシャキーンと跳ね返されてしまうのですが、エルサだけが手を当てると魔法がとろけるように霧がふぁ~~と開いて中に入ることができました。
するとそこにデン!と出迎えてくれたのは、風、火、水、大地のシンボルマークが刻印された4つの岩。
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そして見えてきたのは祖父が建設したあのダムでした。
ダムというのは今も昔も各国共通の業深き溜め池です。
自然を破壊し、動植物を追いやり、村落を沈没させ…私たち人間のためにだけ作られる人口貯水池。
北海道でアイヌの方たちが、村落がダム化されることの反対運動が起こっていますが、彼らの行政会議での主張は、すでに文明化した私には「何を言っているんだろう?」と思わされる不思議なものでした。
「山や森は、私たちがカミ様と守っていきますから…」
今ならもちろん、アイヌ民族にそのようなワールドが存在することがハッキリとわかります(私も成長しましたね)。
ノーサルドラの住民はノルウェーの先住民サーミ族をベースにしているので、私はこのアイヌの方たちの世界の捉え方を1番に思い出しましたね。
すると風の精霊ゲイルによる竜巻が早速5人を襲います。
エルサが竜巻の壁に魔法を当てると風はおさまり、5つの不思議な氷の像が現れました。
過去が形になった!
水は記憶を持つ、すべて覚えている。
これはエルサのセリフですが、「水は過去の記憶をすべて蓄えている」という話は今作を読み解く重要なポイントです。
普段意識しませんが、地球にある水って増減がないんですよね。
水蒸気→雨→海→山→川→飲料・上水下水→川→海→水蒸気・・・と有史以来ず~っと増えもせず減りもせずぐるぐるぐるぐる循環しています。
そして5人はある1つの氷像に気づきました。ーーそれは少年時代の父が、助けてくれた少女に抱かれている像。
先にネタバレしますと、父を助けた少女とはアナとエルサのお母さんです。
以後、お母さんはノーサルドラの霧の中には1人だけ2度と入れず、敵国アレンデールのお父さんと結婚したんですね。
そして霧の中では、今もなおダムの完成式典で起こった原因不明の争いがまだ続いていて、ノーサルドラの先住民とアレンデールの兵士たちが戦っていたのです!
とそこへ火の精霊ブルーニが出現、そこら中を焼き尽くし始めましたがエルサが氷の魔法で鎮火。
精霊たちを手名付けることができるのはエルサだけです。
ブルーニは形があるのですが、ラプンツェルのカメレオンのパスカルみたいな爬虫類っぽい生き物(ちなみに精霊たちはしゃべらず、非言語ツールでエルサと交流します)。
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また、アナ雪1のマシュマロウの岩バージョンのようなおっかない大地の精霊アース・ジャイアントにも出会います。
その光景を見ていたノーサルドラの先住民は、エルサが魔法を使えること、2人が持っていたお母さんのスカーフを見てびっくり仰天します。
お母さんのスカーフには、ノーサルドラの由緒ある名家の刺繍がほどこしてあったんです(雪の結晶のような文様)。
「お母さんは精霊の国出身だった」と初めて知った2人に、アナ雪のオープニングソング「ナナーナヘイヤーヘイヤー♪」が流れ、ノーサルドラの人々はアナやエルサに次第に心を開きます。
ノーサルドラの先住民は、ノーサルドラに古くから伝わる伝承の話をエルサにだけ伝えます。
私たちは4つの精霊に治められている。
しかし、自然界と魔法を繋ぐ懸け橋となる第5の存在があるんだ。
アートハランだけがそれを知っている。
アートハランって何…?とアナ雪2は新用語がたくさん出てきます。
「アートハラン=北の最果てにある川=お母さんが子守唄で歌っていた歌の川=世界の情報が蓄えられた宝庫」。
さらにアナとエルサは、サザンシーで難波したはずの父と母が乗っていたボロボロの船を発見します。
アナ「ここってサザンシーだっけ?」
エルサ「ダークシーから流されてきたんだよ」
アナ「どうやって流されてきたの?どうやって霧の中を入ったの?」
船の中に防水の筒を見つけ、そこから2枚の紙を見つけたアナとエルサ。
1枚はノーサルドラの言語で書かれたメモで解読不能、2枚目はアートハランへの地図で、お母さんの手書きで「アートハラン、水は記憶を持つ川」と書かれていたんです!
超ザックリ描くとこのような地図でした。
実は、両親が亡くなった理由は「なぜエルサにだけ魔法があるのか?」を解き明かしたくて、アートハランに向かう途中で海難事故で亡くなったのでした。
「私のせいで両親は死んだ…」と悔やむエルサに、アナはこう勇気づけます。
自分の敵の命を救ったから、エルサに魔法を与えたのよ!
霧から出して敵国の父を助けた母、その母を幸せにすると結婚した父…。
エルサはこのとき先住民から聞いた「第5の精霊」は自分なのでは?と確信を持ちます。
「誰が与えたか?」ってことはセリフがないのでわかりませんが、風や火の精霊は生まれながらにして精霊だから、エルサも生まれながらにして精霊なのかな?と個人的には思ってます。
「何のために?」という真実はアートハランに行けばわかる…ってことはわかったので、エルサは1人でそこへ行くとを決心。
魔法が使えないアナやオラフは「危ないから」と、エルサは無理やり氷のそりに乗っけてヒューンと洞窟まで追いやってしまいました。
ここからは、予告編でよく流れていたエルサが突っ走って海(ダークシー)を凍らせて渡ろうとするシーン。
溺れて海でゴボゴボしている間に、エルサが出会う4の精霊、水の精霊ノックと出会います。
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暴れ馬のようだったノックを手名付け、魔法で手綱を付けて乗ることに成功したエルサは、一目散に最果てのアートハランへと向かいました。
例えるならスペイン付近から北極圏まで乗馬で行くような過酷な旅です。
「Ah ah ah -」と声に導かれたどり着いたそこは、北極圏内を思わせる氷河地帯。
どう見ても凍え死にそうな最果ての地ですが「まるで我が家ね」と馬を降り、心地いいと感じるエルサ。
エルサは記憶が凍った氷像たちに囲まれながら、「みせて、あなたを」を歌いながら洞窟をどんどん下ります。
エルサの魔法の真実が明かされるまであと少し!
今はっきりとわかったの
生まれてからずっと悩み続けていたけど
さあ 姿を見せて!
歌い終わるときキメ技の足でバシーンと氷の魔法を使い(これぞ第2のレリゴーシーン!)、第5の精霊の力を発揮しました。
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4つの精霊マークの中心が第5の精霊エルサ。
「おいでおいでよ 見つけた」と歌に加わってそこに見えたのは、なんとエルサのお母さんでした。
「Ah ah ah -」と呼ぶ声は、お母さんだったのです!(正確には水が持つお母さんの記憶)
髪をおろし、服も純白になり、氷の精のようになったエルサ。
さらに記憶は遡ります。
見えたのは、おじいさんがノーサルドラの首長を騙し打ちして、先に殺そうとしている姿…。
祖父「ノーサルドラの魔法は脅威だ。ダムを作り、式典で全員殺してしまおう!」
部下「国王、ダムは自然の力を引き裂く!」
その瞬間エルサは英題”Frozen”の通り、凍ってしまいます…まるでアナ雪1でアナが凍ったように。
エルサは洞窟の奥深くまで来すぎてしまい、記憶を知りすぎた代償のように氷ってしまいました。
しかし、凍る瞬間ピューンと手から魔法が出て、洞窟に残ったアナの前に1つの氷像がドスンと落ちてきます。
それは、おじいさんがノーサルドラの首長をまさに背後から殺そうとしている像でした。
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これが、ノーサルドラとアレンデールの民の争いの種だったのです。
アナもまた、真実を悟りました。
アナ「ダムは罠だった!平和の贈り物ではなかった!ダムを壊さなきゃならない!」
そのとき、オラフがだんだん消えかかっていきます。
オラフってアナ雪1でエルサの魔法で作られたものでしたよね。
エルサが凍り付いて魔法が消滅したので、アナの腕の中で名言メーカーオラフは再び大事な名言を残しながら消えてきました。
ねえアナ、変わらないものを1つだけ見つけたよ。愛だ!
エルサもオラフもいなくなり、「どうしたらいいの?」と1人絶望して泣くアナ。
次の3点もまた、本作で強調されたポイントですね。
- 変わらないものは愛。
- 人間の業と共存の知恵。
- アナの自立。
前作でアナはあくまで集団行動のハッピーハッピーなキャラでしたが、今作ではアナの自立物語も描かれます。
ここから1人で「今できることをやろう」と立ち上がるアナ。
アナは大地の精霊アース・ジャイアントを利用して、「正しいことを選択する、歴史を正して呪いを解く」と決意(これが最初トロールが言った「過ちを正す」の意味だったのです)。
それはダムを壊すことですが、これは犠牲を払う危険な決断です。
ダムの川下のアレンデールの人や街が、増水ですべて流されてしまうかもしれないからです。
しかし、どのみちアレンデールはこのままでは精霊の呪いによって滅亡してしまいます。
アナは腹をくくり、アース・ジャイアントに岩を投げつけさせてダムを破壊しました(IMAXではこのシーンめちゃくちゃ地鳴りがします!)。
兵士「アナ女王、何をする気?アレンデールを守るのでは?」
アナ「正しいことを選ばなきゃダメなのよ!」
アナの勇気ある選択は胸を打ちますね…犠牲を払う覚悟で、祖先の業を浄化し、自然(ノーサルドラ)と人間(アレンデール)の均衡を取り戻そうとする一世一代の覚悟。
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岩はダムに当たって崩落し、水が勢いよくばっしゃーんと流れていきました。
川下のアレンデールまで何秒?!という緊迫した時間が映画館にどれほど流れたか!
そのとき、ダム崩壊で魔法が溶けたエルサが、水の精ノックに乗ってアレンデールまで突っ走り、氷の壁を作って街を洪水から守ったのです!
アレンデールの人々も、幸いにも崖に避難していたため無事でした(アナが旅立つときトロールと交わした約束「私が帰ってくるまで、必ずここの人たちを守ってて」が守られていたんです)。
精霊の怒りは静まり、霧は晴れ、34年5か月23日ぶりに青空を見たノーサルドラの人々とアレンデールの兵士。
醜い争いはアナとエルサの勇敢な行動によってピリオドが打たれます。
ここから意外な結末が待っていました!
エルサ「精霊たちが決めたの。アレンデールは続いていく、あなたと」
なんと、両国の友和のためアナがアレンデールの女王に就任、エルサはノーサルドラの首長になったのです!
アレンデールには、両国の友好のシンボルであるアナとエルサの両親の子供時代の銅像が飾られました。
まだまだ話は終わりませんよ~。
最後、クリストフがアナにプロポーズして恋もハッピーエンド。
アナが風の精霊ゲイルに、「明日ジェスチャーゲームやるから来てね」という手紙をノーサルドラにいるエルサに託し、エルサが水の精霊ノックに乗ってパカラッパカラッとアレンデールに向かうシーンでアナ雪2は終わります。
3.アナと雪の女王2の感想と見どころ
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続いて、アナと雪の女王2の見どころを解説いたします。
子供がターゲットの映画でありながら、色んな読み方ができるのがアナ雪2のすごいところ。
今回のレビューでは5大挿入歌の歌詞からエルサの成長物語に焦点を当てて考察していきます。
アナ雪はミュージカル映画ですから、歌詞をじっくり読んでいただいたのち、私の考察をお読みいただければ幸いです。
母役吉田羊の子守歌がすべてのカギ
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All Is Found(魔法の川の子守唄)
(歌詞抜粋)よい子よ おやすみ
はるかなる 北の川に
すべての記憶が ひそんでいる今も
あなたが求める答えは そこに眠る
探してみなさい
おぼれないようにね
前作でほぼ出番のないアナ、エルサの母。
今作では、母が精霊の国出身で、ただ1人アレンデールで生き延びた人というルーツが暴かれましたね。
このように、親は知っているけど子供には語られない家族の秘密のことを心理学用語で「家族神話」と言います。
例えば身内の誰かが犯罪者だとか、奇妙な死に方をしたとか、そういったことです。
敏感なエルサは「何か隠している」という親の家族神話に勘づいていたのでしょう。
エルサは前作でハッピーエンドかと思いきや「自分だけどこか変わっている」と違和感を持ったままでした。
こういった所属の違和感、家族神話への疑問に対して、精霊の血を持つお母さんは子供時代に子守唄ですでにヒントを出していたんですね。
歌詞の北の川=アートハラン。
魔法を与えられた理由を知ることは、エルサにとって心地よく生きることに不可欠なことで、それが本作の真髄です。
アナ雪1から成長!魔法を使いこなせるエルサの新たな課題は?
画像出典:https://www.youtube.com/
Some Things Never Change(ずっとかわらないもの)
(歌詞抜粋)(アナ)
季節はうつりかわる みんな大人になる
空をながれてきえる
かぼちゃは 熟れすぎちゃってでもこれだけは信じてほしい
いつまでも変わらないものがある
(エルサ)
ざわめく風 私を呼ぶ声が
なぜかしら 何が起きるというの
アナ雪1の「Love is an Open Door(とびら開けて)」に似た明るい曲調の歌ですが、まるで日本の四季のような移ろいが描かれる中、「変わる/変わらない」の対比は本作で繰り返し言われるメッセージ。
アナ雪1は、4~6歳くらいの発達段階の心象、エルサの「欲求VS罪悪感」という内的葛藤がテーマでしたね。←だからこそその年齢層の少女たちに爆発的にヒットしたのだと個人的に思っています。
24歳になったエルサはもはや魔法を自分でコントロールできるまでに成長しています。
感情の高揚とともに暴発することはなく、ほぼ自分の意思で出すことができます。
それでもなお、お城で気を抜いていた時に「ハッ!」と手すりを凍らせてしまうシーンが1回あります(おそらく20~30cm凍らせた程度なものでしょうが…)。
エルサはまだ「どこか無理をしている」「自分だけ違う疎外感」と感じているようですね。
平和が続きそうなアレンデールでも、これがエルサの本心からの願望・欲求ではないことが歌詞からわかります。
エルサだけに「平和におさまろうとしてもおさまりきれない」不安、「旅立つべきである」予感がすでに渦巻いていますね。
アナ雪1から進化した次なる心理的課題、エルサの”所属の違和感”とは結局どういった意味があるのでしょうか?
次の項で解説していきましょう。
アナ雪2最大のテーマ”自我同一性の拡散”
画像出典:https://www.youtube.com/
Into the Unknown(イントゥ・ジ・アンノウン)
(歌詞抜粋)
“みんなと違う”と感じてきたの
だから心が望むの
未知の旅へ 踏み出せと必ずここで見つけ出すの
こんな私がなぜ生まれてきたのか?みんなと違うこと 悩んできたわ
そのわけ教えて どうしてなの大きな力を受け入れ
新しい自分になる
主題歌であり、エルサが「自分にだけ聞こえる声」についてとうとう魔法を爆発させたシーンで流れるInto the Unknown(イントゥ・ジ・アンノウン)。
Let it Goほどキャッチーじゃない歌ということが低評価に繋がっているようですが、その話は置いておくとして…。
心理学者エリクソンによると、12~20代半ばころまでに、人は「自我同一性VS同一性拡散」の心理的葛藤にぶつかると言われています。
先ほどのエルサの”所属の違和感”とはつまり「自我同一性の拡散(アイデンティティの拡散)」で、これぞ今作の大テーマだと私は考えます。
スローペースで成長しているフィクションのプリンセスエルサなので、24歳でこの課題のど真ん中にいるでしょう。
そもそも自我同一性とは、
- 他の誰でもないたった1人の自分。
- 将来やりたいことがはっきりしている。
- 本当の私の姿と、相手がイメージする自分の姿が一致している。
と定義されるもので、逆に「自我同一性の拡散」とは、
- 過去の自分を捨てたい。
- 偽りの自分を演じている。
- 自分はどこにでもいる人間で、存在意義がない。
・・・どう見てもInto the Unknownのエルサですね。
結局、エルサは精霊としての自我同一性(アイデンティティ)を見つけ、精霊の国におさまり、心おきなく魔法が出せて、むしろ魔法がレスペクトされる場所に身を置きます。
そのためにエルサは「母は精霊の国で唯一助かった人」という家族神話を解かねばならなかったし、両親の出会いから死の真相まで知らなければいけませんでした。
エルサの面白いところは、ノーサルドラやアートハランの、人間には気持ち悪い(ていうか凍え死ぬ)という場所でも「自分だけは居心地がいい、フィットする」という感覚を得ているところですね。
これがエルサ自身への大きな自己理解へと繋がっています。
自己理解こそ「アイデンティティ拡散⇒確立」へ変える唯一の方法。
サイドストーリーとしてアナの自立や使命感が描かれることもまた、21歳のアナの「アイデンティティ拡散⇒確立」とも言えますね。
大人になるってどういうこと?オラフの歌から
画像出典:https://www.youtube.com/
When I Am Older(大人になったら)
(サントラ日本語訳歌詞抜粋)大人になるのは 順応すること
自分の世界と 自分の場所を
解き明かすこと
いや待てよと。
「そもそも論、大人になるってどういうことよ?」という方。
この疑問にはアナ雪最強のブレーン、オラフが歌ってくれています。
オラフ曰く、「大人になるのは、自分の世界、置かれた場所を解き明かして、順応する能力を身に着けること」です。
「ここではないどこか」「私ではない誰か」でない状態のことですね。
私は大学生頃に半グレ状態を経験したのでこの言葉は身に沁みます…。
自己同一性とよく似た言葉に、自己斉一性という心理学用語があります。
自己斉一性とは「過去から今までの自分に一貫性、連続性がある」こと。
アナ雪1のスピンオフに2017年「アナと雪の女王/家族の思い出」があります。
このショートフィルムは「アナとエルサにはクリスマスの家族の伝統がない」がテーマで、劇中エルサが「自分の魔法のせいでアナと断絶してしまう10数年」を振り返るシーンがあります(魔法を封じ込める大量の手袋を見るなど)。
姉妹愛を取り戻せてもなお「過去のことは思い出すのが辛い、微妙、避けて通りたい、考えたくない」というエルサの悲しみが手に取るように伝わる胸が痛いシーンですね。
「アナと雪の女王/家族の思い出」の時点でエルサはまだ「過去は忌むべきもの」と断絶していますが、アナ雪2ではついに自分の世界、場所を解き明かし「過去から今を1本の線で結ぶ作業」に入ります。
自己斉一性獲得のため、エルサは最果てのアートハランまで旅をしますが、そこは過去の氷像が立ち並ぶ博物館のような場所。
親のルーツ、魔法の出どころ、自分の使命…エルサはすべてはっきりさせます。
抑圧してきた能力、過去、ルーツ、秘密、これらが1本の線で繋がることで、エルサはますます「アイデンティティ拡散⇒強固な確立」に姿を変えることに成功しました。
凍ったエルサに学ぶ”達成と傷つくことはセット”
画像出典:https://www.youtube.com/
Show Yourself(みせて、あなたを)
(歌詞抜粋)必ず ここで見つけ出すの
こんな私が なぜ生まれてきたのか
みんなと違うこと 悩んできたわ
そのわけ 教えて
どうしてなの?なぜなの 教えて
なぜなの扉を 開くわ大きな力受け入れ
新しい 自分になる
待ってたのは あなた
ラスト、エルサはなぜ凍ったのでしょうか?
本作はノルウェーの先住民サーミ族や、スカンジナビア半島の神話が取り込まれて制作されました。
北欧神話は非常に特徴的で、イギリスの小説「指輪物語」にあるように過酷な自然環境が反映されています。
日本でいう古事記のような北欧神話によると、天地創造より前から霜と氷に閉ざされた”ニブルヘイム”という極寒の国があり、さらにその地下に”ニブルヘル”という冥界の国があります。
この構造はアートハランを彷彿とさせますが、ここでは「エルサが凍った理由」をエルサの個人的心象から考察してみましょう。
エルサはアートハランで「新しい自分になる」と人生最強の達成をします(24歳現在)。
おかしく聞こえるかもしれませんが、しばしば「達成は傷つくことはセット」なんですよ。
ちょっと例を挙げてみましょう。
猛烈に受験勉強をしてA判定が出ているにもかかわらず、その間リストカットが猛烈にひどくなる人。
「ごめんね」と恋人に初めて言えて関係が一歩前進したとき、なぜか次の日頭痛に悩んだという人。
体調不良は、何も失敗の時だけに起こるものではないんです。
人の精神構造は謎めいていて「達成したときに自分を傷つける」という状況を作り出すことがよくあるんですよ(ちなみに継続しているうちに次第におさまりますので、ご安心ください)。
エルサの達成は恋愛関係が一歩前進とかチマチマしたものではなく、人生そのものに関わる全身全霊の達成です。
凍り付いたエルサを映画館で観たとき、私はこの理屈が1番に頭に浮かびましたね。
確かにお母さんは子守唄で「おぼれないようにね」と警告をしているので、エルサが氷点下の中あまりの好奇心でぐんぐん進んでしまったために凍ってしまったのかもしれません。
それでも10分後くらいにエルサは溶けて、一皮むけた状態で精霊としての自分のアイデンティティを実践的に生きる段階に入ります。
そしてなじめなかったアレンデールに駆けつけて救い、精霊の国のリーダーに身を置きます。
人は達成するとき、それまでの精神構造の惰性に敗北宣言をしなければいけませんし、「あなたはそんな達成に値しないですよ」という悪魔のささやきにも打ち勝たねばなりません。
だからこそパット見自分を傷つけるようになってしまうんです。
これを読んでくださっている皆さんにも「原因不明の不調」に出会うことがあるかもしれません。
ついストレスや気候のせいにしてしまいがちですが、もしかしたらその原因はエルサのように何か大きなことを達成したポジティブな要因かもしれませんね!
4.アナと雪の女王2をオススメしたい人
画像出典:https://www.youtube.com/
まずはアートハランへの道のり並みに、長い長い見どころをお読みくださりありがとうございました。
アナと雪の女王2は次のような方にオススメしたいと思います!
エルサの心象以外にもまだまだ見どころはたくさんありますよ~♪
新キャラにも注目!アナ雪1を観た人
アナと雪の女王1を観た人はオススメです。
我が娘(6歳)もアナ雪1はセリフ全暗記できるほどのドハマリっぷりで、アナ雪2は公開初日から2日連続で観て「ミチノタービヘーーーーー!」と叫んでいる日々。
アナ雪1はせいぜいサブキャラはハンスやウェーゼルトン公爵ですが、アナ雪2は新キャラが10人ほどに膨れ上がり賑やかです!
今回レビューは理屈っぽく書きましたが、子供はこのストーリーが感覚でわかるようですからうらやましいです(笑)
(↑レビューを書きながら、よくわからなかったところは娘に聞きましたw)
ストーリーは大人が見れば解釈をあーだこーだ議論できる、複雑さをはらんだ作品ですので、私の中でも好きな映画ナンバー5にたちまちランクインしましたね。
ぜひ、映画館に足を運んでみてくださいね。
先住民文化や世界の不思議を知りたい人
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先住民文化や自然、世界の不思議に興味がある人はオススメです。
アナ雪2って正直、日本人向けだと思います。
精霊信仰やネイティブ文化、自然崇拝は日本人のスピリットに近いものがあって、神道やアニミズムのある日本人にはスンナリ入りやすいでしょう。
私は逆に、なぜアメリカ・ディズニーがこのような内容に映画の半分もの分量を割いたのか不思議に思いました。
言うまでもなくアメリカはキリスト教が基盤で、キリスト信仰では、人は神の似姿で自然や動物はその下。
人は動植物の管理責任があるものとされます。
そのことをアメリカ人の友人と話したら、アメリカはもちろんキリスト教がベースだけれど、昨今敬虔な信者は減りつつあること、他宗教への受容や理解が進んでいるという話を耳にしました。
他にもアナ雪2の「水は記憶を持つ」という話もツッコめばかなり興味深いですし、「水を大切にしなきゃな」と感じさせます。
アメリカでもclimate change(気候変動)は大きな関心事だそうで、もしかしたらここに密かなポリティカル・メッセージが含まれているかもしれませんね。
アナ役神田沙也加も急成長!自分は正しいと疑わない人
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ドギツイですが、自分は正しいと疑わない傲慢系の人にはオススメです。
アナ雪初心者のうちの夫も鑑賞しましたが「アナが『犠牲を払う覚悟で、正しい選択をする!』とダムを壊したこと」が最も記憶に残ったそう。
ここのアナは本当に正しい人であって、傲慢ではないですね。
正しい人は犠牲を背負うことはできませんし、正しいというのは”正しくない人への暴力”をはらみます。
でも、自分を低くできない人はなかなかそのことに気づくのは難しいです。
本当の正しさは暴力をはらみませんし、間違いは正せる人です。
ちょっと男性的思考かもしれませんが、この塩梅をアナ役声優神田沙也加は見事に演じ切っていますね。
正しさでゴリ押しする性癖のある人はぜひアナに学んでいただきたいと思います。
今いる場所が辛い人
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何らかの理由で、今いる場所が辛い人にはオススメです。
エルサは「今いる場所が辛い」と感じる人でした。
奇妙な声はなぜ突然感じ始めたのでしょうか?
アレンデールもまだ攻撃されてない、平和で仲良し、ノーサルドラは争って34年以上経過している…。
それでいきなり奇妙な声が聞こえたのは、エルサの「辛い」という気持ちが膨れ上がったせいでしょう。
「自分ってなんかヘン」と思うときはチャンスです。
そこから「おさまるべき場所へおさまろう」という動きが始まるからです。
アナ雪2はトロールもアナも「今できることをしよう」と何度も何度も観客に語りかけます。
それが私たちの個人的な課題に対してなのか、世界的な問題になのか私にもわかりません。
ただ、「今できることをする」という積み木を1つ1つ地道に積むような作業が、映画では結果的に大きな成果をもたらします。
いずれその1つ1つが連結して、人生や問題解決の大偉業に繋がるのでしょう。
「いいオトナが1人でアナ雪観に行くなんてどーよ?」
などためらわずに、私はアナ雪2は大人にもぜひオススメしたいですね!
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[…] 例えば昨冬公開された「アナと雪の女王2」って先住民や水のスピリチュアル性、世界を構成する4元素(火・水・風・地)など複雑さをはらみ、泣いても笑っても『なんか、考える』という人間の成長要素に欠かせない大事なきっかけをしっかり与えてくれるんですね。 […]